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 海難審判庁裁決録 >  2001年度(平成13年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成13年長審第36号
件名

貨物船栄宝山丸乗揚事件

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成13年11月28日

審判庁区分
長崎地方海難審判庁(平野浩三、平田照彦、亀井龍雄)

理事官
弓田

受審人
A 職名:栄宝山丸船長 海技免状:五級海技士(航海)
B 職名:栄宝山丸機関長 海技免状:五級海技士(航海)

損害
船底板及び左舷ビルジキールが凹損

原因
居眠り運航防止措置不十分

主文

 本件乗揚は、居眠り運航の防止措置が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Bを戒告する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成12年3月11日22時50分
 長崎県西海町番所鼻

2 船舶の要目
船種船名 貨物船栄宝山丸
総トン数 199トン
登録長 52.61メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 735キロワット

3 事実の経過
 栄宝山丸は、鋼材及び穀物などの輸送に従事する鋼製貨物船で、A受審人及びB受審人が乗り組み、鋼材702トンを積載し、船首2.70メートル船尾3.70メートルの喫水をもって、揚げ荷の目的で、平成12年3月9日17時30分愛知県豊橋港を発し、瀬戸内海、関門海峡を経由して長崎県西彼杵郡大島町の造船所に向かった。
 B受審人は、栄宝山丸の船主であり、同船において長年船長職を執り、前年11月に機関長が下船したとき、船長から機関長に職務変更し、A受審人を船長として雇い入れ、狭水道や出入港は自らが操船指揮を執り、船橋当直を、連日A受審人と交代で単独の6時間当直とし、疲労が蓄積することから、居眠り運航の防止措置として、眠気を催したときには早めにA受審人と交代することにしていた。
 同月11日20時00分A受審人は、肥前馬渡島灯台の南西方約3海里地点において、B受審人と船橋当直を交代して下橋した。
 その後B受審人は、平戸瀬戸を1人で通航し、22時38分牛ケ首灯台から245度(真方位、以下同じ。)から600メートルの地点に達したとき、針路を139度に定め、機関を全速力前進にかけ、自動操舵により、11.0ノットの対地速力で進行した。
 22時39分B受審人は、高後埼灯台から269度1.6海里の目的地の錨地まであと3海里の地点に達したとき、右舷船首25度1,500メートルばかりの浅瀬から少し遠ざかるつもりで、針路を137度に転じたのち、立って操舵用のいすに寄り掛かっていたところ、連日の航海当直の疲れで眠気を催したが、錨地まで眠気を我慢できると思い、手動操舵に切り替えるなど居眠り運航の防止措置をとっていなかったところ、間もなく居眠りに陥った。
 22時47分少し前B受審人は、高後埼灯台から210度1.3海里の地点において、錨地に向かう転針地点に達したが、居眠りに陥ったまま続航し、22時50分高後埼灯台から190度1,900メートルの地点において、同針路同速力で番所鼻の浅瀬に乗り揚げた。
 当時、天候は雨で風力2の北風が吹き、潮候は上げ潮の末期であった。
 乗揚の結果、船底板及び左舷ビルジキールが凹損して、サルベージ船の援助により離礁し、自力航行して目的地の造船所及び関門港にてそれぞれ揚げ荷し、のち修理された。

(原因)
 本件乗揚は、夜間、佐世保港沖合を南東進中、居眠り運航の防止措置が不十分で、浅瀬に向かって進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 B受審人は、夜間、佐世保港沖合を単独の航海当直で南東進中、眠気を催した場合、目的地の錨地まで3海里ばかりであったから、手動操舵に切り替えるなど居眠り運航の防止措置をとるべき注意義務があった。しかしながら、同人は錨地まであと少しの間、眠気を我慢できると思い、居眠り運航防止の措置をとらなかった職務上の過失により、居眠りに陥って乗揚を招き、船底板及び左舷ビルジキールなどを曲損させて自力離礁できず、サルベージ船に救助されるに至った。
 以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
 A受審人の所為は、本件発生の原因とならない。

 よって主文のとおり裁決する。 





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