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 海難審判庁裁決録 >  2001年度(平成13年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成13年長審第17号
件名

漁船第八松順丸乗揚事件

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成13年11月6日

審判庁区分
長崎地方海難審判庁(亀井龍雄、平野浩三、河本和夫)

理事官
向山裕則

受審人
A 職名:第八松順丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
船底外板に破口等

原因
船位確認不十分

主文

 本件乗揚は、船位の確認が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成12年3月15日04時30分
 五島列島福江島西岸

2 船舶の要目
船種船名 漁船第八松順丸
総トン数 19.92トン
全長 21.31メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 534キロワット

3 事実の経過
 第八松順丸は、FRP製漁船で、A受審人ほか1人が乗り組み、刺網漁の乗組員を乗船させる目的で、船首1.0メートル船尾2.0メートルの喫水をもって、平成12年3月15日04時10分五島列島嵯峨ノ島の嵯峨島漁港を発し、同列島福江島の貝津漁港に向かった。
 A受審人は、自ら操船して港外に出て、04時13分玉之浦黒瀬灯台から332度(真方位、以下同じ。)3.3海里の地点で、3マイルレンジにしたレーダーで貝津漁港の防波堤突端付近に向首するよう、針路を112度に定めて自動操舵とし、機関を全速力前進にかけ、8.5ノットの対地速力で進行した。
 A受審人は、嵯峨島漁港と貝津漁港との間は年中航行しており、定針してから貝津漁港の防波堤付近までは通常20分弱かかることを知っており、周囲に他船を見かけなかったこともあって、前日網の補修に時間がかかってできなかった40枚の刺網の連結作業をもう1人の乗組員と共に行うこととした。
 定針して間もなくA受審人は、操舵室前方の左舷側甲板上に出て、右舷側の甲板員と向かい合い、同人と共に立った姿勢で網の連結作業を始め、短時間なら船位を確認しなくても大丈夫と思い、その後レーダーを利用して陸岸等の相対位置関係を確かめるなど船位の確認を十分に行わなかったので、折からの上げ潮時の北に向かう潮流によって左方に2度圧流され、110度の実航針路で進行していることに気付かないまま続航した。
 04時27分A受審人は、玉之浦黒瀬灯台から009度2.2海里の地点に達したとき、そのまま進行すると左舷前方780メートルの干出浜に著しく接近する状況であったが、依然として網の連結作業に従事していて船位の確認を行わなかったので、このことに気付かず、同針路同速力で続航した。
 A受審人は、04時30分玉之浦黒瀬灯台から020度2.2海里の地点において、最後の網を連結し終えて操舵室に戻ろうとしたとき、原針路、原速力のまま干出浜に乗り揚げた。
 当時、天候は晴で風力2の西北西風が吹き、潮候は上げ潮の末期で、北に流れる潮流があった。
 乗揚の結果、船底外板に破口、キールに損傷及びプロペラに曲損等を生じたが、自力離礁し、のち修理された。

(原因)
 本件乗揚は、夜間、福江島西岸付近を航行中、船位の確認が不十分で、干出浜に著しく接近したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、福江島西岸付近を航行する場合、干出浜に著しく接近しないよう、レーダーを利用する等船位の確認を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、短時間なら船位を確認しなくても大丈夫と思い、網の連結作業を行っていて船位の確認を十分に行わなかった職務上の過失により、干出浜に著しく接近して乗揚を招き、船底外板に破口、キールに損傷及びプロペラに曲損等を生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。 





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