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 海難審判庁裁決録 >  2001年度(平成13年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成13年函審第36号
件名

漁船第五十八住吉丸乗揚事件

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成13年11月14日

審判庁区分
函館地方海難審判庁(織戸孝治、安藤周二、工藤民雄)

理事官
大石義朗

受審人
A 職名:第五十八住吉丸船長 海技免状:六級海技士(航海)(旧就業範囲)

損害
船首船底に凹損及び推進器翼に曲損

原因
居眠り運航防止措置不十分

主文

 本件乗揚は、居眠り運航の防止措置が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成12年8月5日03時30分
 青森県大間埼

2 船舶の要目
船種船名 漁船第五十八住吉丸
総トン数 89トン
登録長 23.69メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 389キロワット

3 事実の経過
 第五十八住吉丸(以下「住吉丸」という。)は、いか一本釣り漁業に従事する鋼製漁船で、A受審人ほか6人が乗り組み、操業の目的で、船首1.7メートル船尾2.8メートルの喫水をもって、平成12年7月20日15時00分北海道福島港を発し、北海道南岸沖合の漁場を移動しながら操業し、いか約40トンを漁獲したのち漁獲物の水揚げのため北海道函館港に向け、翌8月4日15時20分北海道浦河港南方沖合を発進した。
 発進時、A受審人は、単独の船橋当直に就き、他の乗組員を休息させ、自動操舵により、機関を8.0ノットの全速力前進にかけて西行した。
 ところで、A受審人は、漁場発進前には2昼夜半ほど不眠不休で連続操業に当たり、睡眠不足の状態になっていたが、他の乗組員も操業で疲れていたので、函館港までの船橋当直を自ら行うこととした。
 A受審人は、北海道渡島半島恵山岬沖合に達し、操業中の漁船群の避航を終え、翌5日01時39分大間埼灯台から050度(真方位、以下同じ。)9.3海里の地点で、針路を245度に定めたとき、強い眠気を感じていたが、休息をとった乗組員と当直を交替するなど居眠り運航の防止措置をとることなく、操舵室前面の窓枠に肘をかけて寄りかかり立ったまま続航中、居眠りに陥った。
 こうして住吉丸は、居眠り運航となり、折からの津軽海峡の海流の影響により、左方に17度圧流され、5.1ノットの対地速力となって青森県大間埼に向かったまま進行し、函館港に向け転針がなされず、03時30分大間埼灯台から157度700メートルの岩礁に原針路、原速力で乗り揚げた。
 当時、天候は霧で風力4の東南東風が吹き、潮候は上げ潮の中央期で、付近には3.5ノットの東流があった。
 乗揚の結果、船首船底に凹損及び推進器翼に曲損などを生じたが、救援船により離礁し、目的港に向かったのち修理された。

(原因)
 本件乗揚は、夜間、漁場から函館港に向け航行中、居眠り運航の防止措置が不十分で、大間埼に向け進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、単独で船橋当直に就き、漁場から函館港に向け航行中、連続操業による睡眠不足から強い眠気を催した場合、居眠り運航になるおそれがあったから、休息をとった乗組員と当直を交替するなど居眠り運航の防止措置をとるべき注意義務があった。しかるに同受審人は、休息をとった乗組員と当直を交替するなど居眠り運航の防止措置をとらなかった職務上の過失により、居眠りに陥り、居眠り運航となって、大間埼に向かったまま進行して乗揚を招き、船首船底に凹損及び推進器翼に曲損などを生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。 





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