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 海難審判庁裁決録 >  2001年度(平成13年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成13年長審第27号
件名

プレジャーボートグランブルー乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成13年10月23日

審判庁区分
長崎地方海難審判庁(平田照彦)

副理事官
尾崎安則

受審人
A 職名:グランブルー船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
船首及び船尾船底外板に破口、推進器及び梶板を曲損

原因
居眠り運航防止措置不十分

裁決主文

 本件乗揚は、居眠り運航の防止措置が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成12年9月10日13時20分
 天草下島北岸

2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボートグランブルー
総トン数 15トン
登録長 11.97メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 441キロワット

3 事実の経過
 グランブルーは、フライングブリッジを有する2基2軸のFRP製プレジャーボートで、A受審人が1人で乗り組み、親戚の者6人を乗せ、釣りを行う目的で、船首0.86メートル船尾0.93メートルの喫水をもって、平成12年9月10日09時00分熊本県松島町樋合島のマリーナを発し、天草下島富岡湾に向かった。
 10時ごろA受審人は、早崎瀬戸西方の小亀岩付近に至って釣りを始め、1時間ばかり楽しんだのち、11時ごろ富岡港々外に至り、釣場を転々としながら手釣りを続けた。
 A受審人は、期待したきすの釣果が思わしくなかったことから、途中の釣場であった小亀岩の少し陸岸寄りの岩場に移動することとし、13時09分四季咲岬灯台から099度(真方位、以下同じ。)1.9海里の地点を発進し、通詞島の西側に向かった。
 A受審人は、フライングブリッジで操船に当たり、針路を060度に定め、機関を23.0ノットの半速力前進にかけて進行したところ、操舵室後部のオーニングが風を受けて激しくはためくので、13時11分機関を微速力前進に減じ、10.0ノットの対地速力で手動操舵によって続航した。
 A受審人は、同乗者全員がキャビンで休息していたので、1人で背もたれと肘掛けの付いた操縦席に腰を掛けて当直に当たり、機関を減速したことから、船体の動揺もなく、周囲に他船も見当たらず、単調な航海となり、そして平素から昼寝をする習慣があったところ、この時は朝から操船と釣りでそれができずに当直を続けていたので、気が緩むと居眠りに陥るおそれがあったが、操縦席から立って操舵するなど居眠り防止の措置をとらなかった。
 A受審人は、その後5分ばかり操縦席に腰を掛けて操舵しているうち、いつしか居眠りに陥り、グランブルーは徐々に右転しながら陸岸に向けて続航し、13時20分小亀岩灯標から202度1.7海里の浅所に121度に向首して乗り揚げた。
 当時、天気は晴で風力2の北西風が吹き、潮候は上げ潮の初期であった。
 乗揚の結果、船首及び船尾船底外板に破口を生じて浸水し、推進器及び舵板を曲損した。

(原因)
 本件乗揚は、居眠り運航の防止措置が不十分で、浅所に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、単独で平穏な海上を低速力で航行する場合、背もたれと肘掛けの付いた操縦席に腰を掛けていると、居眠りに陥るおそれがあったから、立って操舵するなど居眠り防止の措置をとるべき注意義務があった。しかるに、同人は、居眠り防止の措置をとらなかった職務上の過失により、居眠りに陥り、浅所に向首進行して乗揚を招き、船底外板に破口などを生じさせるに至った。





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