(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成12年6月20日06時00分
長崎県宇久島
2 船舶の要目
船種船名 |
漁船第壱飛燕 |
総トン数 |
18トン |
登録長 |
19.53メートル |
機関の種類 |
ディーゼル機関 |
出力 |
632キロワット |
3 事実の経過
第壱飛燕(以下「飛燕」という。)は、大中型まき網漁業の灯船として操業に従事するFRP製漁船で、A及びB両受審人が乗り組み、操業の目的で、船首0.7メートル船尾1.7メートルの喫水で、平成12年6月19日13時船団の僚船とともに長崎県佐世保市大崎を発し、五島列島宇久島西方沖合の漁場に向かった。
ところで飛燕は、航海当直をB受審人、魚群探索及び操業中の操船をA受審人が行い、漁場において夜間操業し、昼間は最寄りの港で休息して1週間ごとに佐世保港に寄港することを繰り返しており、A受審人は航海中に、B受審人は魚群探索中にそれぞれ仮眠をとる態勢としていた。
両受審人は、出港前日休暇をとり、当日は07時ごろから出港準備にかかり、17時30分漁場に至って約2時間の夜間操業を3回行った。
B受審人は、魚群探索時間が短く、操業中はA受審人の操船補助や操業の手伝いに従事していたことから当日は仮眠がとれなかった。
飛燕は、翌20日05時05分五島白瀬灯台から358度(真方位、以下同じ。)5海里の地点を発し、宇久島の神ノ浦漁港に向かった。
A受審人は、発進後針路を宇久島と寺島の間の寺島瀬戸の北口に向く90度に定め、B受審人に当直を引き継いだ際、前夜は連続操業で同人が仮眠をとれなかったので、眠くなったら起こすように指示して操舵室後部の寝台で休息した。
B受審人は、機関を全速力前進にかけ、自動操舵として15.0ノットの対地速力で進行し、05時40分ごろ寺島瀬戸北口まで5海里ばかりの地点に達したとき、睡眠不足から眠気を催したが、目的地が近いので我慢できると思い、A受審人を起こすなり、立って手動で操舵するなど居眠り運航の防止措置をとることなく、周囲に船がいなかったので椅子に腰掛けたままの姿勢でいたところ、同時50分同瀬戸北口まで2.6海里の地点で船位を確認して間もなく、居眠りに陥った。
飛燕は、同針路及び速力で続行中、06時00分神ノ浦港南防波堤灯台から313度1.5海里の宇久島西岸の浅瀬に乗り揚げた。
当時、天候は晴で風力1の南南西風が吹き、潮候は上げ潮の初期であった。
乗揚の結果、飛燕は、左舷の推進器翼、推進軸及び舵軸並びに右舷の推進器翼がそれぞれ曲損、船底部に擦過傷を生じ、僚船により引き降ろされた後えい航され、のち修理された。
(原因)
本件乗揚は、宇久島西方沖合の漁場で操業後、同島に向け東進中、居眠り運航の防止措置が不十分で、同島に向首したまま進行したことによって発生したものである。
(受審人の所為)
B受審人は、宇久島西方沖合の漁場で操業後、単独当直について同島に向け東進中、前夜の睡眠不足から眠気を催した場合、船長を起こすなり、椅子から立って手動で操舵をするなど、居眠り運航の防止措置をとるべき注意義務があった。しかるに、同受審人は、目的地が近いので我慢できると思い、居眠り運航の防止措置をとらなかった職務上の過失により、居眠りに陥り、同島に向首したまま進行して乗揚を招き、左舷の推進器翼、推進軸及び舵軸並びに右舷の推進器翼にそれぞれ曲損、船底部に擦過傷を生じさせるに至った。
以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
A受審人の所為は、本件発生の原因とならない。
よって主文のとおり裁決する。