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 海難審判庁裁決録 >  2001年度(平成13年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成13年広審第42号
件名

引船栄伸丸引船列乗揚事件

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成13年10月30日

審判庁区分
広島地方海難審判庁(橋昭雄、坂爪 靖、伊東由人)

理事官
道前洋志

受審人
A 職名:栄伸丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
起重機船・・・右舷船首船底外板に破口

原因
栄伸丸・・・水路調査不十分

主文

 本件乗揚は、水路調査が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成12年12月15日05時40分
 瀬戸内海東部 燧灘西部

2 船舶の要目
船種船名 引船栄伸丸 起重機船第18栄伸号
総トン数 13トン  
全長 11.80メートル 35メートル
  15メートル
深さ   2.8メートル
機関の種類 ディーゼル機関  
出力 294キロワット  

3 事実の経過
 栄伸丸は、主に瀬戸内海において曳航作業に従事する全長11.80メートルの鋼製引船で、A受審人が1人で乗り組み、同船の後方に喫水が船首0.5メートル船尾1.2メートルで作業員2人を配した非自航型起重機船第18栄伸号(以下「起重機船」という。)を曳航する引船列とし、船首0.6メートル船尾1.7メートルの喫水をもって、平成12年12月15日02時20分愛媛県三島川之江港を発し、広島県佐伯郡能美町に向かった。
 ところで、栄伸丸は、長さ50メートル直径45.70ミリメートルの化学繊維製ロープの一端を船尾の曳航用フックにかけ、その他端にシャックルで長さ20メートル直径22ミリメートルの二本のワイヤーロープを結び、同ワイヤーロープの各他端を起重機船の船首左右端にそれぞれ係止して引船列全体の長さを約116メートルの後ろ引きの状態とし、更に起重機船の船尾に喫水が船首0.5メートル船尾1.1メートルの全長9.07メートルの交通船を配した。
 A受審人は、それまでたびたび三島川之江港から来島海峡を経て瀬戸内海西部に向けて航行したことがあり、その際には比岐島等海獺磯を含む島嶼群とその北方にあたる四阪島との間を経て来島海峡東口に向かう針路をとり、主にレーダーとGPSプロッターに頼って航行していた。
 発航後、A受審人は、折からの風力4の南西風の影響を避けるつもりで針路を四国沿岸寄りにとり、新居浜港沖合を通過したのち、いつもの比岐島等海獺磯の北方を航行する予定で機関を全速力前進にかけ、6.5ノットの曳航速力(速力は対地速力である。以下同じ。)で西行した。
 ところが、05時06分A受審人は、新居浜港西防波堤灯台から327度(真方位、以下同じ。)5.5海里の地点に至って予定の転針地点に達したころ、右舷船首方に他の夜標に比べて目に付いた海獺岩灯浮標の白色急閃光を視認して、同灯浮標の北側を通る予定を変更してその南側を通航して来島海峡東口に向けようとした。その際、以前昼間ではあったが小比岐島と海獺磯との間を航行したことがあったので、海獺岩灯浮標のいずれの側も航行することができるものと思い、所持していた海図により同灯浮標付近に航行上支障となる険礁等の有無を確かめるなどの水路調査を十分に行わなかった。そのため、同急閃光で表示された海獺岩灯浮標が北方位標識で、その南側に平均水面上の高さが0.5メートルの相ノ石が折からの潮高で、ほぼ水面下に没した状態で存在する険礁域があることに気付かず、針路を同灯浮標を船首少し右に見る277度に定め、引き続き機関を全速力前進にかけ、6.5ノットの曳航速力で前方に今治港及び市街地の明るい灯火を視認しながら進行した。
 こうして、05時40分少し前A受審人は、海獺岩灯浮標を右舷側に航過したところで、来島海峡東口に向けて針路を286度に転じて間もなく、05時40分比岐島灯台から077度1.6海里の地点において、被引起重機船は、その右舷船首船底を相ノ石に乗り揚げ、高潮時を待って自力離礁した。
 当時、天候は晴で風力4の南西風が吹き、潮候は下げ潮の末期で海獺岩灯浮標付近の潮高は約50センチメートルであった。
 乗揚の結果、起重機船は右舷船首船底外板に破口を生じた。

(原因)
 本件乗揚は、夜間、燧灘南部を西行したのち、予定針路を変更して来島海峡に直航することになる比岐島から小比岐島及び海獺磯から成る島嶼域に向ける際、水路調査が不十分で、北方位標識の海獺岩灯浮標の南側にあたる相ノ石等が存在する険礁域に向かって進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、燧灘南部を四国寄りに西行したのち、予定針路を変更して来島海峡に直航することになる比岐島から小比岐島及び海獺磯から成る島嶼域に向けようとする場合、それまで航行していた海獺岩灯浮標北側の航行予定を変え、たまたま同灯浮標の白色急閃光が強く目に付き、その南側を通航しようとしたのであったから、航行上支障となる険礁等の有無を確かめるよう、所持していた海図により変更した航行水域の水路調査を十分に行うべき注意義務があった。しかし、同人は、来島海峡東口に直航することにもなり、以前昼間にたまたま小比岐島と海獺磯との間を航行したことがあったので、海獺岩灯浮標のいずれの側をも航行することができるものと思い、海図によりその水路調査を十分に行わなかった職務上の過失により、同灯浮標が北方位標識でその南側に険礁域が存在することに気付かず、海獺岩灯浮標の南側を進行して、被引起重機船の乗揚を招き、被引起重機船の船首船底外板に破口を生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。 





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