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 海難審判庁裁決録 >  2001年度(平成13年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成13年神審第60号
件名

漁船祥雲丸乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成13年10月2日

審判庁区分
神戸地方海難審判庁(黒田 均)

理事官
釜谷奬一

受審人
A 職名:祥雲丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
船底外板に破口し浸水

原因
船位確認不十分

裁決主文

 本件乗揚は、船位の確認が不十分であったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成10年3月18日19時00分
 石川県舳倉島東方沖合

2 船舶の要目
船種船名 漁船祥雲丸
総トン数 6.66トン
全長 14.50メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 169キロワット

3 事実の経過
 祥雲丸は、船体中央部に操舵室を有するFRP製漁船で、A受審人がその妻と乗り組み、刺し網漁の目的で、船首0.2メートル船尾0.4メートルの喫水をもって、平成10年3月18日08時00分石川県輪島港を発し、同県舳倉島北方の漁場でぶり約400キログラムを漁獲し、18時40分帰途についた。
 A受審人は、しばらく東に向け航行したのち、18時45分舳倉島灯台から358度(真方位、以下同じ。)3.2海里の地点において、針路を170度に定め、機関を全速力前進から少し落とし、13.0ノットの対地速力で、自動操舵により進行した。
 ところで、A受審人は、舳倉島の周囲500ないし1,000メートルの間は、岩礁が広がっていることを知っていたので、帰航するにあたり、同島北東方のヨコ瀬を近距離でかわし、七ツ島の大島東方3海里ばかり沖合に至り、その後輪島港に向かうようにしていた。
 定針したのちA受審人は、妻とともに後部甲板で漁獲物の整理に当たっていたところ、18時56分舳倉島灯台から023度1,700メートルの地点に至って舳倉島東方を南下したが、水揚げまで時間がなかったので、漁獲物の整理に気をとられ、浅所に接近しないよう、レーダーを使用するなど、船位の確認を十分に行うことなく続航した。
 こうして、A受審人は、複雑な風潮流の影響を受け、徐々に右方に圧流されていることにも、舳倉島東方の浅所に向首していることにも気付かずに進行中、ヨコ瀬をかろうじてかわって間もなく、19時00分舳倉島灯台から089度630メートルの地点において、祥雲丸は、原針路原速力のまま、同所に乗り揚げた。
 当時、天候は晴で風力2の南南西風が吹き、潮候は下げ潮の初期であった。
 乗揚の結果、船底外板に破口を生じて浸水し、A受審人らは来援した僚船に救助された。船体は、翌19日起重機船に救助され、のち修理された。

(原因)
 本件乗揚は、夜間、石川県舳倉島北方の漁場から同県輪島港に向けて舳倉島東方を南下する際、船位の確認が不十分で、同島東方の浅所に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、石川県舳倉島北方の漁場から同県輪島港に向けて舳倉島東方を南下する場合、同島の周囲500ないし1,000メートルの間は、岩礁が広がっていることを知っていたのであるから、浅所に接近しないよう、レーダーを使用するなど、船位の確認を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、水揚げまで時間がなかったので、漁獲物の整理に気をとられ、船位の確認を十分に行わなかった職務上の過失により、徐々に右方に圧流されていることに気付かず、舳倉島東方の浅所に向首進行して同所に乗り揚げ、船底外板に破口を生じて浸水させるに至った。





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