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 海難審判庁裁決録 >  2001年度(平成13年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成13年仙審第17号
件名

貨物船第二十五寶榮丸乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成13年10月23日

審判庁区分
仙台地方海難審判庁(東 晴二)

理事官
熊谷孝徳

受審人
A 職名:第二十五寶榮丸船長 海技免状:四級海技士(航海)(旧就業範囲)

損害
船尾部左舷船底に凹損、右舷ビルジキールに曲損

原因
水路調査不十分

裁決主文

 本件乗揚は、水路調査が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成11年7月24日10時40分
 宮城県金華山港

2 船舶の要目
船種船名 貨物船第二十五寶榮丸
総トン数 648トン
全長 48.20メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 882キロワット

3 事実の経過
 第二十五寶榮丸(以下「寶榮丸」という。)は、航行区域を限定沿海区域とし、船首部にジブクレーン1基を備えた船尾船橋型の鋼製砂利採取運搬船で、A受審人ほか5人が乗り組み、石材680トンを積載し、船尾部のバラストタンクに海水約60トンを張り、船首2.75メートル、船尾3.50メートルの喫水をもって、平成11年7月24日08時00分宮城県石巻港を発し、同県金華山港に向かった。
 ところで、金華山港は、宮城県の地方港湾で、金華山の西側に位置し、海岸から西方に90メートル、さらに北西方に160メートル延びた旧防波堤があり、同防波堤の奥が防波堤岸壁となっており、同岸壁の北側に三つの突堤がそれぞれ海岸から延びていた。また旧防波堤の90メートルの部分から西方にさらに50メートル、北西方に150メートル、西北西方に80メートル延びる新防波堤が築造中で、突堤岸壁もしくは旧防波堤奥の防波堤岸壁に至る水路には水深2.7メートルほどの浅所が存在していた。
 A受審人は、金華山港の詳しい水深状況について知らなかったが、寶榮丸が金華山港工事のための石材などの運搬にも従事していたので、月に1回程度同港に入港しており、それまで何事もなかったことから、今回も大丈夫と思い、港湾管理者から金華山港工事関係図面を取り寄せるなど、同港の水深状況を確かめるための十分な水路調査を行わなかったので、最大喫水3.50メートルでは潮高が比較的低いとき、乗り揚げるおそれがあったが、喫水の調整、潮候を考慮した入港時刻の変更などを行うことに思い至らなかった。
 こうして、A受審人は、陸前黒埼灯台の沖合を経て金華山瀬戸に入り、10時24分同灯台から070度(真方位、以下同じ。)1.1海里の地点で、入港配置を指示し、操舵操船に当たり、間もなく機関を減じ、同時32分同灯台から044度1.7海里の地点に達したとき、針路を新防波堤完成部分西端を正船首少し右方に見る050度に定め、機関を微速力前進にかけ、3.0ノットの対地速力で進行した。
 10時36分A受審人は、旧防波堤西端から295度120メートルの地点に達し、新防波堤完成部分西端を約40メートル隔てて通過したとき、右転を開始するとともに、機関を適宜使用して2.0ノットの対地速力で両防波堤西端を右舷側に付け回し、同時39分旧防波堤西端から090度50メートルの地点で、針路を同防波堤を約10メートル離し、これにほぼ沿う140度とし、防波堤岸壁に右舷着けすることとして接近していたところ、10時40分旧防波堤西端から115度90メートルの地点において、寶榮丸は、船尾部船底を乗り揚げ、停止した。
 当時、天候は晴で風力1の南風が吹き、潮候は上げ潮の中央期であった。
 A受審人は、トリムの調整を行うとともに、高潮時を待ち、自力離礁して予定岸壁に着岸した。
 乗揚の結果、寶榮丸は船尾部左舷船底に凹損を、右舷ビルジキールに曲損を生じ、のち修理された。

(原因)
 本件乗揚は、石材を荷揚げするため宮城県金華山港に向かう際、港湾管理者から金華山港工事関係図面を取り寄せるなど、同港の水深状況を確かめるための水路調査が不十分で、喫水の調整、潮候を考慮した入港時刻の変更などを行わないまま、浅所の存在する同港に入港したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、石材を荷揚げするため宮城県金華山港に向かう場合、同港の水深状況について詳しいことを知らなかったのであるから、港湾管理者から金華山港工事関係図面を取り寄せるなどして同港の水深状況を確かめるための水路調査を十分に行うべき注意義務があった。しかしながら、同受審人は、それまでの入港時何事もなかったことから、今回も大丈夫と思い、水路調査を十分に行わなかった職務上の過失により、同港旧防波堤北側の水路には水深が2.7メートルほどの浅所が存在していることに気付かず、最大喫水3.50メートルでは入港時乗り揚げるおそれがあったが、喫水の調整、潮候を考慮した入港時刻の変更などを行わないまま入港して乗揚を招き、寶榮丸の船尾部左舷船底に凹損を、右舷ビルジキールに曲損を生じさせるに至った。





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