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 海難審判庁裁決録 >  2001年度(平成13年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成13年函審第28号
件名

漁船第二十八ふみ丸乗揚事件

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成13年10月23日

審判庁区分
函館地方海難審判庁(工藤民雄、安藤周二、織戸孝治)

理事官
大石義朗

受審人
A 職名:第二十八ふみ丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
船首船底外板及び船尾梶受部に破損等

原因
居眠り運航防止措置不十分

主文

 本件乗揚は、居眠り運航の防止措置が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成12年6月18日04時05分
 北海道根室湾

2 船舶の要目
船種船名 漁船第二十八ふみ丸
総トン数 4.9トン
登録長 11.27メートル
機関の種類 ディーゼル機関
漁船法馬力数 90

3 事実の経過
 第二十八ふみ丸(以下「ふみ丸」という。)は、専ら刺網漁業に従事するFRP製漁船で、A受審人が弟の甲板員とともに乗り組み、かれい刺網漁の目的で、船首0.2メートル船尾1.5メートルの喫水をもって、平成12年6月18日02時00分北海道幌茂尻漁港を発し、同港北北西方約10海里の根室湾の漁場に至って刺網1はえを投網したのち、03時14分根室港北防波堤灯台(以下「北防波堤灯台」という。)から331度(真方位、以下同じ。)10.4海里の地点を発進し、同地点南南西方の次の投網地点に向かった。
 ところで、A受審人は、当時、漁の最盛期にあたり、荒天の日以外は休漁日なしで月曜日から土曜日までが20時30分ごろ、また日曜日が02時ごろ出港し、翌日06時前後に帰港して網を手入れしたのち休息をとる形態で連日操業を繰り返して疲れが蓄積していたうえ、前日17日06時に帰港していつものように12時まで網を手入れして帰宅し食事をとった後、14時から16時までの間及び18時から01時までの間に睡眠をとったものの、時々目が覚めてよく眠れなかったことから睡眠不足の状態となっていた。
 A受審人は、発進時から単独で船橋当直に就き、針路を202度に定めて自動操舵とし、機関を全速力前進より少し減じ、20.0ノットの対地速力で、操舵室左舷側後部の配電盤前の物入れの上に腰を掛け、折から霧模様であったことから6海里レンジとしたレーダーを見ながら進行したところ、目的の投網地点付近に多数の映像を認めて同地点での投網をあきらめ、幌茂尻漁港北北西方5海里ばかりの地点に変更することにした。
 03時36分A受審人は、北防波堤灯台から287度8.1海里の地点に達したとき、針路を103度に転じ、18.0ノットの対地速力で、引き続き物入れの上に腰を掛け見張りに当たって自動操舵により続航した。
 転針後間もなくA受審人は、蓄積した疲労と睡眠不足から強い眠気を催したが、予定の投網地点まであと少しなので何とか我慢できると思い、甲板員を見張りに立てるなど、居眠り運航の防止措置をとることなく、同じ姿勢で見張りを続けるうち居眠りに陥り、投網地点を通過して根室港東側港界付近の海岸に向けたまま進行し、ふみ丸は、04時05分北防波堤灯台から058度1,400メートルの地点において、原針路、原速力で干出岩に乗り揚げた。
 当時、天候は霧で風はほとんどなく、潮候は下げ潮の初期にあたり、日出は03時55分であった。
 乗揚の結果、ふみ丸は、船首船底外板及び船尾舵受部に破損を生じたほか、推進器軸及び推進器翼を曲損したが、高潮時を待って僚船により引き下ろされ、のち修理された。

(原因)
 本件乗揚は、北海道根室湾において漁場を移動中、居眠り運航の防止措置が不十分で、根室港東側港界付近の海岸に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、単独で船橋当直に就いて漁場を移動中、蓄積した疲労と睡眠不足から強い眠気を催した場合、居眠り運航にならないよう、甲板員を見張りに立てるなど、居眠り運航の防止措置をとるべき注意義務があった。ところが、同受審人は、予定の投網地点まであと少しなので何とか我慢できると思い、甲板員を見張りに立てるなど、居眠り運航の防止措置をとらなかった職務上の過失により、居眠りに陥り、居眠り運航となって投網地点を通過し、根室港東側港界付近の海岸に向首進行して乗揚を招き、ふみ丸の船首船底外板及び船尾舵受部を破損させたほか、推進器軸及び推進器翼を曲損させるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。 





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