(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成12年5月22日02時20分
山口県青海島北北西方沖合
2 船舶の要目
船種船名 |
漁船勝龍丸 |
漁船光漁丸 |
総トン数 |
14.84トン |
12トン |
登録長 |
14.95メートル |
14.99メートル |
機関の種類 |
ディーゼル機関 |
ディーゼル機関 |
漁船法馬力数 |
160 |
160 |
3 事実の経過
勝龍丸は、網船、灯船2隻及び運搬船3隻の6隻と船団を組み、中型まき網漁業に従事するFRP製灯船で、A受審人ほか1人が乗り組み、操業の目的で、船首0.5メートル船尾1.8メートルの喫水をもって、平成12年5月21日12時45分山口県野波瀬漁港を発し、途中、同県仙崎港に寄せて氷などを積み込んだのち、14時00分同港を発進して今岬北北西方沖合の漁場に向かった。
16時00分A受審人は、漁場とするカキノ瀬付近に至り、漁ろう長の指示で錨泊して待機したのち、19時30分ごろから僚船と2隻で魚群の探索を開始し、6時間ばかり探索しても魚影が得られないでいたところ、他の僚船から魚影を発見した旨の無線連絡が入り、翌22日02時00分魚群の反応のあった今岬灯台から000度(真方位、以下同じ。)3.0海里の地点まで移動し、機関を中立回転としたまま投錨した。
投錨後、A受審人は、錨索を90メートル伸出し、停泊灯と作業灯を点灯したのち、航海灯を点灯したまま、02時05分船尾部両舷から水中灯2個を投入して集魚を始め、同時18分船首が235度に向いていたとき、右舷船尾79度800メートルのところに、衝突のおそれがある態勢で接近する光漁丸の白、紅、緑3灯を視認できる状況となったが、魚群探知機とソナーを監視することに気を取られ、周囲の見張りを十分に行っていなかったので、このことに気付かなかった。
A受審人は、接近する光漁丸に対し、注意喚起信号を行うことも、更に接近したとき、機関を使用して移動するなど衝突を避けるための措置をとらないまま錨泊を続け、02時20分今岬灯台から000度3.0海里の地点において、勝龍丸は、その右舷中央部に、光漁丸の船首が後方から79度の角度をもって衝突した。
当時、天候は晴で風はほとんどなく、潮候は下げ潮の初期にあたり、視界は良好であった。
また、光漁丸は、網船、灯船2隻及び運搬船3隻の6隻と船団を組み、中型まき網漁業に従事するFRP製灯船兼運搬船で、B受審人が1人で乗り組み、操業の目的で、船首0.7メートル船尾1.9メートルの喫水をもって、同月21日15時10分山口県野波瀬漁港を発し、途中、同県仙崎港に寄せて氷を積み込んだのち、山口県青海島北方沖合の漁場に向かった。
発航後、B受審人は、魚群の探索を行いながら漁場に向かい、17時00分今岬灯台の北方4.5海里ばかりの地点に至って投錨し、錨索を約90メートル伸出して日没を待った。
19時30分B受審人は、機関を中立運転とし、甲板上にハロゲン灯3個を点灯し、水中灯3個を投入して集魚を始め、翌22日00時30分ごろから集魚したあじ、さばのまき網作業に移り、約2.4トンの漁獲物を獲て自船に積み込んだのち、02時14分半今岬灯台から356度4.1海里の地点を発進し、水揚げのため、同県湊漁港に向けて帰途に就いた。
02時17分少し過ぎB受審人は、今岬灯台から356度3.5海里の地点に達したとき、針路を長門湊港防波堤灯台に向く156度に定め、機関を全速力前進にかけて13.0ノットの対地速力とし、自動操舵により進行した。
定針したとき、B受審人は、左舷前方に明るい灯火を点灯した3隻のいか釣り漁船を双眼鏡で視認したものの、同灯火に紛れた正船首方の勝龍丸の灯火を見落としたまま、操舵室を離れ、前部甲板に出て魚倉に入れた魚の状態を確認していたところ、02時18分正船首800メートルのところに、錨泊中の勝龍丸の停泊灯などを視認でき、その後、同船と衝突のおそれがある態勢で接近する状況となったが、魚の状態確認に気を取られ、周囲の見張りを十分に行っていなかったので、このことに気付かず、勝龍丸を避けることなく続航した。
こうして、光漁丸は、原針路、原速力を保って進行中、前示のとおり衝突した。
衝突の結果、勝龍丸は、右舷中央部外板及び操舵室上部を圧壊し、光漁丸は、球状船首部を圧壊したが、のちいずれも修理された。
(原因)
本件衝突は、夜間、山口県青海島北北西方沖合において、光漁丸が、見張り不十分で、錨泊中の勝龍丸を避けなかったことによって発生したが、勝龍丸が、見張り不十分で、注意喚起信号を行わず、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。
(受審人の所為)
B受審人は、夜間、山口県青海島北北西方沖合の漁場から漁獲物の水揚げのため帰港する場合、前路で錨泊中の勝龍丸を見落とすことのないよう、周囲の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、魚倉に入れた魚の状態確認に気を取られて操舵室を離れ、周囲の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、勝龍丸を見落としたまま、原針路を保って進行し、同船との衝突を招き、右舷中央部外板及び操舵室上部を圧壊させ、自船の球状船首部を圧壊するに至った。
以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
A受審人は、夜間、山口県青海島北北西方沖合において、投錨して集魚を行う場合、自船に向首接近する光漁丸を見落とすことのないよう、周囲の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、魚群の探索に気を取られ、周囲の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、自船に向首接近する光漁丸に気付かず、注意喚起信号を行わないまま探索を続けていて同船との衝突を招き、前示損傷を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
よって主文のとおり裁決する。