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 海難審判庁裁決録 >  2001年度(平成13年) > 衝突事件一覧 >  事件





平成13年門審第16号
件名

漁船第十一栄丸漁船開漁丸衝突事件(簡易)

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成13年12月3日

審判庁区分
門司地方海難審判庁(原 清澄)

理事官
千手末年

受審人
A 職名:第十一栄丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
B 職名:開漁丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
開漁丸・・・右舷船首部錨台を折損
十一栄丸・・・左舷船尾部外板に亀裂

原因
開漁丸・・・見張り不十分、船員の常務(避航動作)不遵守(主因)
十一栄丸・・・警告信号不履行(一因)

裁決主文

 本件衝突は、開漁丸が、見張り不十分で、漂泊中の第十一栄丸を避けなかったことによって発生したが、第十一栄丸が、船橋を無人とし、警告信号を行わなかったことも一因をなすものである。
 受審人Bを戒告する。
 受審人Aを戒告する。

適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成12年5月5日01時00分
 宮崎県都井岬南東沖合

2 船舶の要目
船種船名 漁船第十一栄丸 漁船開漁丸
総トン数 9.97トン 4.58トン
登録長 11.90メートル 9.80メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
出力 47キロワット 51キロワット

3 事実の経過
 第十一栄丸(以下「栄丸」という。)は、まぐろはえ縄漁業に従事するFRP製漁船で、A受審人ほか1人が乗り組み、操業の目的で、船首0.60メートル船尾1.70メートルの喫水をもって、平成12年5月2日09時30分宮崎県目井津漁港を発し、同県都井岬南東方沖合の漁場に向かい、同日18時30分漁場に至って操業を開始した。
 越えて同月4日21時00分A受審人は、都井岬灯台から158度(真方位、以下同じ。)25.5海里の地点で、操業を翌日の早朝から行うことにし、漂泊して待機することとしたが、航行中の動力船が掲げる灯火のほか黄色回転灯を点灯していいたので、接近する他船が漂泊中の自船を避けて行くものと思い、在橋して周囲の見張りを行うことなく、船橋を無人とし、船員室に下がって仮眠をとった。
 翌5日00時57分A受審人は、栄丸が折からの海流で都井岬灯台から135度23.5海里の地点まで流され、その船首が113度を向いていたとき、左舷船首67度530メートルのところに、開漁丸が自船に向首する態勢で接近していたものの、仮眠中であったので、このことに気付かなかった。
 栄丸は、警告信号が行われないまま漂泊中、01時00分都井岬灯台から135度23.5海里の地点において、その左舷船尾に、開漁丸の船首部が前方から67度の角度をもって衝突した。
 当時、天候は晴で風力1の南西風が吹き、視界は良好で、衝突地点付近には2.5ノットの北東流があった。
 また、開漁丸は、まぐろはえ縄漁業に従事するFRP製漁船で、B受審人が1人で乗り組み、操業の目的で、船首0.55メートル船尾1.05メートルの喫水をもって、同月4日13時00分宮崎県油津港を発し、同県南東方沖合の漁場に向かった。
 22時00分B受審人は、予定の漁場に至り、その後、時間調整のため漂泊し、翌5日00時30分折からの海流で都井岬灯台から131度23.6海里の地点まで流されたとき、投縄開始予定地点付近まで潮上りすることにし、針路を226度に定め、機関を極微速力にかけて3.2ノットの対地速力とし、自動操舵により進行した。
 ところで、B受審人は、発進後、操舵室内のいすに前方を向いて腰を掛け、明かりを点灯してはえ縄の枝縄に釣り針を取り付ける作業を始め、時折明かりを消しては周囲の状況を確認しながら続航した。
 00時57分B受審人は、都井岬灯台から134度23.5海里の地点に達したとき、正船首530メートルのところに、漂泊中の栄丸を視認でき、その後、同船と衝突のおそれがある態勢で接近する状況となったが、釣り針を取り付ける作業に熱中し、前路の見張りを十分に行っていなかったので、これを認めず、同船を避けないまま進行した。
 開漁丸は、原針路、原速力のまま続航中、前示のとおり衝突した。
 衝突の結果、第十一栄丸は、左舷船尾部外板に亀裂を生じ、開漁丸は、右舷船首部錨台を折損したが、のちいずれも修理された。

(原因)
 本件衝突は、夜間、宮崎県都井岬南東方沖合において、航行中の開漁丸が、見張り不十分で、漂泊中の第十一栄丸を避けなかったことによって発生したが、第十一栄丸が、船橋を無人とし、警告信号を行わなかったことも一因をなすものである。

(受審人の所為)
 B受審人は、夜間、宮崎県都井岬南東方沖合において、操業開始地点に向けて航行する場合、漂泊中の第十一栄丸を見落とさないよう、前路の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、操舵室の明かりを点灯し、はえ縄の枝縄に釣り針を取り付ける作業をしていたものの、時々明かりを消しては周囲の状況を確認しているので大丈夫と思い、前路の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、同作業に熱中し、漂泊中の第十一栄丸を見落としたまま、同船に向首進行して同船との衝突を招き、左舷船尾部外板に亀裂などを生じさせ、自船の船首部錨台を折損するに至った。
 A受審人は、夜間、宮崎県都井岬南東方沖合において、操業予定時刻まで漂泊して待機する場合、衝突のおそれがある態勢で接近する開漁丸を見落とすことのないよう、在橋して周囲の見張りを行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、航行中の他船が漂泊中の自船を避けるものと思い、在橋して周囲の見張りを行わなかった職務上の過失により、船橋を無人とし、自船に向首接近する開漁丸に気付かず、警告信号を行えないまま漂泊していて同船との衝突を招き、前示損傷を生じさせるに至った。


参考図
(拡大画面:30KB)





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