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 海難審判庁裁決録 >  2001年度(平成13年) > 衝突事件一覧 >  事件





平成13年神審第53号
件名

漁船明石丸遊漁船中崎丸衝突事件(簡易)

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成13年12月19日

審判庁区分
神戸地方海難審判庁(黒田 均)

理事官
釜谷奬一

受審人
A 職名:明石丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
B 職名:中崎丸船長 海技免状:四級小型船舶操縦士

損害
明石丸・・・左舷側外板に損傷
船長が打撲傷
中崎丸・・・船首部ハンドレールに曲損

原因
中崎丸・・・見張り不十分、船員の常務(前路進出)不遵守

裁決主文

 本件衝突は、中崎丸が、見張り不十分で、無難に航過する態勢の明石丸の前路に進出したことによって発生したものである。
 受審人Bを戒告する。

適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成12年8月20日06時35分
 兵庫県明石港

2 船舶の要目
船種船名 漁船明石丸 遊漁船中崎丸
総トン数 4.09トン  
登録長 9.75メートル 9.94メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
出力   169キロワット
漁船法馬力数 70  

3 事実の経過
 明石丸は、一本釣り漁業に従事するFRP製漁船で、A受審人が1人で乗り組み、息子1人を同乗させ、船首尾0.3メートルの等喫水をもって、平成12年8月20日05時ごろ兵庫県明石港の西外港泊地を発し、同港東方で釣り餌を採り、06時15分帰途についた。
 A受審人は、1人で操舵と見張りにあたり、低速力で西進し、06時30分明石港東外港西防波堤灯台(以下「西防波堤灯台」という。)から105度(真方位、以下同じ。)610メートルの地点で、針路を西外港泊地東口に向く278度に定め、機関を微速力前進にかけ4.0ノットの速力(対地速力、以下同じ。)とし、手動操舵により進行した。
 定針したときA受審人は、西外港南防波堤東部で瀬渡し中の中崎丸を初認し、06時32分同船が正船首方620メートルの地点から東進し始めたのを認めた。
 06時33分半A受審人は、西防波堤灯台から121度180メートルの地点に達したとき、内港泊地方面から南下してきた第3船をかわすため、針路を324度に転じ、同時34分半わずか前同灯台から099度100メートルの地点で、再び前示の東口に向け針路を262度としたところ、正船首少し左150メートルに中崎丸を認め、ほぼ平行の針路模様で、互いに左舷を対し20メートル隔てて無難に航過する態勢となったことを知って続航した。
 06時35分少し前A受審人は、左舷前方の中崎丸が急に左転し、自船の前路に進出しているのを認め、衝突の危険を感じて大声で叫んだものの、どうすることもできず、06時35分西防波堤灯台から152度25メートルの地点において、明石丸は、原針路原速力のまま、その左舷側後部に、中崎丸の船首部が、前方から45度の角度で衝突した。
 当時、天候は晴で風はほとんどなく、潮候は上げ潮の初期であった。
 また、中崎丸は、瀬渡しなどに従事するFRP製遊漁船で、B受審人が1人で乗り組み、遊漁客2人を乗せ、船首0.3メートル船尾0.7メートルの喫水をもって、同日06時25分兵庫県明石港の内港泊地を発し、西外港南防波堤東部に向かった。
 06時30分B受審人は、目的地に到着して前示の遊漁客を下ろし、別の1人を乗せて防波堤から離れ、同時32分西防波堤灯台から262度270メートルの地点において、針路を090度に定め、機関を微速力前進にかけ3.0ノットの速力とし、手動操舵により進行した。
 定針したときB受審人は、右舷船首8度620メートルのところに、西進中の明石丸を視認できる状況であったが、右舷方で漂泊中の釣り船を認めただけで明石丸を見落とし、その後同船が右転したことにも、06時34分半わずか前左舷船首10度150メートルのところで左転し、ほぼ平行の針路模様で、互いに左舷を対し20メートル隔てて無難に航過する態勢となったことにも気付かないまま続航した。
 06時35分少し前B受審人は、西防波堤灯台に並んだとき、内港泊地に向け転針することとしたが、前路に航行中の他船はいないものと思い、内港泊地方面からの出航船の確認に気をとられ、見張りを十分に行わず、明石丸に気付かないまま左転し、同船の前路に進出して間もなく、叫び声を聞き右舷船首至近のところに明石丸を初めて認め、機関を後進にかけたが及ばず、中崎丸は、037度に向首したとき、ほぼ原速力のまま、前示のとおり衝突した。
 衝突の結果、明石丸は、左舷側外板に損傷を、中崎丸は、船首部ハンドレールに曲損をそれぞれ生じ、A受審人が打撲傷を負った。

(原因)
 本件衝突は、兵庫県明石港の防波堤外側水域において、西進する明石丸と東進する中崎丸とが互いに左舷を対し無難に航過する態勢で進行中、中崎丸が、内港泊地に向け転針する際、見張り不十分で、明石丸の前路に進出したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 B受審人は、兵庫県明石港の防波堤外側水域を東進中、内港泊地に向け転針する場合、西進中の明石丸を見落とさないよう、見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、定針したとき右舷方で漂泊中の釣り船以外に他船を認めなかったので、前路に航行中の他船はいないものと思い、内港泊地方面からの出航船の確認に気をとられ、見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、互いに左舷を対し無難に航過する態勢の明石丸に気付かないまま左転し、同船の前路に進出して衝突を招き、明石丸の左舷側外板に損傷を、中崎丸の船首部ハンドレールに曲損をそれぞれ生じさせ、A受審人に打撲傷を負わせるに至った。
 A受審人の所為は、本件発生の原因とならない。


参考図
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