(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成12年12月3日10時00分
福井県鋸埼北東方沖合
2 船舶の要目
船種船名 |
遊漁船庄栄丸 |
プレジャーボートトミー号 |
総トン数 |
9.7トン |
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全長 |
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3.15メートル |
登録長 |
13.67メートル |
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機関の種類 |
ディーゼル機関 |
電気点火機関 |
出力 |
426キロワット |
5キロワット |
3 事実の経過
庄栄丸は、船体中央部に操舵室を有するFRP製遊漁船で、A受審人が1人で乗り組み、釣り客2人を乗せ、遊漁の目的で、船首0.4メートル船尾0.5メートルの喫水をもって、平成12年12月3日09時40分福井県大島漁港を発し、同県鋸埼北方沖合5.5海里付近の釣り場に向かった。
A受審人は、発航時から操舵輪後方で操船に当たり、09時50分赤礁埼灯台から082度(真方位、以下同じ。)300メートルの地点で、針路を352度に定め、機関を半速力前進にかけ、10.5ノットの対地速力で、手動操舵により進行した。
09時58分A受審人は、鋸埼灯台から084度800メートルの地点に達したとき、正船首650メートルのところに、トミー号を視認し得る状況であったが、定針したころ小浜湾湾口付近に他船を認めなかったことから、前路に船はいないものと思い、前方の見張りを十分に行わなかったので、トミー号の存在に気付かず、遠方を目視しながら続航した。
その後、A受審人は、錨泊中の形象物を表示していないものの、船首が風上に向き、静止している様子から錨泊していることが分かるトミー号に、衝突のおそれがある態勢のまま接近していることに気付かず、同船を避けることなく進行中、10時00分鋸埼灯台から044度1.000メートルの地点において、庄栄丸は、原針路原速力のまま、その船首がトミー号の左舷船首部に前方から27度の角度で衝突した。
当時、天候は晴で風力2の南東風が吹き、潮候は下げ潮の末期にあたり、視界は良好で、付近海上には波高1メートルのうねりがあった。
また、トミー号は、船外機装備の緑色ゴム製プレジャーボートで、B受審人が1人で乗り組み、友人1人を乗せ、魚釣りの目的で、船首尾0.15メートルの等喫水をもって、同日07時30分大島漁港を発し、鋸埼北東方沖合1.000メートル付近の釣り場に向かった。
B受審人は、08時00分衝突地点付近の水深約30メートルの釣り場に至り、機関を停止して船首から重さ10キログラムの鉛製錨を投じ、錨索として直径5.5ミリメートルの合成繊維索を約50メートル延出して錨泊し、船首を南東方に向け、錨泊中の形象物を表示しないまま、魚釣りを開始した。
09時58分B受審人は、船首が135度を向いていたとき、右舷船首37度650メートルのところに庄栄丸を初めて視認し、その後同船が衝突のおそれがある態勢で接近していることを知ったが、庄栄丸が錨泊中の自船を避けてくれるものと思い、有効な音響による注意喚起信号を行うことも、機関を始動して衝突を避けるための措置をとることもなく、庄栄丸を見守りながら錨泊を続け、10時00分少し前同船が至近に迫り、ようやく危険を感じ、同乗者とともに笛と大声で合図をしたが及ばず、2人で左舷側から海中に飛び込み、その反動で199度に向首したとき、トミー号は、前示のとおり衝突した。
衝突の結果、庄栄丸は、左舷船首部に擦過傷を生じ、トミー号は、船外機取付板に亀裂、浮体に擦過傷をそれぞれ生じ、B受審人は右下腿開放性骨折を負った。
(原因)
本件衝突は、福井県鋸埼北東方沖合において、北上中の庄栄丸が、見張り不十分で、錨泊中のトミー号を避けなかったことによって発生したが、トミー号が、有効な音響による注意喚起信号を行わず、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。
(受審人の所為)
A受審人は、福井県鋸埼北東方沖合を釣り場に向けて北上する場合、前路で錨泊中のトミー号を見落とすことのないよう、前方の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、定針したころ小浜湾湾口付近に他船を認めなかったことから、前路に船はいないものと思い、前方の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、トミー号の存在に気付かず、同船を避けることなく進行して衝突を招き、庄栄丸の左舷船首部に擦過傷を、トミー号の船外機取付板に亀裂、浮体に擦過傷をそれぞれ生じさせ、B受審人に右下腿開放性骨折を負わせるに至った。
B受審人は、福井県鋸埼北東方沖合において、釣りのため錨泊中、庄栄丸が衝突のおそれがある態勢で接近していることを知った場合、機関を始動して衝突を避けるための措置をとるべき注意義務があった。しかるに、同人は、庄栄丸が錨泊中の自船を避けてくれるものと思い、衝突を避けるための措置をとらなかった職務上の過失により、錨泊を続けて庄栄丸との衝突を招き、両船に前示の損傷を生じさせ、自らが負傷するに至った。