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平成13年横審第76号
件名

プレジャーボートオーロラ橋桁衝突事件(簡易)

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成13年12月12日

審判庁区分
横浜地方海難審判庁(黒岩 貢)

副理事官
河野 守

受審人
A 職名:オーロラ船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
操舵室上部及び船首部構造物を損壊
船長が頭部切創、同乗者1人が頭部挫創

原因
針路保持不十分

裁決主文

 本件橋桁衝突は、針路の保持が不十分であったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成12年10月28日07時40分
 千葉港葛南区

2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボートオーロラ
登録長 6.58メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 58キロワット

3 事実の経過
 オーロラは、船体中央部に操舵室を備えたFRP製プレジャーボートで、A受審人が1人で乗り組み、友人2人を乗せ、魚釣の目的で、船首0.1メートル船尾0.6メートルの喫水をもって、平成12年10月28日07時20分千葉県船橋市日の出1丁目の係留地点を発し、千葉港葛南区の市川漁港経由で木更津港沖合の釣場に向かった。
 ところで、市川漁港は、JR京葉線市川塩浜駅付近から東方に1,500メートルほど突き出した市川市塩浜1丁目の突堤(以下「塩浜突堤」という。)南側に位置し、東西2箇所に分かれた船だまりがある漁港で、かつて沖合の干潟との通行に使われた長さ約240メートルの連絡橋が、東側船だまりの西端に沿って沖合に向け173度(真方位、以下同じ。)の方向に築造されていた。同橋は、15メートル間隔で設置された鉄製の橋脚と、最低低潮面からの高さが3.1メートルとなる鉄製の橋桁とによって構成され、また、同漁港周辺の水深が浅く、船舶が通航できるのは塩浜突堤の南側沖合50ないし100メートルの水域に限られていたため、連絡橋基部から80メートルと95メートルのところにある橋脚間の橋桁を昇降式とし、幅15メートルの「船通し」と呼ばれる船舶通航箇所を設けていたが、当時、その昇降式橋桁も取り去られていた。
 発航後A受審人は、日の出水門を抜けて船橋中央ふ頭と陸岸との間の水路を西進し、江戸川河口を横切ったのち、07時37分半千葉港葛南市川灯台(以下「市川灯台」という。)から078.5度1,300メートルの地点に達し、塩浜突堤南東端に右舷側約30メートルで並んだとき、針路を同突堤に沿う249度に定め、13.0ノットの対地速力で手動操舵により進行した。
 07時39分A受審人は、市川灯台から086度700メートルの地点において、針路を連絡橋の船通しに向首する257度に転じて続航中、同時40分少し前同灯台から093度400メートルの地点に至り、船通しまで100メートルに接近したとき、ふと足元に置いたクーラーボックスの移動を思い立った。
 A受審人は、船通しの幅が15メートルしかなく、その中央に向けて直進しないと両側の橋桁や橋脚に衝突する可能性のあることを承知していたが、舵中央としておけば少しの間は直進するものと思い、操舵に留意して針路を十分に保持することなく、右手で舵輪を持ったまま船首目標から目を離して前屈みになったところ、舵輪がわずかに右に回り、少し右舵をとった状態となって右回頭を始めた。
 07時40分わずか前A受審人は、ふと顔を上げたとき、目前に迫った橋桁を認め、とっさに左舵一杯としたが及ばず、07時40分オーロラは、市川灯台から094度300メートルの地点において、原速力のまま228度を向首したとき、操舵室上部が連絡橋の橋桁に対し55度の角度で衝突した。
 当時、天候は晴で風はほとんどなく、潮候は下げ潮の初期にあたり、潮高は166センチメートルで、橋桁の海面上高さは144センチメートルであった。
 その結果、操舵室上部及び船首部構造物が損壊したが、のち修理され、A受審人が1週間の通院加療を要する頭部切創を、同乗者1人が1日間の入院及び1週間の通院加療を要する頭部挫創をそれぞれ負った。

(原因)
 本件橋桁衝突は、千葉港葛南区内の市川漁港沖合において、同漁港と沖合の干潟とを結ぶ連絡橋の船通しに向けて西進中、針路の保持が不十分で、同橋の橋桁に向けて進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、千葉港葛南区の市川漁港沖合において、同漁港と沖合の干潟とを結ぶ連絡橋に設けられた船通しに向けて西進する場合、同橋の橋桁に衝突しないよう、針路を十分に保持すべき注意義務があった。しかるに同人は、舵中央としておけば少しの間は直進するものと思い、足元に置いたクーラーボックスの移動のため船首目標から目を離し、針路を十分に保持しなかった職務上の過失により、右転進行して橋桁への衝突を招き、操舵室上部等の損壊を生じさせ、同乗者1人に頭部挫創を負わせ、自らも頭部切創を負うに至った。





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