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平成13年長審第29号
件名

漁船博幸丸プレジャーボートなぎさ衝突事件

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成13年11月14日

審判庁区分
長崎地方海難審判庁(平野浩三、亀井龍雄、河本和夫)

理事官
向山裕則

受審人
A 職名:博幸丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
B 職名:なぎさ船長 海技免状:四級小型船舶操縦士

損害
博幸丸・・・推進器翼に曲損
なぎさ・・・船尾上部船体を圧壊及び船外機関の脱落、のち廃船
船長が胸部及び両下肢に打撲傷

原因
博幸丸・・・見張り不十分、船員の常務(避航動作)不遵守(主因)
なぎさ・・・船員の常務(衝突回避措置)不遵守(一因)

主文

 本件衝突は、博幸丸が、見張り不十分で、前路で錨泊中のなぎさを避けなかったことによって発生したが、なぎさが衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。
 受審人Aを戒告する。
 受審人Bを戒告する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成12年10月1日17時10分
 長崎県佐世保市高島南端沖合

2 船舶の要目
船種船名 漁船博幸丸 プレジャーボートなぎさ
総トン数 4.9トン  
全長 14.00メートル  
登録長   3.75メートル
機関の種類 ディーゼル機関 電気点火機関
出力 242キロワット 7キロワット

3 事実の経過
 博幸丸は、一本釣漁業に従事するFRP製漁船で、A受審人が1人で乗り組み、操業の目的で、船首0.5メートル船尾1.3メートルの喫水をもって、平成12年10月1日17時00分長崎県高島漁港を発し、同漁港より南西方約18海里の漁場に向かった。
 17時08分A受審人は、牛ケ首灯台から097度(真方位、以下同じ。)1,340メートルの地点に達し、針路を270度に定め、機関を全速力前進にかけ、17.0ノットの対地速力で手動操舵により進行した。
 定針したとき、A受審人は、正船首方1,060メートルのところになぎさを認め得る状況で、停止状態にある同船と衝突のおそれのある状態で接近したが、前路には船がいないものと思い、前路の見張りを厳重に行うことなく、夕日で前路の海面が輝き、まぶしく感じて船首方から目をそらして続航した。
 その後A受審人は、なぎさの停止状態から、同船が錨泊していることを認め得る状況であったが、依然として海面反射で船首方から目をそらしていたため、同船の存在に気付かず、同船を避けないまま進行し、17時10分牛ケ首灯台から134度220メートルの地点において、原針路、原速力で、博幸丸の船首がなぎさの右舷船尾に後方から40度の角度で衝突した。
 当時、天候は晴で風力1の北東風が吹き、視界は良好であった。
 また、なぎさは、FRP製プレジャーボートで、B受審人が1人で乗り組み、釣りの目的で、船首0.4メートル船尾0.2メートルの喫水をもって、同日11時10分衝突を避けるための有効な音響信号による手段を有しないまま佐世保市大潟町大崎の係留地を発し、衝突地点に向かい、同時35分水深約11メートルの同地点に至って、機関を停止し、船尾から長さ約20メートルの錨索を延出して錨泊し、錨泊中に表示すべき形象物を掲げないで釣りを行った。
 17時09分B受審人は、船尾端に腰掛けて船首を260度に向けて錨泊中、左舷船尾10度520メートルのところに自船に向首する博幸丸を初めて視認し、その後衝突のおそれを認めて自船の存在を知らせるため釣竿を大きく左右に振ったものの、依然として博幸丸が自船を避航せずに接近していたが、やがて避航してくれるものと思い、速やかに機関を使用して移動するなど、衝突を避けるための措置をとることなく、同船に対して釣竿を振り続けた。
 17時10分わずか前B受審人は、同船が至近に迫って、ようやく衝突の危険を感じて機関を使用して急いで右舵一杯としたが及ばす、前示のとおり衝突した。
 衝突の結果、博幸丸は推進器翼が曲損し、のち修理され、なぎさは船尾上部船体を圧壊及び船外機関の脱落をそれぞれ生じて廃船となり、B受審人は胸部及び両下肢に入院加療を要する打撲傷を負った。

(原因)
 本件衝突は、長崎県高島南端沖合において、博幸丸が、見張り不十分で、前路で錨泊中のなぎさを避けなかったことによって発生したが、なぎさが、機関を使用して衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、長崎県高島南端沖合において、漁場に向けて進行する場合、前路で錨泊中のなぎさを見落とさないよう、見張りを厳重に行うべき注意義務があった。しかしながら、同人は前路には船がいないものと思い、船首方の海面反射をまぶしく感じて船首方から目をそらして見張りを行わなかった職務上の過失により、なぎさの存在に気付かず進行して衝突を招き、博幸丸の推進器翼を曲損させ、なぎさの船尾上部船体を圧壊及び船外機関の脱落をそれぞれ生じさせて廃船とさせ、B受審人に胸部及び両下肢に入院加療を要する打撲傷を負わせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して、同人を戒告する。
 B受審人は、長崎県高島南端沖合において、錨泊中、自船に向けて進行する博幸丸を認めた場合、衝突を避けるための有効な音響信号による手段がなかったのであるから、速やかに機関を使用して移動するなど衝突を避けるための措置をとるべき注意義務があった。しかしながら、同人は博幸丸がやがて避けてくれるものと思い、速やかに機関を起動して移動するなど衝突を避けるための措置をとらなかった職務上の過失により、間近に迫ってから機関を起動したがほとんど移動できず衝突を招き、前示の結果を生じさせるに至った。
 以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して、同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。


参考図
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