(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成12年6月5日19時25分
兵庫県東播磨港沖合
2 船舶の要目
船種船名 |
貨物船第八宝祥丸 |
漁船市丸 |
総トン数 |
465トン |
4.94トン |
全長 |
65.52メートル |
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登録長 |
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11.05メートル |
機関の種類 |
ディーゼル機関 |
ディーゼル機関 |
出力 |
735キロワット |
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漁船法馬力数 |
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15 |
3 事実の経過
第八宝祥丸(以下「宝祥丸」という。)は、船尾船橋型の鋼製砂利採取運搬船で、A、B両受審人ほか2人が乗り組み、空倉で、船首1.2メートル船尾2.9メートルの喫水をもって、平成12年6月5日19時05分兵庫県東播磨港を発し、広島県呉港へ向かった。
A受審人は、航海当直を自らとB受審人及び一等航海士による単独の3時間3直制とし、離岸操船に引き続き当直に立って港外へ向かい、19時13分少し前東播磨港高砂西防波堤灯台(以下「西防波堤灯台」という。)から152度(真方位、以下同じ。)50メートルの地点で、針路を257度に定め、機関を全速力前進にかけ、12.0ノットの速力(対地速力、以下同じ。)で自動操舵により進行した。
定針して間もなく、A受審人は、昇橋してきた次直のB受審人にいつものとおり船橋当直を任せることとし、同人が海上経験豊富で慣れた航路であり、船首方遠くに散在している数隻の漁船に気をつけるよう指示して降橋した。
B受審人は、所定の灯火を表示して船橋当直にあたり、前示針路速力のまま西行を続け、正船首方からやや左方にかけて散在する漁船が、船型から操業している底びき網漁船と分かり、曳網状況を双眼鏡で確かめるなど同漁船との接近模様に気をつけながら進行した。
日没後間もない薄明時の19時22分B受審人は、東播磨港伊保灯台(以下「伊保灯台」という。)から184度2,890メートルの地点に達したとき、右舷船首29度1,500メートルのところに、南下中の市丸を視認できる状況であったが、船首方で操業している数隻の漁船の動向に気を取られ、右舷方の見張りを十分に行っていなかったので、市丸の存在に気付かなかった。
こうして、B受審人は、市丸が前路を左方に横切り衝突のおそれのある態勢で接近していることに気付かず、同船の進路を避けずに続航し、19時25分わずか前右舷船首至近に迫った市丸を初めて認め、急いで手動操舵に切り替え左舵一杯としたが効なく、19時25分伊保灯台から203度3,400メートルの地点において、宝祥丸は、原針路原速力のまま、その右舷船首部が市丸の左舷船首部に後方から20度の角度で衝突した。
当時、天候は晴で風はほとんどなく、視界は良好で、日没時刻は19時12分であった。
また、市丸は、小型底びき網漁業に従事する木製漁船で、C受審人が1人で乗り組み、操業の目的で、船首0.3メートル船尾1.0メートルの喫水をもって、同日17時15分兵庫県姫路市的形町福泊の根拠地を発し、同地沖合1,500メートルの漁場に至り、投網、曳網及び揚網にいたる一連の作業約30分の漁を3ないし4回行ったのち、3海里沖合の漁場へ向け移動することとした。
C受審人は、19時10分伊保灯台から272度3,150メートルの地点で、針路を150度に定め、機関を8.0ノットの全速力前進にかけ、マスト灯が故障していたので、両色灯のみを表示したのち、操舵室後方にある遠隔の操舵輪で手動操舵により進行した。
やがて、C受審人は、海上平穏で舵の据わりも良いので魚の選別作業を行うこととし、操舵輪少し後方の甲板上で同作業を開始し、時折保針に当たりながら南下した。
19時22分C受審人は、伊保灯台から214度2,960メートルの地点に達したとき、左舷船首44度1,500メートルのところに、西行中の宝祥丸を視認することができる状況であったが、魚の選別作業に気を取られ、見張りを十分に行っていなかったので、宝祥丸の存在に気付かなかった。
こうして、C受審人は、宝祥丸が前路を右方に横切り衝突のおそれのある態勢で接近していることに気付かず、警告信号を行うことも、更に間近に接近したとき、衝突を避けるための協力動作をとることもなく続航し、19時25分少し前左舷船首間近に迫った宝祥丸にようやく気付き、急いで右舵一杯とするとともに速力を減じたが及ばず、市丸は、237度に向首したころ原速力のまま、前示のとおり衝突した。
衝突の結果、宝祥丸は、右舷船首部外板に擦過傷を、市丸は、船首部外板に亀裂を伴う損傷を生じ、のち修理された。
(原因)
本件衝突は、日没後間もない薄明時、兵庫県東播磨港沖合において、両船が互いに進路を横切り衝突のおそれのある態勢で接近中、西行中の宝祥丸が、見張り不十分で、前路を左方に横切る市丸の進路を避けなかったことによって発生したが、南下中の市丸が、見張り不十分で、警告信号を行わず、衝突を避けるための協力動作をとらなかったことも一因をなすものである。
(受審人の所為)
B受審人は、日没後間もない薄明時、東播磨港沖合において、単独で船橋当直について西行する場合、南下中の市丸を見落とさないよう、右舷方の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、船首方で操業している数隻の漁船の動向に気を取られ、右舷方の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、前路を左方に横切り衝突のおそれのある態勢で接近する市丸に気付かず、同船の進路を避けないまま進行して衝突を招き、自船の右舷船首部外板に擦過傷を、市丸の船首部外板に亀裂を伴う損傷をそれぞれ生じさせるに至った。
以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
C受審人は、日没後間もない薄明時、東播磨港沖合において、漁場移動の目的で南下する場合、西行中の宝祥丸を見落とさないよう、見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、魚の選別作業に気を取られ、見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、前路を右方に横切り衝突のおそれのある態勢で接近する宝祥丸に気付かず、警告信号を行うことも、更に間近に接近したとき、衝突を避けるための協力動作をとることもなく進行して衝突を招き、両船に前示の損傷を生じさせるに至った。
以上のC受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
A受審人の所為は、本件発生の原因とならない。
よって主文のとおり裁決する。