(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成12年3月27日04時50分
神戸港南方沖合
2 船舶の要目
船種船名 |
プレジャーボートエクセルーザー5 |
総トン数 |
12トン |
全長 |
14.50メートル |
機関の種類 |
ディーゼル機関 |
出力 |
67キロワット |
3 事実の経過
エクセルーザー5(以下「エ号」という。)は、レーダー設備のないFRP製プレジャーヨットで、A受審人及びB指定海難関係人ほか2人が乗り組み、回航の目的で、2.5メートルの最大喫水をもって、平成12年3月27日03時30分兵庫県尼崎西宮芦屋港を発し、沖縄県宜野湾港マリーナに向かった。
発航に先立ち、A受審人は、大阪湾での運航経験が豊富であったので、季節により大阪湾中央部に、のり養殖施設が設置され、その外縁には約200メートル間隔で標識灯があることを知っていたところ、回航にあたって乗組員と打合わせを行ったが、3月下旬で暖かくなっているので、すでに同施設は撤去されているものと思い、のり養殖施設に接近しないよう、ヨット・モータボート用参考図(H−138)などを精査し、その設置期間を確認するなど、水路調査を十分に行わず、同施設の存続に気付かなかった。
西宮防波堤をかわしたA受審人は、04時10分神戸港第7防波堤東灯台から193度(真方位、以下同じ。)3.0海里の地点において、針路を222度に定め、機関を全速力前進にかけ、10.5ノットの対地速力とし、自動操舵により進行した。
定針したのちA受審人は、無資格のB指定海難関係人に航海当直を行わせることとしたが、同人に対し、前方に標識灯などが見えたら知らせるよう指示せず、同当直を交代し、キャビンで休息した。
B指定海難関係人は、乗組員1人を補佐に就け、船尾コックピットで、肉眼により周囲を見張りながら大阪湾を南下していたところ、04時44分神戸港和田防波堤灯台から173度6.0海里の地点に達したとき、左舷前方に標識灯1個を視認したが、船長に報告せず、のり養殖施設の外縁を示す標識灯であることに気付かないまま少し右転してかわし、針路を元に戻したところ、同施設区域内で空所となっていた水域を続航し、04時50分同灯台から180度6.7海里の地点において、エ号は、原針路原速力のまま、のり養殖施設に衝突した。
当時、天候は晴で風力2の北東風が吹き、潮候は上げ潮の初期であった。
衝突の結果、のり網を船体に絡め、来援した漁船に引き出されたが、船体に擦過傷を、のり網に損傷をそれぞれ生じた。
(原因)
本件のり養殖施設衝突は、夜間、神戸港南方沖合を南下中、水路調査が不十分で、同沖合に設置されたのり養殖施設に向首進行したことによって発生したものである。
運航が適切でなかったのは、船長が、水路調査を十分に行わなかったばかりか、無資格の乗組員に航海当直を行わせる際、同人に対し、前方に標識灯などが見えたら知らせるよう指示しなかったことと、同乗組員が、左舷前方に標識灯を視認した際、船長に報告しなかったこととによるものである。
(受審人等の所為)
A受審人は、兵庫県尼崎西宮芦屋港から沖縄県宜野湾港マリーナに向け回航するにあたり、打合わせを行う場合、季節により大阪湾中央部に、のり養殖施設が設置されることを知っていたのであるから、同施設に接近しないよう、その設置期間を確認するなど、水路調査を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、3月下旬で暖かくなっているので、すでに同施設は撤去されているものと思い、水路調査を十分に行わなかった職務上の過失により、のり養殖施設の存続に気付かず、同施設に向首進行して衝突を招き、船体とのり網に損傷を生じさせるに至った。
B指定海難関係人が、夜間、神戸港南方沖合を南下中、左舷前方に標識灯を視認した際、船長に報告しなかったことは、本件発生の原因となる。