(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成11年12月29日00時36分
高知県室戸岬南西方沖合
2 船舶の要目
船種船名 |
旅客船さんふらわあさつま |
漁船第七正漁丸 |
総トン数 |
12,415トン |
13トン |
全長 |
186.00メートル |
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登録長 |
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14.80メートル |
機関の種類 |
ディーゼル機関 |
ディーゼル機関 |
出力 |
25,154キロワット |
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漁船法馬力数 |
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160 |
3 事実の経過
さんふらわあ さつま(以下「さつま」という。)は、2基2軸2舵の可変ピッチプロペラを装備した、大阪港と鹿児島県志布志港との間の定期航路に就航する旅客船兼自動車渡船で、A受審人ほか30人が乗り組み、乗客679人及び車両324台を載せ、船首6.40メートル船尾6.42メートルの喫水をもって、平成11年12月28日18時00分大阪港を発し、航行中の動力船の灯火を表示して志布志港に向かった。
A受審人は、翌29日00時00分室戸岬灯台から232度(真方位、以下同じ。)17.2海里の地点で、甲板手1人を伴って船橋当直に就き、針路を242度に定めて自動操舵とし、機関を全速力前進にかけ、折からの海流に抗して22.0ノットの対地速力で進行した。
00時19分A受審人は、レーダーで左舷船首17度8.0海里のところに、第七正漁丸(以下「正漁丸」という。)の映像を初めて探知し、やがて同船の白、緑2灯を視認してその動静を監視するうち、同時32分少し前室戸岬灯台から235.5度28.6海里の地点に達したとき、正漁丸が同方向2.0海里になり、その後その方位に変化なく前路を右方に横切り衝突のおそれがある態勢で接近していることを知った。
00時34分A受審人は、正漁丸が1.0海里に接近したのを認め、注意喚起のため昼間信号灯により同船に対して閃光を繰り返し照射したものの、乗客が就寝しているので汽笛による警告信号を行わず、やがて、同船が間近に接近したのを認めたが、いずれ正漁丸が避けるものと思い、右転するなど衝突を避けるための協力動作をとることなく続航した。
00時35分半A受審人は、正漁丸が自船の進路を避けずに至近に接近したとき、ようやく衝突の危険を感じ、甲板手に手動操舵に切り替えさせ、右舵15度、続いて左舵10度を指示したが及ばず、00時36分室戸岬灯台から236度30.0海里の地点において、さつまは、270度を向首したとき、原速力のまま、その左舷側後部に正漁丸の船首が後方から85度の角度で衝突した。
当時、天候は晴で風力3の北風が吹き、視界は良好で、付近には2.0ノットの東北東流があった。
また、正漁丸は、まぐろはえなわ漁業に従事するFRP製漁船で、B受審人ほか2人が乗り組み、船首0.4メートル船尾0.2メートルの喫水をもって、同月22日09時00分高知県室津港を発し、19時ごろ室戸岬南南西方80海里付近の漁場に至り、漁獲物約3.5トンを獲て操業を終え、28日19時30分同漁場を発進し、水揚げのため、航行中の動力船の灯火を表示して高知港に向かった。
ところで、B受審人は、日出から23時ごろまで操業を行い、翌朝操業を再開するまでの間は、漂泊して乗組員を休息させ、自らも休息をとり、操業中は、投縄を終えて揚縄を開始するまでの間に適宜休息をとっていた。
B受審人は、漁場発進時から甲板員1人に船橋当直を任せて自室で休息したのち、21時30分足摺岬灯台から115度34.5海里の地点で昇橋し、同人から船橋当直を引き継ぎ、針路を355度に定めて自動操舵とし、機関を回転数毎分1,350にかけ、折からの海流により右方へ10度圧流されながら9.5ノットの対地速力で進行した。
その後B受審人は、操舵室後部の台の上に腰掛け、船尾側の壁に寄り掛かった姿勢で見張りを続けていたところ、海上平穏で周囲に気になる他船を認めなかったので、眠気を催すようになったが、まさか居眠りすることはあるまいと思い、休息中の甲板員と当直を交替するなど、居眠り運航の防止措置をとらないでいるうち、いつしか居眠りに陥った。
翌29日00時32分少し前B受審人は、室戸岬灯台から235度30.6海里の地点に達したとき、右舷船首50度2.0海里のところにさつまの白、白、紅3灯を視認することができ、その後その方位に変化がなく前路を左方に横切り衝突のおそれがある態勢で接近していたが、居眠りしていたので、このことに気付かず、同船の進路を避けることなく進行中、正漁丸は、原針路原速力のまま、前示のとおり衝突した。
衝突の結果、さつまは、左舷後部外板に擦過傷を生じ、正漁丸は、船首部を圧壊したが、のち修理され、B受審人が右肩腱板を負傷した。
(原因)
本件衝突は、夜間、高知県室戸岬南西方沖合において、両船が互いに進路を横切り衝突のおそれがある態勢で接近中、北上中の正漁丸が、居眠り運航の防止措置が不十分で、前路を左方に横切るさつまの進路を避けなかったことによって発生したが、西行中のさつまが、警告信号を行わず、衝突を避けるための協力動作をとらなかったことも一因をなすものである。
(受審人の所為)
B受審人は、夜間、高知県室戸岬南西方沖合において、単独で操船に当たり、高知港に向けて北上中、眠気を催した場合、休息中の甲板員と船橋当直を交替するなど、居眠り運航の防止措置をとるべき注意義務があった。しかるに、同受審人は、まさか居眠りすることはあるまいと思い、居眠り運航の防止措置をとらなかった職務上の過失により、いつしか居眠りに陥り、前路を左方に横切り衝突のおそれがある態勢で接近するさつまに気付かず、その進路を避けないまま進行して同船との衝突を招き、正漁丸の船首部に圧壊を、さつまの左舷後部外板に擦過傷をそれぞれ生じさせるとともに、自ら右肩腱板を負傷するに至った。
以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第2号を適用して同人の一級小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。
A受審人は、夜間、高知県室戸岬南西方沖合を西行中、左舷前方の正漁丸が、前路を右方に横切り衝突のおそれがある態勢で、自船の進路を避けないまま間近に接近するのを認めた場合、右転するなど、衝突を避けるための協力動作をとるべき注意義務があった。しかるに、同受審人は、いずれ正漁丸が避けるものと思い、衝突を避けるための協力動作をとらなかった職務上の過失により、そのまま進行して正漁丸との衝突を招き、前示の損傷及び負傷を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
よって主文のとおり裁決する。