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平成13年神審第13号
件名

遊漁船広幸丸プレジャーボート青戸25衝突事件

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成13年11月13日

審判庁区分
神戸地方海難審判庁(西田克史、黒田 均、西山烝一)

理事官
加藤昌平

受審人
A 職名:広幸丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
B 職名:青戸25船長 海技免状:四級小型船舶操縦士

損害
広幸丸・・・船首部外板に擦過傷
同乗者2人が肋骨骨折、胸部打撲及び右足挫傷
青戸・・・船尾部を圧壊し、のち廃船
同乗者2人が肋骨骨折、胸部打撲及び右足挫傷

原因
広幸丸・・・見張り不十分、船員の常務(避航動作)不遵守(主因)
青戸・・・見張り不十分、船員の常務(衝突回避措置)不遵守(一因)

主文

 本件衝突は、広幸丸が、見張り不十分で、漂泊中の青戸25を避けなかったことによって発生したが、青戸25が、見張り不十分で、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。
 受審人Aの一級小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。
 受審人Bを戒告する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成12年8月1日21時05分
 福井県小浜港

2 船舶の要目
船種船名 遊漁船広幸丸 プレジャーボート青戸25
総トン数 3.6トン  
全長 11.25メートル  
登録長   6.83メートル
機関の種類 ディーゼル機関 電気点火機関
出力 147キロワット 250キロワット

3 事実の経過
 広幸丸は、船体中央より少し後方に操縦室を設け、同室上方に法定灯火の設備を有するFRP製小型遊漁兼用船で、福井県小浜港内で催される花火大会を海上から見物するため、A受審人が1人で乗り組み、親戚等5人を乗せ、船首0.2メートル船尾1.0メートルの喫水をもって、平成12年8月1日19時30分同県大島漁港を発し、小浜港に向かった。
 A受審人は、19時50分小浜港の沖防波堤南西端沖合に着き、所定の灯火を点灯した状態で漂泊を始め、20時から21時まで花火大会を見物して帰途に就くこととし、操縦室左舷寄りのいすに腰をかけ、同時03分半小浜港沖防波堤灯台(以下「沖防波堤灯台」という。)から241度(真方位、以下同じ。)310メートルの地点を発進し、針路を297度に定め、機関を全速力前進の回転数から少し下げ、22.0ノットの対地速力で手動操舵により進行した。
 ところで、広幸丸は、発進前から、同乗者1人が船首先端に、3人が船体中央部で船幅方向に寄り添うようにそれぞれ腰を下ろしていたうえ、1人が船首部のたつにつかまり立っていたので、これらの人影により操縦位置からでは船首方の見通しがやや妨げられる状況であった。
 発進時、A受審人は、正船首1,000メートルのところに、静止状態にある青戸25(以下「青戸」という。)の白、緑2灯を視認することができる状況であったが、同乗者の間から前方を一瞥(いちべつ)して何も認めなかったので、前路に他船はいないものと思い、青戸を見落とすことのないよう、同乗者を船尾甲板に移動させるなど、船首方の見張りを十分に行っていなかったので、同船の存在に気付かなかった。
 こうして、A受審人は、その後漂泊中の青戸に向かって衝突のおそれがある態勢で接近していることに気付かず、速やかに転舵するなど、同船を避けずに進行中、21時05分沖防波堤灯台から285度1,200メートルの地点において、広幸丸は、原針路原速力のまま、その船首が、青戸の右舷船尾部に前方から82度の角度で衝突した。
 当時、天候は曇で風はほとんどなく、視界は良好で、潮候は上げ潮の末期であった。
 また、青戸は、船外機2基を装備し、船体ほぼ中央に操縦室を設け、同室上方に法定灯火の設備を有するFRP製プレジャーボートで、海上から花火大会を見物するため、B受審人が1人で乗り組み、知人3人を乗せ、船首0.5メートル船尾1.0メートルの喫水をもって、同日18時15分福井県和田港を発し、小浜港に向かった。
 B受審人は、18時50分小浜港港界近くの衝突地点付近に着き、所定の灯火を点灯した状態で漂泊を始め、20時から21時まで花火大会を見物して帰途に就くこととし、機関をかけてアイドリング状態としたところで、後片付けのため船尾に赴いた。
 21時03分半B受審人は、前示衝突地点で、035度に向首した自船の船尾部で船首方に顔を向け、側にいた同乗者と話をしていたとき、右舷正横前8度1,000メートルのところに広幸丸の白、紅、緑3灯を視認できる状況であったが、同乗者との雑談に気を奪われ、同船を見落とすことのないよう、周囲の見張りを十分に行っていなかったので、広幸丸の存在に気付かなかった。
 こうして、B受審人は、その後広幸丸が自船に向首し避航動作をとらないまま衝突のおそれがある態勢で接近していることに気付かず、アイドリング状態のクラッチを前進側に操作するなど、衝突を避けるための措置をとらずに漂泊を続けていたところ、21時05分わずか前右舷方からの機関音に気付き、至近に迫った広幸丸を初めて視認したものの、何をする間もなく、青戸は、035度に向首したまま、前示のとおり衝突した。
 衝突の結果、広幸丸は、船首部外板に擦過傷を生じたが、のち修理され、青戸は、船尾部を圧壊して廃船処分となった。また、広幸丸及び青戸の同乗者各2人が、肋骨骨折、胸部打撲及び右足挫傷などを負った。

(原因)
 本件衝突は、夜間、福井県小浜港において、広幸丸が、見張り不十分で、前路で漂泊中の青戸を避けなかったことによって発生したが、青戸が、見張り不十分で、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、小浜港において、花火見物を終え帰途のため発進する場合、船首端から操縦室前の船体中央部にいた5人の同乗者により船首方の見通しがやや妨げられる状況であったから、前路で漂泊中の青戸を見落とすことのないよう、同乗者を船尾甲板に移動させるなど、船首方の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、同乗者の間から前方を一瞥して何も認めなかったので、前路に他船はいないものと思い、船首方の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、青戸の存在と接近とに気付かず、転舵するなどこれを避けないまま進行して同船との衝突を招き、自船の船首部外板に擦過傷を生じさせ、青戸の船尾部を圧壊させるとともに、広幸丸及び青戸の同乗者各2人に、肋骨骨折、胸部打撲及び右足挫傷などを負わせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第2号を適用して同人の一級小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。
 B受審人は、夜間、小浜港において、花火見物を終え機関をアイドリング状態とし、後片付けのため引き続き漂泊する場合、右舷正横方から接近する広幸丸を見落とすことのないよう、周囲の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、側にいた同乗者との雑談に気を奪われ、周囲の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、広幸丸の存在と接近とに気付かず、クラッチを前進側に操作するなど、衝突を避けるための措置をとらないまま漂泊を続けて同船との衝突を招き、両船に前示の損傷を生じさせるとともに、両船の同乗者各2人を負傷させるに至った。
 以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。


参考図
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