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 海難審判庁裁決録 >  2001年度(平成13年) > 衝突事件一覧 >  事件





平成13年横審第47号
件名

プレジャーボートファンタジア ケーエイチケーワイプレジャーボートマユミ衝突事件
二審請求者〔理事官 古川隆一〕

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成13年11月1日

審判庁区分
横浜地方海難審判庁(葉山忠雄、長谷川峯清、小須田 敏)

理事官
古川隆一

受審人
A 職名:ファンタジアケーエイチケーワイ船長 海技免状:四級小型船舶操縦士
B 職名:マユミ船長 海技免状:四級小型船舶操縦士

損害
フ号・・・左舷船首外板部に亀裂
マユミ・・・操縦ハンドル右側に曲損
船長が頭部打撲及び外傷性頸部症候群など負傷

原因
マユミ・・・見張り不十分、船員の常務(新たな危険、衝突回避措置)不遵守(主因)
フ号・・・動静監視不十分、船員の常務(衝突回避措置)不遵守(一因)

主文

 本件衝突は、マユミが、見張り不十分で、ファンタジア ケーエイチケーワイの前路で停留し、同船に対して新たな衝突のおそれを生じさせたばかりか、衝突を避けるための措置をとらなかったことによって発生したが、ファンタジア ケーエイチケーワイが、動静監視不十分で、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。
 受審人Bを戒告する。
 受審人Aを戒告する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成11年7月25日10時30分
 千葉県富津岬北方沖合

2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボートファンタジア 
ケーエイチケーワイ
プレジャーボートマユミ
全長   2.89メートル
登録長 4.43メートル  
機関の種類 電気点火機関 電気点火機関
出力 66キロワット 106キロワット

3 事実の経過
 ファンタジア ケーエイチケーワイ(以下「フ号」という。)は、ウォータージェット推進式のFRP製モーターボートで、A受審人ほか3人が乗り組み、遊走の目的で、船首0.3メートル船尾0.5メートルの喫水をもって、平成11年7月25日10時ごろ千葉県富津岬の明治百年記念展望台(以下「記念展望台」という。)から036度(真方位、以下同じ。)100メートルの浜辺を発し、多数の水上オートバイなどが遊走する浜辺の沖合を抜けて、同時26分記念展望台の北方沖合を発進し、第1海堡北方沖合に向かった。
 A受審人は、第1海堡に近づくにしたがって波浪が高くなり、その影響を受けて船体が海面上に跳ね上がる状況となったことから、記念展望台北方沖合に戻ることとし、10時28分少し前第1海堡北方沖合で反転し、同時28分記念展望台から287度1,550メートルの地点で、針路を089度に定め、機関をほぼ半速力前進にかけ20.0ノットの対地速力で進行した。
 定針時にA受審人は、正船首300メートルのところを東進中のマユミを初めて認め、同船を追走することとしたが、水上オートバイなどが遊走する水域に向け、マユミが自船とほぼ同じ速力で走行していることから、まさかその途中で停留することはあるまいと思い、その後同船に対する動静監視を十分に行うことなく続航した。
 A受審人は、10時29分半記念展望台から316度650メートルの地点に差し掛かったとき、先行するマユミが急に停留し、自船に対して新たな衝突のおそれを生じさせたが、依然、同船に対する動静監視を十分に行っていなかったので、このことに気付かず、衝突を避けるための措置をとらないまま、同じ針路、速力で進行した。
 10時30分わずか前A受審人は、正船首50メートルに停留しているマユミを再度認め、衝突する危険を感じ、右舵一杯として機関を中立としたが、及ばず、10時30分記念展望台から340度500メートルの地点において、フ号は、船首が135度を向いたとき、同速力のまま、その左舷船首部が、マユミの操縦ハンドル右側に後方から10度の角度で衝突した。
 当時、天候は晴で風力3の南南西風が吹き、潮候は上げ潮の初期にあたり、波高は約50センチメートルで、視界は良好であった。
 また、マユミは、ウォータージェット推進式のFRP製水上オートバイで、B受審人が1人で乗り組み、友人1人を後部座席に乗せ、遊走の目的で、同日09時00分前示浜辺を発し、その沖合で遊走したのち、10時26分半記念展望台北方沖合を発進し、フ号を追って第1海堡北方沖合に向かった。
 B受審人は、第1海堡に近づくにしたがって波浪が高くなり、航走に支障を生じたので反転し、10時28分記念展望台から291度1,300メートルの地点で針路を水上オートバイが遊走する水域に向かう089度に定め、機関を20.0ノットの対地速力にかけて進行した。
 その後、B受審人は、右舷正横後約20度方向からの波浪を受けるようになり、船体が動揺して不安定になったことから、一時停留して波浪の様子を見ることとし、そのころ正船尾に300メートル離れてフ号が追走していたが、付近に航走する水上オートバイなど、接近する他船はいないと思い、周囲の見張りを十分に行うことなく、フ号に気付かないまま、10時29分半前示衝突地点に至って機関を中立とし、無難に追走する態勢のフ号の前路で停留を始め、同船に対して新たな衝突のおそれを生じさせた。
 10時30分少し前B受審人は、フ号が船尾方150メートルばかりに接近していたものの、依然、周囲の見張りを十分に行っていなかったので、このことに気付かず、機関を使用するなどして衝突を避けるための措置をとらないまま停留中、10時30分わずか前船首が145度を向いていたとき、B受審人は、フ号に気付いた友人の発する声を聞いて右舷後方間近に同船を初めて認めたものの、どうすることもできないまま、前示のとおり衝突した。
 衝突の結果、フ号は、左舷船首外板部に亀裂(きれつ)を生じ、マユミは操縦ハンドル右側に曲損を生じた。また、マユミは衝突時にフ号の船底下に押し込まれた状態となり、B受審人と同乗者は、海中に投げ飛ばされたが、フ号に救助され、同受審人が頭部打撲及び外傷性頚部症候群などの傷を負った。

(原因)
 本件衝突は、両船が千葉県富津岬北方沖合を前後して遊走中、マユミが、見張り不十分で、フ号の前路で停留し、同船に対して新たな衝突のおそれを生じさせたばかりか、衝突を避けるための措置をとらなかったことによって発生したが、フ号が、動静監視不十分で、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。

(受審人の所為)
 B受審人は、千葉県富津岬北方沖合において遊走する場合、接近する他船を見落とさないよう、周囲の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかしながら、同人は、付近に航走する水上オートバイなど、接近する他船はいないと思い、周囲の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、無難に追走する態勢のフ号の前路で停留を始め、同船に対して新たな衝突のおそれを生じさせたばかりか、衝突を避けるための措置をとらないまま停留を続け、同船との衝突を招き、フ号の左舷船首外板部に亀裂及びマユミの操縦ハンドル右側に曲損を生じさせるとともに、自らは頭部打撲及び外傷性頚部症候群などの傷を負うに至った。
 以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
 A受審人は、千葉県富津岬北方沖合において、マユミを追走する場合、同船に対する動静監視を十分に行うべき注意義務があった。しかしながら、同人は、水上オートバイなどが遊走する水域に向け、マユミが自船とほぼ同じ速力で走行していることから、まさかその途中で停留することはあるまいと思い、同船に対する動静監視を十分に行わなかった職務上の過失により、マユミが前路で停留し、自船に対して新たな衝突のおそれを生じさせたことに気付かないまま進行して同船との衝突を招き、前示の事態を生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。


参考図
(拡大画面:38KB)





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