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平成13年仙審第18号
件名

遊漁船長盛丸プレジャーボートブルーランナー衝突事件(簡易)

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成13年11月20日

審判庁区分
仙台地方海難審判庁(喜多 保)

理事官
熊谷孝徳

受審人
A 職名:長盛丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
B 職名:ブルーランナー船長 海技免状:四級小型船舶操縦士

損害
長盛丸・・・損傷ない
ブ号・・・右舷船首部を大破し、のち廃船

原因
長盛丸・・・見張り不十分、船員の常務(避航動作)不遵守(主因)
ブ号・・・動静監視不十分、船員の常務(衝突回避措置)不遵守(一因)

裁決主文

 本件衝突は、長盛丸が、見張り不十分で、漂泊中のブルーランナーを避けなかったことによって発生したが、ブルーランナーが、動静監視不十分で、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。
 受審人Aを戒告する。
 受審人Bを戒告する。

適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成12年7月1日08時30分
 新潟県筒石漁港北方沖合

2 船舶の要目
船種船名 遊漁船長盛丸 プレジャーボートブルーランナー
総トン数 2.0トン  
全長 10.00メートル 6.00メートル
機関の種類 ディーゼル機関 電気点火機関
出力 80キロワット 36キロワット

3 事実の経過
 長盛丸は、FRP製遊漁船で、A受審人が1人で乗り組み、釣り客5人を乗せ、船首0.35メートル船尾0.90メートルの喫水をもって、平成12年7月1日04時00分新潟県筒石漁港を出港し、途中2箇所で釣りを行いながら北上し、07時ごろ同漁港の北北東沖合2海里ばかりの地点の釣り場に至って釣りを開始した。
 A受審人は、釣れていたアジが釣れなくなったことから他の釣り場に移動することとし、08時24分筒石港北防波堤灯台(以下「北防波堤灯台」という。)から017度(真方位、以下同じ。)2.2海里の地点を発し、針路を210度に定め、機関を回転数毎分1,000の前進にかけて10.0ノットの対地速力で、手動操舵によって進行した。
 ところで、長盛丸は、速力が10ノットを超えると船首が浮き上がり、立って操舵に当たった場合でも正船首方向の左右各舷約30度の範囲に死角が生じるので、A受審人は、平素は身体を左右各舷に移動させて死角を補う見張りを行っていた。
 A受審人は、発進したとき、前路を一瞥(いちべつ)して他船を認めなかったことから、前路に他船はいないものと思い、身体を左右各舷に移動させて船首方の死角を補う見張りを行うことなく、舵輪を前にして立って操舵に当たりながら続航した。
 A受審人は、08時29分北防波堤灯台から010度1.4海里の地点に達したとき、正船首310メートルのところにブルーランナー(以下「ブ号」という。)がおり、漂泊している同船に衝突のおそれのある態勢で接近しているのを認めることができる状況にあったが、依然として船首方の死角を補う見張りを行わなかったので、このことに気付かず、ブ号を避けないまま進行した。
 A受審人は、08時30分北防波堤灯台から007度1.2海里の地点において、船首部に衝撃を感じ、長盛丸は、原針路、原速力のまま、その船首がブ号の右舷船首部に前方から10度の角度で衝突した。
 当時、天候は晴で風はほとんどなく、潮候は上げ潮の初期で、視界は良好であった。
 また、ブ号は、FRP製のプレジャーボートで、B受審人が1人で乗り組み、友人1人を乗せ、釣りの目的で、船首0.20メートル船尾0.55メートルの喫水をもって、同日05時00分直江津港導流堤北灯台から143度1,750メートルばかりの新潟県戸野目川川岸の係留地を出航し、同県鳥ヶ首岬沖合の釣り場に向かい、途中2箇所で釣りを行ったのち、08時ごろ前示衝突地点付近に至って機関を中立運転として、漂泊して釣りを開始した。
 B受審人は、舵輪のうしろで左舷側に竿を出し、友人は操舵室前部で右舷側に竿を出し、それぞれ立って釣りを行っていたところ、08時27分少し前前示衝突地点付近で船首が020度を向いていたとき、右舷船首10度1,000メートルのところに自船に向首して接近する長盛丸を初めて視認したが、以前にも自船が漂泊しているとき、自船の近くに来て釣りを始める他船がいたことから、同船も自船の近くに来たら停止するものと思い、その後長盛丸の動静を十分に監視しなかった。
 B受審人は、08時29分長盛丸が自船を避航せずに、衝突のおそれのある態勢で310メートルまでに接近していたが、依然として同船に対する動静監視を行っていなかったのでこのことに気付かず、機関を使用するなど衝突を避けるための措置をとらないまま釣りを続けた。
 B受審人は、08時30分少し前至近に接近した長盛丸に気付いて大声で叫んだが効なく、更に接近するので友人とともに海に飛び込んだ直後、前示のとおり衝突した。
 衝突の結果、長盛丸は損傷がなく、ブ号は右舷船首部を大破し、のち廃船となった。

(原因)
 本件衝突は、新潟県筒石漁港北方沖合において、南下中の長盛丸が、見張り不十分で、漂泊中のブ号を避けなかったことによって発生したが、ブ号が、動静監視不十分で、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、新潟県筒石漁港北方沖合において、船首方に死角を生じた状態で釣り場を求めて航行する場合、前路の他船を見落とさないよう、身体を左右各舷に移動するなどして死角を補う見張りを行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、発進するに当たり、前路を一瞥して他船を認めなかったことから、前路に他船はいないものと思い、死角を補う見張りを行わなかった職務上の過失により、前路に漂泊中のブ号に気付かず、同船を避けないまま進行して同船との衝突を招き、ブ号の右舷船首部を大破させるに至った。
 B受審人は、新潟県筒石漁港北方沖合において、漂泊して釣りを行っているとき、自船に向首して接近する長盛丸を認めた場合、同船が避航措置をとっているかどうかを判断できるよう、その動静を十分に監視すべき注意義務があった。しかるに、同人は、以前にも自船が漂泊しているとき、自船の近くに来て釣りを始める他船がいたことから、長盛丸も自船の近くに来たら停止するものと思い、その後同船に対する動静を十分に監視しなかった職務上の過失により、同船が自船を避航せずに接近していることに気付かず、機関を使用するなど衝突を避けるための措置をとらないまま釣りを続けて同船との衝突を招き、前示の損傷を生じさせるに至った。


参考図
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