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 海難審判庁裁決録 >  2001年度(平成13年) > 衝突事件一覧 >  事件





平成13年仙審第16号
件名

引船海栄被引はしけS−117はしけS−118衝突事件(簡易)

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成13年10月2日

審判庁区分
仙台地方海難審判庁(喜多 保)

理事官
熊谷孝徳

受審人
A 職名:海栄船長 海技免状:五級海技士(航海)

損害
はしけ7号・・・右舷船尾外板に凹損
はしけ8号・・・右舷船首外板に亀裂を伴う凹損

原因
海 栄・・・操船不適切

裁決主文

 本件衝突は、はしけS−117を曳航する海栄が、回頭措置が不適切で、錨泊中のはしけS−118に著しく接近したことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成12年4月10日16時10分
 宮城県石巻港

2 船舶の要目
船種船名 引船海栄はしけS−117  
総トン数 153トン 864トン
全長 29.50メートル 51.0メートル
  12.0メートル
深さ   4.0メートル
機関の種類 ディーゼル機関  
出力 1,103キロワット  

船種船名 はしけS−118
総トン数 864トン
全長 51.0メートル
12.0メートル
深さ 4.0メートル

3 事実の経過
 海栄は、はしけなどの曳航に従事する鋼製引船で、A受審人ほか2人が乗り組み、船首2.0メートル船尾4.0メートルの喫水をもって、平成12年4月10日15時40分宮城県石巻港の石巻港雲雀野防波堤灯台(以下「雲雀野灯台」という。)から349度(真方位、以下同じ。)1,700メートルの地点の工業港岸壁を発し、同港雲雀野防波堤の南東方沖合の海域に向かった。
 これより先、A受審人は、同月9日06時00分青森県むつ小川原港を出港し、海栄により船首尾とも0.6メートルの等喫水の空倉で無人のはしけS−117(以下「はしけ7号」という。)及び船首尾とも0.6メートルの等喫水の空倉で無人のはしけS−118(以下「はしけ8号」という。)を曳いて千葉港に向かっていたところ、低気圧の接近で荒天が予想されたので、翌日10日午前石巻港に入港し、はしけ7号を雲雀野灯台から112度610メートルの地点に、同船の北東100メートルばかりの同灯台から106度710メートルの地点にはしけ8号をそれぞれ錨泊状態とした後、海栄を同港西部の工業港岸壁に係留していた。その後はしけ7号及びはしけ8号の両船に走錨のおそれが予想されたため、同工業港岸壁に係留するよう代理店より要請を受けていた。
 A受審人は、15時55分はしけ7号に至って、海栄の船尾部のリールから出した長さ約35メートルに調節された曳索をはしけ7号の船首部中央のビットに取り、全長107メートルの引船列とし、石巻港雲雀野第1号灯浮標付近の海域が折からの南東寄りの強風のため波が高かったので同灯浮標に直行するのは無理と判断し、はしけ8号の西側にいったん出てから石巻港雲雀野第3号灯浮標の北側をう回して航路に沿って岸壁に向かうこととした。
 A受審人は、16時05分はしけ7号の錨を揚げ、海栄の船首が148度を向いていたとき、雲雀野灯台から116度690メートルの地点において、機関を半速力前進にかけ、左舵30度をとって手動操舵で発進したが、はしけ8号に接近することのないよう、右旋回するなりの適切な回頭措置を行わなかった。
 A受審人は、はしけ7号が旋回径約110メートル、1.5ノットの曳航速力で左回頭中、16時09分少し前雲雀野灯台から108度660メートルの地点に達し、はしけ7号が同灯台から111度730メートルとなったとき、はしけ7号が風圧の影響もあり、はしけ8号に著しく接近していくのを認め、機関を全速力前進とし、左舵一杯としたが及ばず、16時10分雲雀野灯台から106度710メートルの地点において、海栄が253度に、はしけ7号が287度に向首したとき、はしけ7号は、原速力のまま、その右舷船尾が148度に向首したはしけ8号の右舷船首に41度の角度で衝突した。
 当時、天候は曇で風力7の南東風が吹き、視界は良好であった。
 衝突の結果、はしけ7号は右舷船尾外板に凹損を生じ、はしけ8号は右舷船首外板に亀裂を伴う凹損を生じ、のちはしけ8号は修理された。

(原因)
 本件衝突は、宮城県石巻港雲雀野防波堤の南東方沖合の海域において、海栄が、錨泊していたはしけ7号を曳航して同海域東側の石巻港雲雀野第3号灯浮標の北側をう回して同港西部の工業港岸壁に向かう際、回頭措置が不適切で、同海域北側に錨泊中のはしけ8号に著しく接近したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、宮城県石巻港雲雀野防波堤の南東方沖合の海域において、南東寄りの強風が吹く中、錨泊中のはしけ8号の南西側で錨泊していたはしけ7号を曳航し、同海域東側の石巻港雲雀野第3号灯浮標をう回して同港西部の工業港岸壁に向かう場合、はしけ8号に接近することのないよう、右旋回するなりして回頭措置を適切に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、左旋回して回頭措置を適切に行わなかった職務上の過失により、はしけ8号に著しく接近してはしけ7号との衝突を招き、はしけ7号の右舷船尾外板に凹損を生じさせ、はしけ8号の右舷船首外板に亀裂を伴う凹損を生じさせるに至った。


参考図
(拡大画面:38KB)





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