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 海難審判庁裁決録 >  2001年度(平成13年) > 安全・運航阻害事件一覧 >  事件





平成12年神審第123号
件名

貨物船第拾壱住吉丸運航阻害事件

事件区分
安全・運航阻害事件
言渡年月日
平成13年9月11日

審判庁区分
神戸地方海難審判庁(小金沢重充、大本直宏、内山欽郎)

理事官
野村昌志

受審人
A 職名:第拾壱住吉丸船長 海技免状:四級海技士(航海)

損害
住吉丸・・・船体に損傷ない

原因
居眠り運航防止措置不十分

主文

 本件運航阻害は、居眠り運航の防止措置が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成11年12月14日20時35分
 淡路島東岸

2 船舶の要目
船種船名 貨物船第拾壱住吉丸
総トン数 990トン
登録長 69.10メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 735キロワット

3 事実の経過
 第拾壱住吉丸(以下「住吉丸」という。)は、船首甲板にクレーンを装備した石材兼砂利運搬船で、A受審人ほか4人が乗り組み、海水バラスト200トンを張り、船首1.5メートル船尾3.8メートルの喫水をもって、平成11年12月14日17時35分大阪港を発し、鹿島港へ向かった。
 A受審人は、単独で船橋当直にあたり、19時52分友ケ島灯台から022度(真方位、以下同じ。)6.9海里の地点に達したとき、針路を由良瀬戸北側入口付近に向かう228度に定め、機関を全速力前進にかけ、10.7ノットの対地速力で、舵輪後方に備えられたいすに座り、自動操舵により進行した。 
 ところで、A受審人は、同日13時00分大阪港着岸にあたっての入港操船、着岸後直ちに開始した揚荷作業の立ち会い及び荷役終了後、直ぐに離岸しての出港操船に引き続いて船橋当直に就いたことから、緊張する状態が続き疲労気味であった。
 定針後間もなくA受審人は、適温に暖房された船橋で当直にあたり、海上平穏で視界も良く、前路に気になる他船は見当たらないことなどから気が緩み、眠気を催すようになったが、よもや居眠りすることはないと思い、いすから立ち上がるなど、居眠り運航の防止措置をとることなく、前示の姿勢を続けているうち、いつしか居眠りし始めた。
 こうして、住吉丸は、由良瀬戸を南下する針路に転じないまま続航中、20時35分淡路由良港成山防波堤灯台から295度900メートルの地点において、原針路原速力のまま、淡路島の東岸に乗り揚げ、航行不能となった。
 当時、天候は曇で風はほとんどなく、視界は良好で潮候は上げ潮の末期であった。
 その結果、船体に損傷はなかったが、5時間半後に来援した僚船に引き下ろされるまで、運航が中断された。

(原因)
 本件運航阻害は、夜間、大阪港から由良瀬戸へ向け南下中、居眠り運航の防止措置が不十分で、淡路島東岸に向首したまま進行し、同岸に乗り揚げたことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、大阪港から由良瀬戸へ向け南下中、眠気を催すようになった場合、居眠り運航とならないよう、いすから立ち上がるなど、居眠り運航の防止措置をとるべき注意義務があった。しかるに、同人は、よもや居眠りすることはないと思い、居眠り運航の防止措置をとらなかった職務上の過失により、いすに座ったまま居眠りに陥り、淡路島の東岸に向首したまま進行して乗揚を招き、航行不能となり、運航が中断される事態を生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。





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