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平成13年横審第20号
件名

油送船第二ふじいち丸機関損傷事件

事件区分
機関損傷事件
言渡年月日
平成13年9月14日

審判庁区分
横浜地方海難審判庁(吉川 進、葉山忠雄、花原敏朗)

理事官
濱本 宏

受審人
A 職名:第二ふじいち丸機関長 海技免状:三級海技士(機関)

損害
1番及び2番シリンダのピストンリングが固着、同シリンダライナが異常摩耗

原因
主機のピストン抜き整備措置不適切

主文

 本件機関損傷は、主機のピストン抜き整備の措置がとられなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成12年7月19日11時40分
 駿河湾

2 船舶の要目
船種船名 油送船第二ふじいち丸
総トン数 99.96トン
登録長 26.51メートル
機関の種類 過給機付4サイクル6シリンダ・ディーゼル機関
出力 294キロワット
回転数 毎分750

3 事実の経過
 第二ふじいち丸(以下「ふじいち丸」という。)は、昭和47年10月に進水した、駿河湾内において重油の輸送に従事する油送船で、主機として株式会社石橋鉄工所がダイハツディーゼル株式会社の委託で組み立て製造した、6PSTM−22FS型と呼称するディーゼル機関を装備していた。
 主機は、トランクピストン型で、ウェットサンプ式のクランクケースに標準量が約180リットルの潤滑油がためられるようになっていた。
 主機のピストンは、アルミ鋳造製で、ピストンクラウンに4本の圧力リングと1本のオイルかきリングが、ピストンスカート下端に1本のオイルかきリングがそれぞれ装着され、ピストンピンには、クランク軸の油穴から連接棒を経由して潤滑油が供給されるようになっていた。
 主機の潤滑油系統は、クランクケースの潤滑油が直結潤滑油ポンプによって加圧され、潤滑油冷却器、同こし器を経て潤滑油主管に入り、クランク軸、カム軸駆動装置などにそれぞれ供給されるもので、潤滑を終わったものが再びクランクケースに戻るようになっていた。
 ふじいち丸は、平成10年11月に第一種中間検査のために入渠し、主機のピストン抜き整備が行われて主要部の寸法が計測されたが、ピストンリングについては年間1,500ないし2,000時間と運転時間が短く、外観上異状がないと判断されたことから、リング溝との隙間や合口隙間などが計測されず、摩耗状況が確認されないままピストンに組み込まれ、主機が組み立てられた。
 A受審人は、平成11年6月に機関長として乗船し、前任者から主機のシリンダヘッド周辺のガス漏れに注意するよう引き継ぎ、また前年の入渠時に主機のピストン抜き整備が行われたことを、ピストン、シリンダライナ等主要部の計測記録で知ったが、ピストンリングが取り替えられなかった点については引継ぎがなく、記録も残されていなかった。
 主機は、前示ピストン抜き整備において取り替えられなかったピストンリングが、継続して使用されるうちに摩耗限度を超えたものか、平成12年5月ごろ1番及び2番シリンダの圧力リングの気密力が低下し、燃焼が悪くなるとともに燃焼ガスがクランクケースに漏れ始め、船橋後ろのオイルミスト放出管から排気ガスが噴出するようになり、また燃焼生成物の混入によって潤滑油の汚損も進行した。
 このころ、A受審人は、潤滑油の汚れが早くなり、主機の排気ガスの色が濃くなったことに気付き、運転中に指圧器弁を開いて各シリンダの燃焼ガスの出方を比較して、1番及び2番の燃焼が悪化していることを認めたが、専ら5番シリンダヘッドとシリンダライナとの当たり面から漏れる燃焼ガスの量が増えていることが気になっており、シリンダ内には問題はないものと思い、1番及び2番のピストンを抜いて整備する措置をとることなく、主機の運転を続けた。
 こうして、ふじいち丸は、A受審人ほか2人が乗り組み、A重油260キロリットルを積載し、船首2.6メートル船尾3.1メートルの喫水をもって、平成12年7月19日10時45分静岡県清水港を発し、主機を毎分回転数620にかけて同県焼津港に向かっていたところ、主機の1番及び2番シリンダのピストンリングのこう着がオイルリングにも及び、潤滑油が異状にかき揚げられ、11時40分清水灯台から真方位206度4.7海里の地点で、主機の前示ピストンリングが固着して燃焼ガスが吹き抜け、主機の回転数がやや低下して異音を生じた。
 当時、天候は晴で風力2の南風が吹き、海上は穏やかであった。
 A受審人は、たまたま機関室の見回りをしていて潤滑油圧力計の示度が大きく振れながら下がっていることに気付き、ただちに船橋に連絡して主機を停止し、クランクケースの蓋を開放したところ、潤滑油吸込管が露出するほど潤滑油量が少なくなっているのを認め、まもなく過熱した2番シリンダライナのOリング部から冷却海水が漏れ始めたので、主機が運転不能と判断し、船長に報告してえい航を依頼した。
 ふじいち丸は、来援した引船によって焼津港に引き付けられ、精査された結果、1番及び2番シリンダのピストンリングが固着して同シリンダライナが異常摩耗しており、のち損傷部が取り替えられ、潤滑油系統が洗浄された。

(原因)
 本件機関損傷は、主機のピストンの気密力が低下し、燃焼が悪化するとともに潤滑油の汚損が進んだ際、ピストン抜き整備の措置がとられず、運転が続けられたことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、主機の運転管理に当たり、潤滑油の汚損が早くなり、排気ガスの色が濃くなったことに気付き、指圧器弁を開いて燃焼状態が悪化していることを認めた場合、当該ピストンの燃焼ガスが吹き抜けることのないよう、ただちにピストンを抜き出して整備する措置をとるべき注意義務があった。しかるに、同受審人は、専ら5番シリンダヘッドとシリンダライナとの当たり面から漏れる燃焼ガスの量が増えていることが気になっており、シリンダ内には問題はないものと思い、ただちにピストンを抜き出して整備する措置をとらなかった職務上の過失により、主機の1番及び2番シリンダの燃焼ガスが吹き抜けてピストンリングのこう着が進み、同リングを固着させる事態を招き、主機を運転不能とならしめるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。 





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