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平成12年神審第128号
件名

プレジャーボートチャーリーII遭難事件

事件区分
遭難事件
言渡年月日
平成13年9月6日

審判庁区分
神戸地方海難審判庁(西山烝一、黒田 均、前久保勝己)

理事官
野村昌志

受審人
A 職名:チャーリーII船長 海技免状:四級小型船舶操縦士

損害
船外機に濡損

原因
波浪の危険性に対する配慮不十分

主文

 本件遭難は、波浪の危険性に対する配慮が不十分で、速やかに避難しなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成11年12月15日13時10分
 和歌山県御坊港沖合

2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボートチャーリーII
全長 3.38メートル
1.44メートル
深さ 0.47メートル
機関の種類 電気点火機関
出力 7キロワット

3 事実の経過
 チャーリーII(以下「チャーリー」という。)は、定員3人の船外機付きFRP製組立式プレジャーボートで、A受審人が4分割された同船を乗用車に載せて和歌山県三尾漁港に運び、同船を組み立てたのち、同受審人が1人で乗り組み、友人1人を乗せ、魚釣りの目的で、船首尾とも0.1メートルの喫水をもって、平成11年12月15日10時00分同漁港を発し、同漁港沖合の釣り場に向かった。
 ところで、チャーリーは、A受審人が同年11月に購入し、株式会社アカシヨット製のEK340Wと称する、重量95キログラムの和船型で、縦方向が4区画に分割された船体部分を、海岸などに運んでから組み立てて使用するもので、その区画を船首から順に第1ハル、第2ハル、第3ハル及び第4ハルと呼称し、各ハルがボルト・ナットで結合されるとともに、左右のガンネル部とキール部が船首から船尾まで縦貫する3本の締め付けパイプにより縦方向に固定され、各ハルの接続部はベンチ付のU字型になっており、また、第1ハルの船首部内及び第4ハルの後部に取り付けられたベンチ内には、沈没を防ぐために浮体が充填されていた。
 チャーリーの船体は、乾舷が小さく無甲板で、波浪が高まると船内に海水が打ち込み易く、波浪が連続して打ち込み始めると、区画毎に海水が滞留し易い構造で排水に時間がかかることから、短時間で水船状態になるおそれがあった。
 A受審人は、10時10分三尾漁港南東方沖合1,000メートルの釣り場に着き、釣りを行ったところ釣果が芳しくなかったことから、12時00分同釣り場を離れ、同時40分関電御坊発電所防波堤灯台(以下「防波堤灯台」という。)から217度(真方位、以下同じ。)400メートルの、水深約20メートルの地点に移動して機関を停止し、重さ5キログラムのダンホース型錨を船首から投じ、直径10ミリメートルの合成繊維製の錨索を40メートル延出して錨泊し、釣りを再開した。
 錨泊後間もなく、A受審人は、午前中の釣りをしていたときと比べ、風波がともに強まって白波も現れ、波高が1.0メートルとなったのを認めたが、購入後2回目の乗船で、本船の構造の特徴について留意していなかったこともあり、これぐらいの波高ならば海水が船内に打ち込むことはないので大丈夫と思い、付近の漁港などに速やかに避難するなど、波浪の危険性に対する配慮を十分に行うことなく、釣りを続けた。
 13時08分A受審人は、波浪が更に増勢する状況になってきたので、ようやく帰航することとし、後部ベンチに腰掛けて船外機を始動させ、同乗者が第1ハルに移動して錨を揚げ終わったとき、船首から波浪が打ち込んで第1ハルが海水で一杯になり、同乗者の移動と打ち込んだ海水により船首喫水が増加し、波浪が一層打ち込み易い状態となり、続けて波浪が打ち込んで第2ハルから第4ハルまで浸水し、チャーリーは、13時10分前示錨泊地点において、船首が北西に向いて水船状態になった。
 当時、天候は晴で風力4の北西風が吹き、潮候は下げ潮の中央期で、付近には波高約1.0メートルの波浪があった。
 A受審人は、バケツで排水するため、同乗者とともに右舷側から海中に入ったとき、チャーリーが復原力を喪失して右舷側に転覆し、船体を元に戻そうとしたところ、後部ベンチが外れて浮力をなくし、船首部だけが海面上に浮かんでほぼ水没状態になった。
 その結果、チャーリーは、船外機に濡損を生じ、付近の漁船によって塩屋漁港に引き付けられ、A受審人と同乗者は、海中で漂っていたところ、通りがかりの漁船に救助された。

(原因)
 本件遭難は、御坊港南方の富島西方沖合において、魚釣りのため錨泊中、波浪が高まった際、波浪の危険性に対する配慮が不十分で、速やかに避難せず、波浪が連続して船内に打ち込み、水船状態となったことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、御坊港南方の富島西方沖合において、魚釣りのため錨泊中、風が次第に強まり、波浪も高まってきたのを認めた場合、乾舷が小さく無甲板の船型で、波浪が高まると船内に海水が打ち込み易く、水船状態になって航行が困難に陥るおそれがあったから、付近の漁港などに速やかに避難するなど、波浪の危険性に対する配慮を十分に行うべき注意義務があった。しかし、同人は、これぐらいの波高ならば海水が船内に打ち込むことはないので大丈夫と思い、波浪の危険性に対する配慮を十分に行わなかった職務上の過失により、速やかに避難せずに釣りを続け、帰航するため揚錨を終えた際、波浪が連続して船内に打ち込んで水船状態となる事態を招き、復原力の喪失により転覆してほぼ水没状態となり、船外機に濡損を生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。 





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