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 海難審判庁裁決録 >  2001年度(平成13年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成12年長審第54号
件名

漁船祥陽丸乗揚事件

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成13年9月13日

審判庁区分
長崎地方海難審判庁(平野浩三、平田照彦、河本和夫)

理事官
弓田

受審人
A 職名:祥陽丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
プロペラ及びプロペラ軸を曲損、船底外板全般に凹損

原因
居眠り運航防止措置不十分

主文

 本件乗揚は、居眠り運航の防止措置が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成12年4月16日13時30分
 平戸島東岸

2 船舶の要目
船種船名 漁船祥陽丸
総トン数 19トン
登録長 19.02メートル
機関の種類 ディーゼル機関
漁船法馬力数 190

3 事実の経過
 祥陽丸は、中型旋網漁業の漁獲物運搬に従事するFRP製漁船で、A受審人が1人で乗り組み、氷18トンを積載し、船首0.8メートル船尾1.2メートルの喫水をもって、平成12年4月16日12時40分長崎県神崎漁港を僚船とともに発し、同県生月島北西10数海里沖合の漁場に向かった。
 ところで祥陽丸の操業は、昼ごろ神崎漁港を僚船とともに出港して平戸島沖合の漁場で夜間操業を行い、翌朝最寄りの漁場で水揚げしたのち、06時ないし07時神崎漁港に帰航するもので、このような操業を3ないし4日間行って休日をとる状況であった。
 A受審人は、操業中は魚群探索に従事し、眠気を催したときには漂泊して20ないし30分間睡眠をとってから再び就業し、帰航して出航するまでの間3ないし4時間の睡眠時間をとっていたが、出航当日の深夜まで友人と飲酒して03時から10時まで睡眠をとったものの、連日の夜間操業と深夜までの飲酒により、疲労が十分回復していない状態で出航した。
 12時59分A受審人は、青砂埼灯台から188度(真方位、以下同じ。)4.9海里の地点において、針路を359度に定め、機関を全速力前進にかけ、10.0ノットの対地速力で、操舵用のいすに腰掛けて自動操舵により進行した。
 定針したころからA受審人は、深夜までの飲酒及び連日の夜間操業などによる疲労が回復してない状態で眠気を催したが、眠気を何とか我慢できると思い、いすから立ち上がって手動操舵に切り替えるなど居眠り運航の防止措置をとることなく続航した。
 A受審人は、いつしか居眠りに陥り、13時22分青砂埼灯台から222度1.1海里の平戸瀬戸への転針地点に達したが、依然として居眠りに陥ったまま進行して、13時30分青砂埼灯台から306度0.9海里の地点において、祥陽丸は、原針路、原速力で平戸島東岸の浅瀬に乗り揚げた。
 当時、天候は晴で風力3の北西風が吹き、潮候は下げ潮の中央期であった。
 乗揚の結果、プロペラ及びプロペラ軸を曲損したほか、船底外板全般に凹損を生じた。

(原因)
 本件乗揚は、平戸島東岸沖合を平戸瀬戸に向けて北上中、居眠り運航の防止措置が不十分で、陸岸の浅瀬に向かって進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、平戸島東岸沖合を平戸瀬戸に向けて単独の航海当直に当たって北上中、眠気を催した場合、いすから立ち上がって手動操舵に切り替えるなど居眠り運航の防止措置をとるべき注意義務があった。しかしながら同人は、居眠りに陥ることがないと思い、居眠り運航の防止措置をとらなかった職務上の過失により居眠りに陥って陸岸の浅瀬に向かって進行して乗揚を招き、プロペラ及びプロペラ軸に曲損並びに船底外板に凹損を生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。 





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