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 海難審判庁裁決録 >  2001年度(平成13年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成13年那審第16号
件名

旅客船ブルーラグーン乗揚事件

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成13年9月27日

審判庁区分
門司地方海難審判庁那覇支部(金城隆支、清重隆彦、平井 透)

理事官
平良玄栄

受審人
A 職名:ブルーラグーン船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
両舷推進器翼及び同軸を曲損

原因
減速措置不十分

主文

 本件乗揚は、浅礁識別のための減速措置が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成12年9月17日10時20分
 沖縄県新城島下地北方沖合

2 船舶の要目
船種船名 旅客船ブルーラグーン
総トン数 17トン
登録長 11.91メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 654キロワット

3 事実の経過
 ブルーラグーンは、2基2軸を備えたFRP製旅客船で、沖縄県石垣港から同県新城島下地へ、同島の牧場で使用する飼料、牧場従業員の食料などの輸送に従事していたところ、A受審人ほか1人が乗り組み、旅客11人を乗せ、船首0.4メートル船尾1.0メートルの喫水をもって、平成12年9月17日09時30分石垣港を発し、新城島下地北側の突堤に向かった。
 ところで、新城島上地の南端西方から新城島下地北側の突堤に至る海域には浅礁が散在しており、航路標識がなく、同島下地には顕著な目標もなかった。浅礁は、通常、海面の色によって識別できるが、太陽の高度、角度により太陽光線が海面に反射して遠距離からは識別できないことがあり、識別できないときは速力を大幅に減じ、浅礁に近付いたとき確かめながら航行する必要があった。
 A受審人は、発航時から自ら操舵操船に当たり、竹富島南水路、大原航路を西進し、大原航路第17号立標を左に見て新城島上地の北方に向かい、機関を全速力前進にかけて17.5ノットの対地速力で進行し、新城島上地の北端に並航した後、多数の浅礁が存在していることからコンパスを使用せず、肉眼で浅礁を確かめ、これを替わしながら同島上地の西岸に沿って続航した。
 A受審人は、新城島上地の南端西方に差し掛かり、左舷船首方の浅礁群北端の浅礁を識別できていたことから、いつものとおり同浅礁群を左舷側に見て航行するつもりで、10時18分大原航路第21号立標から174度(真方位、以下同じ。)1.4海里の地点で、機関を6.5ノットの微速力前進に減じるとともに、左舵をとって新城島下地の北側に向けたところ、160度の針路となって太陽光を左舷船首ほぼ40度に受けるようになり、浅礁群を識別できなくなった。
 しかし、A受審人は、浅礁に近付いたとき確かめることができるよう、速力を大幅に減じることなく、そのうち浅礁を左舷側に確認できると思い、同じ速力、針路で続航中、10時20分大原航路第21号立標から172度1.6海里の地点において、浅礁に乗り揚げ擦過した。
 当時、天候は晴で風力4の北北東風が吹き、潮候は下げ潮の初期であった。
 乗揚の結果、両舷推進器翼及び同軸に曲損を生じたが、のち修理された。

(原因)
 本件乗揚は、新城島西方の浅礁が散在する海域を同島下地に向けて航行中、太陽光線が海面に反射して遠距離からの浅礁識別ができなくなった際、減速措置が不十分で、浅礁に向け進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、新城島西方の浅礁が散在する海域を同島下地に向けて航行中、太陽光線が海面に反射して遠距離からの浅礁識別ができなくなった場合、浅礁に近付いたとき確かめることができるよう、速力を大幅に減じるべき注意義務があった。しかるに、同受審人は、そのうち浅礁を左舷側に確認できると思い、速力を大幅に減じなかった職務上の過失により、浅礁に向け進行して乗揚を招き、両舷推進器翼及び同軸に曲損を生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。 





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