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 海難審判庁裁決録 >  2001年度(平成13年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成13年広審第19号
件名

プレジャーボート一美VI乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成13年9月20日

審判庁区分
広島地方海難審判庁(高橋昭雄)

理事官
上中拓治

受審人
A 職名:一美VI船長 海技免状:四級小型船舶操縦士

損害
船底外板中央部から船尾にかけて破口、機関を濡れ損、航行不能

原因
水路調査不十分

裁決主文

 本件乗揚は、水路調査が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成12年2月12日12時25分
 瀬戸内海西部

2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボート一美VI
全長 10.11メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 128キロワット

3 事実の経過
 一美VIは、FRP製プレジャーボートで、A受審人が1人で乗り組み、知人5人を同乗させ、魚釣りの目的で、船首0.5メートル船尾0.7メートルの喫水をもって、平成12年2月12日07時20分愛媛県北条港を発し、野忽那島南岸沖に至って釣りを始め、その後クダコ水道のほぼ中央部に位置するクダコ島の南西岸沖の釣り場で釣りを行ったのち、12時10分同釣り場を発進し、途中更に釣りを行うつもりで二神島東側沖を南下する進路で帰途に就いた。
 ところで、帰路にあたるクダコ水道から釣島水道にかけての水域には、二神島東端から南東方に横島、中島及び小市島の各小島が連なるようにして点在し、そのうちの中島は、大きさが東西及び南北各約200メートルの小さい島で、その南西岸から沖合に向かって幅約40メートル長さ約120メートルの険礁域が延出し、その先端付近に同島61メートル頂(以下「中島頂」という。)から238度(真方位、以下同じ。)200メートルのところに干出岩のアシカ碆が存在していた。
 A受審人は、二神島東端から北東約1.2海里沖に達したころ、中島と横島間の水域に数隻の漂泊した小型船を認め、その後同水域付近でもう少し釣りを行うつもりで両島間に向かっていたところ、近づくにしたがって同小型船が遊漁船や釣り船ではなく操業中の漁船であることを知り、漁船に混じって狭い同水域で釣りを行えば操業を妨害することになるので、同漁船とのトラブルを避けてそのまま帰航することにした。
 こうして、A受審人は、そのまま中島と横島間の水域で操業中の漁船群から離れて中島側に寄った針路をとることにしたが、それまで同島周辺海域での通航経験もなくその水路状況を知らなかったものの、中島海岸から約100メートル離せば同島西岸から南西岸にかけて接航することができると思い、所持していた海図第1131号で同島周辺の水路調査を行うことなく、機関を次第に増速して船首部を浮上させた状態でほぼ半速力前進とし14.0ノットの速力で同島西岸から約200メートル沖を南下し、12時24分半中島頂から272度320メートルの地点に至り、左舵とし徐々に回頭を始め、針路を小市島南岸少し沖合に向かう125度に定めたところ、中島南西岸から延出した険礁域中の洗岩状態のアシカ碆付近に向首することに気付かないまま進行し、12時25分小市島灯台から301度2,180メートルの地点において、一美VIは、アシカ碆付近の浅礁に乗り揚げた。
 当時、天候は晴で風力2の南西風が吹き、潮候は上げ潮の末期であった。
 乗揚の結果、船底外板中央部から船尾にかけて破口を生じ、自力で離礁したが機関の濡れ損を生じて航行不能となり、曳航されて定係港に引き寄せられた。

(原因)
 本件乗揚は、クダコ水道中央部に位置するクダコ島南西岸沖での釣りを終えて北条港に向けての帰途、途中更に釣りを行う予定で二神島東方水域に寄せたのち、同島南東方に位置する横島と中島との間を経て帰航する際、両島周辺水域の水路調査が不十分で、中島南西岸を接航し同岸から沖に延出した険礁域先端部にあたる洗岩状態のアシカ碆付近の浅礁に向けて進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、クダコ島南西岸沖での釣りを終えて更に釣りを行う予定で二神島東方水域に寄せたのち、通航経験のなかった同島南東方に位置する横島と中島との間を経て北条港に向けて帰航する場合、両島周辺水域に航行上支障となる暗礁等の険礁水域の有無を確かめるよう、所持していた海図第1131号によって同水域の水路調査を十分に行うべき注意義務があった。しかし、同人は、中島西岸から南西岸にかけて岸から約100メートル離せば同島を接航することができると思い、同島周辺の水路調査を十分に行わなかった職務上の過失により、同島南西岸から沖に延出した険礁域の存在に気付かず、同島をつけ回すように接航して、同険礁域先端部にあたる洗岩状態のアシカ碆付近の浅礁への乗揚を招き、船底外板中央部から船尾にかけて破口及び機関の濡れ損を生じさせるに至った。





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