日本財団 図書館




 海難審判庁裁決録 >  2001年度(平成13年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成13年神審第32号
件名

プレジャーボートレディーバード乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成13年9月7日

審判庁区分
神戸地方海難審判庁(黒田 均)

副理事官
蓮池 力

受審人
A 職名:レディーバード船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
左舷の舵及びプロペラを損傷、船底外板に破口浸水、のち廃船

原因
船位確認不十分

裁決主文

 本件乗揚は、船位の確認が不十分であったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成12年7月16日16時30分
 兵庫県上島南方沖合

2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボートレディーバード
総トン数 10トン
登録長 9.84メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 323キロワット

3 事実の経過
 レディーバード(以下「レ号」という。)は、2基2軸を有するFRP製モーターボートで、A受審人が知人から借り受け、兄1人を同乗させ、周遊の目的で、船首0.7メートル船尾1.0メートルの喫水をもって、平成12年7月16日11時00分兵庫県相生港を発し、同県尼崎西宮芦屋港に寄せたのち、13時30分同港を発進し、同県家島漁港に向かった。
 A受審人は、キャビン上方のフライングブリッジで腰掛けて操舵と見張りに当たり、明石海峡を通航したのち播磨灘を西行し、16時14分半東播磨港別府西港西防波堤灯台から181度(真方位、以下同じ。)2.8海里の地点において、針路を上島に向首する285度に定め、機関を全速力前進にかけ、18.0ノットの対地速力とし、手動操舵により進行した。
 ところで、A受審人は、海図により上島の南方に浅所があることを知っていたので、同浅所をかわすため、同島に向けて接近したのち、同島南岸を500メートル以上離し、かつ、8海里西方の男鹿島島頂に向く針路に転じて進行するようにしていた。
 こうして、A受審人は、上島東方に至り、男鹿島島頂に向け転針することとしたが、目測で大丈夫と思い、転針時機を失しないよう、キャビンにあるレーダーで上島までの距離を測定するなど、船位の確認を十分に行わず、16時26分半上島灯台から105度1.0海里の地点に達し、転針地点になったことに気付かないまま、同じ針路で続航した。
 16時28分少し過ぎレ号は、上島灯台から105度900メートルの地点に達し、A受審人が262度に転針し、上島南方の浅所に向首していることに気付かないまま進行し、16時30分上島灯台から201度400メートルの地点において、原針路原速力のまま、同浅所に乗り揚げ、これを乗り切った。
 当時、天候は晴で風はほとんどなく、潮候はほぼ低潮時であった。
 乗揚の結果、左舷の舵及びプロペラを損傷し、船底外板に破口を生じて浸水し、上島北岸に任意座礁した。A受審人らは付近にいた釣り船に救助され、船体は後日サルベージ船に救助されたが、修理費との関連で廃船とされた。

(原因)
 本件乗揚は、兵庫県尼崎西宮芦屋港から同県家島漁港に向け西行中、上島東方で転針する際、船位の確認が不十分で、転針時機を失して転針し、同島南方の浅所に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、兵庫県尼崎西宮芦屋港から同県家島漁港に向け西行中、上島東方で転針する場合、同島南方の浅所をかわすため、その南岸を
500メートル以上離す必要があることを知っていたのであるから、転針時機を失しないよう、レーダーで同島までの距離を測定するなど、船位の確認を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、目測で大丈夫と思い、船位の確認を十分に行わなかった職務上の過失により、転針時機を失して転針し、上島南方の浅所に向首していることに気付かないまま進行して同所に乗り揚げ、左舷の舵及びプロペラを損傷し、船底外板に破口を生じて浸水させ、修理費との関連で廃船とさせるに至った。





日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION