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 海難審判庁裁決録 >  2001年度(平成13年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成13年横審第48号
件名

プレジャーボートアポロII乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成13年9月18日

審判庁区分
横浜地方海難審判庁(葉山忠雄)

副理事官
河野 守

受審人
A 職名:アポロII船長 海技免状:四級小型船舶操縦士

損害
スクリュープロペラに曲損、同乗者が右鎖骨骨折、両側肺挫傷等

原因
針路選定不適切

裁決主文

 本件乗揚は、針路の選定が不適切であったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成12年8月23日19時00分
 駿河湾富士川河口

2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボートアポロII
全長 8.35メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 69キロワット

3 事実の経過
 アポロIIは、FRP製のプレジャーボートで、A受審人が船長として乗り組み、知人1人を同乗させ、船首0.25メートル船尾0.80メートルの喫水をもって、太刀魚釣りの目的で、平成12年8月23日18時30分静岡県田子の浦港の係留地を発し、同県蒲原町沖合の魚釣り場に向かった。
 ところで、田子の浦港から蒲原町にかけての海岸は、途中で富士川が駿河湾に注ぎ、同川の河口付近ではなだらかな砂浜が突出し、浅瀬を形成する地形となっていて、同河口からの距離を十分にとる必要があった。また、A受審人は、土曜日、日曜日の休日を利用して駿河湾内の諸魚釣り場で、月2ないし3回の魚釣りを行っていて、付近の工場や灯火の存在地点などを十分に承知していた。
 A受審人は、田子の浦港の入口の防波堤を過ぎて南下し、18時48分田子の浦港西防波堤灯台から160度(真方位、以下同じ。)1,400メートルの地点に達したとき、前示魚釣り場に向かうこととしたが、富士川河口付近の浅瀬の位置を知っているので、これに近づいてから替わせばよいと思い、同浅瀬の沖合に向けるなど針路の選定を適切に行うことなく、針路を262度に定め、機関をほぼ全速力前進にかけ、15.5ノットの対地速力とし、同浅瀬に向首したまま進行した。
 アポロIIは、18時58分富士川河口付近の浅瀬から950メートルの地点に近づいたが、依然、針路の選定が不適切なまま続航中、同針路、同速力で、19時00分田子の浦港西防波堤灯台から248度3.0海里の地点において、富士川河口の浅瀬に乗り揚げた。
 当時、天候は晴で風力1の西風が吹き、潮候は上げ潮の中央期であった。
 乗揚の結果、アポロIIはスクリュープロペラに曲損を生じ、のち、静岡県由比漁港に引きつけられて修理され、一方、同乗者が乗揚の衝撃により、船外に投げ出されて右鎖骨骨折、両側肺挫傷等を負った。

(原因)
 本件乗揚は、夜間、駿河湾において、魚釣り場に向け航行する際、針路の選定が不適切で、富士川河口付近の浅瀬に向首したまま進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、駿河湾において、静岡県蒲原町沖合の釣り場に向かう場合、富士川河口からの距離を十分にとるよう、針路の選定を適切に行うべき注意義務があった。しかしながら、同人は、同河口付近の浅瀬の位置を知っているので、これに近づいてから替わせばよいと思い、針路の選定を適切に行わなかった職務上の過失により、同浅瀬に向首して乗り揚げる事態を招き、スクリュープロペラに損傷を生じさせ、また、同乗者を負傷させるに至った。





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