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 海難審判庁裁決録 >  2001年度(平成13年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成13年仙審第31号
件名

プレジャーボートマーメイドIII乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成13年9月12日

審判庁区分
仙台地方海難審判庁(喜多 保)

副理事官
宮川尚一

受審人
A 職名:マーメイドIII船長 海技免状:四級小型船舶操縦士

損害
船底外板に亀裂、のち廃船、同乗者1人が肋骨骨折

原因
針路選定不適切

裁決主文

 本件乗揚は、針路の選定が適切でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成12年7月7日00時15分
 新潟県佐渡島真野湾

2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボートマーメイドIII
登録長 5.37メートル
機関の種類 電気点火機関
出力 36キロワット

3 事実の経過
 マーメイドIIIは、FRP製プレジャーボートで、A受審人が1人で乗り組み、釣り仲間4人を乗せ、船首0.2メートル船尾0.3メートルの喫水をもって、たい釣りを行う目的で、平成12年7月6日18時40分新潟県稲鯨漁港を出航し、同日19時ごろ同県佐渡島の真野湾北部の釣り場に至って釣りを行い、翌7日00時09分真野湾北西部の真野湾消波堤灯台(以下「消波堤灯台」という。)から066度(真方位、以下同じ。)1.1海里の地点を発し、同漁港に向けて帰港の途についた。
 ところで、真野湾北西部には南北に長い崖ノ鼻浅瀬と総称されている水深0.9メートルの浅礁が存在し、その南側に、東西に延びる逆への字形の全長約700メートルの消波堤があり、その東端には消波堤灯台が設置されていて、A受審人は、釣りを行うため何回となく同湾に入湾していたので、同消波堤の存在については十分承知していた。
 A受審人は、発航してから、発航地点の南側にたいの刺網が多数敷設されているのを入湾するとき認めていたので、これを避けるためしばらく西航してから稲鯨漁港に向かうこととし、00時11分消波堤灯台から045度1,400メートルの地点で、針路を254度に定め、機関を全速力前進にかけて14.0ノットの対地速力で、手動操舵によって進行した。
 A受審人は、舵輪を前にしていすに腰掛けて操舵操船に当たり、00時12分少し過ぎ消波堤灯台から029度950メートルの地点に達したとき、稲鯨漁港に向かうため針路を222度ばかりに転じたが、操舵室前部で今回の釣果について話し合う同乗者の会話に気をとられ、消波堤灯台を少し右方に見る適切な針路を選定しなかったので、消波堤中央部に向首した針路となったことに気付かないまま続航した。
 00時15分わずか前A受審人は、同乗者の叫ぶ声で船首至近に消波堤が存在するのに初めて気付き、機関を中立としたが及ばず、00時15分消波堤灯台から265度320メートルの地点において、マーメイドIIIは、原針路、原速力のまま、真野湾消波堤に乗り揚げた。
 当時、天候は晴で風力2の東風が吹き、潮候は下げ潮の末期であった。
 乗揚の結果、マーメイドIIIは、船底外板に亀裂を生じ、自力で離礁したが、のち廃船となり、同乗者1人が肋骨骨折を負った。

(原因)
 本件乗揚は、夜間、新潟県佐渡島の真野湾北西部を航行中、台ケ鼻に向けて転針する際、針路の選定が不適切で、真野湾消波堤に向けて進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、新潟県佐渡島の真野湾消波堤の存在する真野湾北西部を西航中、台ケ鼻に向けて針路を転ずる場合、同消波堤に向首することのないよう、同消波堤東端の灯台を少し右方に見るよう適切な針路を選定すべき注意義務があった。しかるに、同人は、同乗者の会話に気をとられ、針路の選定を適切に行わなかった職務上の過失により、同消波堤に向首した針路のまま進行して乗揚を招き、マーメイドIIIの船底外板に亀裂を生じさせ、同乗者1人に肋骨骨折を負わせるに至った。





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