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 海難審判庁裁決録 >  2001年度(平成13年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成13年函審第35号
件名

漁船第二十八招福丸乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成13年9月13日

審判庁区分
函館地方海難審判庁(織戸孝治)

理事官
堀川康基

受審人
A 職名:第二十八招福丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
シューピース、推進器翼などに曲損等

原因
居眠り運航防止措置を不十分

裁決主文

 本件乗揚は、居眠り運航の防止措置が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成12年9月29日03時55分
 北海道葛登支(かっとし)岬

2 船舶の要目
船種船名 漁船第二十八招福丸
総トン数 19トン
全長 25.10メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力  558キロワット

3 事実の経過
 第二十八招福丸(以下「招福丸」という。)は、いか一本釣り漁業に従事するFRP製漁船で、A受審人ほか2人が乗り組み、操業の目的で、船首0.8メートル船尾2.5メートルの喫水をもって、平成12年9月28日12時00分北海道苫小牧港を発し、渡島半島恵山岬東方沖合漁場で操業を行い、まいか約70キログラムを漁獲して、帰途に就くこととし、翌29日00時ごろ同漁場を発進し、北海道福島港に向かった。
 ところで、A受審人は、同年2月末九州付近の漁場で操業を開始して以来、いかを追って北上を続け、同9月22日からは土曜日ごとの休漁日を除き、連日15時ごろ苫小牧港を発航して翌朝06時ごろ帰航する形態でいか漁の出漁を繰り返しており、発航後は常時操舵室に在って操船や操業の指揮などに当たり、また、基地入港後は水揚や出漁準備等に時間を奪われて3時間半ばかりの睡眠をとったのち出港していたことから、操業中に操舵室内で短時間仮眠をとるものの慢性的な睡眠不足の状態になっていた。
 発進後、A受審人は、甲板員を休息させて単独の船橋当直に就き、津軽海峡の東向きの海流の影響を避けて渡島半島沿いに西進し、03時23分葛登支岬灯台から098度(真方位、以下同じ。)4.7海里の地点に達したとき、前路に障害となる他船を認めなかったことから針路を葛登支岬に向く275度に定め、機関を半速力前進にかけ9.0ノットの対地速力で、自動操舵により進行した。
 定針後、A受審人は、日頃の睡眠不足から眠気を催したが、居眠りすることはあるまいと思い、休息中の甲板員を見張りに立てるなど居眠り運航の防止措置をとることなく、操舵室に設けられた椅子に腰を掛けたまま当直を続け、居眠りに陥った。
 こうして、招福丸は、居眠り運航となり、福島港に向け転針がなされず、葛登支岬に向首したまま続航し、03時55分葛登支岬灯台から212度500メートルの岩礁に原針路、原速力のまま乗り揚げた。
 当時、天候は晴で風力2の北東風が吹き、潮候は上げ潮の末期であった。
 乗揚の結果、シューピース、推進器翼などに曲損等を生じたが、自力離礁して北海道函館港に入港し、のち修理された。

(原因)
 本件乗揚は、夜間、漁場から福島港に向け帰航中、居眠り運航の防止措置が不十分で、葛登支岬に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、単独で船橋当直に就き、漁場から福島港に向け帰航中、睡眠不足から眠気を催した場合、居眠り運航になるおそれがあったから、休息中の甲板員を見張りに立てるなど居眠り運航の防止措置をとるべき注意義務があった。しかるに、同受審人は、居眠りすることはあるまいと思い、休息中の甲板員を見張りに立てるなど居眠り運航の防止措置をとらなかった職務上の過失により、椅子に腰を掛けたまま当直を続けて居眠りに陥り、居眠り運航となって、葛登支岬に向首進行して乗揚を招き、推進器翼などに損傷を生じさせるに至った。





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