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 海難審判庁裁決録 >  2001年度(平成13年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成12年那審第53号
件名

漁船第八ゆり丸乗揚事件

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成13年8月9日

審判庁区分
門司地方海難審判庁那覇支部(金城隆支、清重隆彦、平井 透)

理事官
平良玄栄

受審人
A 職名:第八ゆり丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
船底に破口を伴う損傷、のち廃船

原因
水路調査不十分

主文

 本件乗揚は、水路調査が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aの一級小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成8年11月12日18時00分(日本標準時)
 ミクロネシア連邦ヤップ島コロニア港

2 船舶の要目
船種船名 漁船第八ゆり丸
総トン数 19.98トン
登録長 14.95メートル
機関の種類 ディーゼル機関
漁船法馬力数 95

3 事実の経過
 第八ゆり丸は、まぐろ延縄漁に従事するFRP製漁船で、A受審人ほか7人が乗り組み、操業の目的で、船首1.0メートル船尾2.8メートルの喫水をもって、平成8年11月12日17時45分(日本標準時、以下同じ。)ヤップ島コロニア港を発し、同島南方沖の漁場に向かった。
 ところで、コロニア港の南東方1,000メートルから南方向2,000メートルにかけて、さんご礁帯の切れ目を利用した可航幅100ないし300メートルの水路があり、水路両側には要所に立標が設置されていた。このうち、第11号立標は、拡延した浅礁の西端を示すものではなく、同立標の南西方100メートルには浅礁が拡延しており、このことは英版海図1485号の港泊図をみれば容易に分かることであった。
 A受審人は、英版海図1485号を所持していたが、第11号立標の西側に浅礁がないと思い、発航に当たり、浅礁の状況など水路調査を十分に行わなかったので、同立標の南西方に浅礁が拡延していることを知らないまま発航した。なお、同受審人は、これまでに2度コロニア港に入港した経験があり、いずれも水路中央を航行して無難に入出港していた。
 17時54分A受審人は、第11号立標から318度(真方位、以下同じ。)815メートルの地点において、針路を127度に定め、機関を半速力前進にかけて5.0ノットの対地速力で、自動操舵によって進行した。
 A受審人は、第12号立標を右舷正横に見たのち水路中央を航行するつもりでいたところ、右舷船首方に入航してくる他船を認め、水路の左側に寄せて同船と右舷を対して航過することとし、17時58分少し過ぎ第11号立標から348.5度225メートルの地点で、針路を182度に転じたところ、同立標の南西方の浅礁に向首する状況となったが、このことに気付かなかった。
 第八ゆり丸は、同じ針路及び速力で続航し、18時00分第11号立標から227度70メートルの地点において、浅礁に乗り揚げた。
 当時、天候は晴で風力2の南風が吹き、潮候は上げ潮の中央期であった。
 乗揚の結果、船底に破口を伴う損傷を生じ、自力離礁後に航行不能となり、第11号立標から北北東方400メートルのさんご礁帯に任意座礁したが、船底が大破し、のち廃船となった。

(原因)
 本件乗揚は、ヤップ島コロニア港を発航する際、水路調査が不十分で、第11号立標の南西方に拡延する浅礁に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、ヤップ島コロニア港を発航する場合、第11号立標の南西方には浅礁が拡延していたのであるから、これに乗り揚げないよう、備え付けの海図に当たって浅礁の状況など水路調査を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同受審人は、第11号立標の西側に浅礁がないと思い、水路調査を十分に行わなかった職務上の過失により、同立標の南西方に浅礁が拡延していることを知らないまま発航し、同浅礁に向首進行して乗揚を招き、船底を大破せしめて廃船させるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第2号を適用して同人の一級小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。

 よって主文のとおり裁決する。 





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