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 海難審判庁裁決録 >  2001年度(平成13年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成13年神審第40号
件名

プレジャーボートア モン センスIII乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成13年8月30日

審判庁区分
神戸地方海難審判庁(大本直宏)

副理事官
蓮池力

受審人
A 職名:ア モン センスIII船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
センターボード先端部損傷と舵軸を曲損

原因
水路調査不十分

裁決主文

 本件乗揚は、水路調査が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成12年5月3日13時42分
 和歌山県田辺港港外

2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボートア モン センスIII
全長 10.4メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 17キロワット

3 事実の経過
 ア モン センスIIIは、FRP製プレジャーヨットで、A受審人ほか1人が乗り組み、周遊の目的で、1.85メートルの最大喫水をもって、平成12年5月3日06時00分和歌山県串本港を発し、高知県土佐清水港へ向かう航行の途次、紀伊半島南岸沖を西進中しけ模様となり、荒天避泊のため和歌山県田辺港の綱不知浦に向かった。
 ところで、田辺港西方の港界線南部付近は、小島と暗岩とが番所鼻付近から北方に点々と連なって延びた危険海域で、同海域の北端に暗岩であるソガセノオリが存在し、同海域模様は海図第74号に記載され、また、A受審人は、これまで北方から田辺港に入航した際などに、同海図を概観したことがあり、危険海域の概略が分かっていたものの、ソガセノオリの存在は知らなかった。
 A受審人は、紀伊半島南西岸沖を北上した後、田辺港へ入航することにしたが、同港西方沖の中島と四双島とのほぼ中間地点から東進すれば大丈夫と思い、浅所に乗り揚げないよう、保有していた前示の海図を精査し、水路調査を十分に行わなかった。
 こうして、A受審人は、機帆走により四双島西方沖を航過した後、同島と中島とのほぼ中間地点に達したことを認めて右転し、13時38分番所鼻灯台から326度(真方位、以下同じ。)1,250メートルの地点において、針路を099度に定めたとき、ソガセノオリに向首していることに気付かず、機関を中立状態とし、折からの風を左舷側から受け、綱不知浦北方沖の畠島付近を船首方に見て帆走を開始し、同じ針路6.0ノットの対地速力で進行中、13時42分番所鼻灯台から004度920メートルの地点において、ア モン センスIIIは、原針路原速力のまま、ソガセノオリに乗り揚げた。
 当時、天候は曇で風力4の北北西風が吹き、潮候は上げ潮の中央期であった。
 乗揚の結果、センターボード先端部に次ぎ舵板の下部が、ソガセノオリを乗り切り、同先端部の損傷と舵軸の曲損とを生じたが、のち修理された。

(原因)
 本件乗揚は、紀伊半島南西岸沖を北上中、荒天避泊のため和歌山県田辺港へ入航する際、水路調査が不十分で、暗岩であるソガセノオリに向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、紀伊半島南西岸沖を北上中、荒天避泊のため和歌山県田辺港へ入航する場合、浅所に乗り揚げないよう、保有していた海図第74号を精査し、水路調査を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、同港西方沖の中島と四双島とのほぼ中間地点から東進すれば大丈夫と思い、水路調査を十分に行わなかった職務上の過失により、暗岩であるソガセノオリに向首進行して乗揚を招き、センターボード先端部の損傷と舵軸の曲損とを生じさせるに至った。





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