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 海難審判庁裁決録 >  2001年度(平成13年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成13年仙審第24号
件名

漁船第二金恵丸乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成13年8月10日

審判庁区分
仙台地方海難審判庁(喜多 保)

副理事官
宮川尚一

受審人
A 職名:第二金恵丸船長 海技免状:四級海技士(航海)

損害
プロペラ翼を欠損及び曲損

原因
水路調査不十分

裁決主文

 本件乗揚は、水路調査が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成10年12月17日23時05分
 秋田船川港船川区第2区

2 船舶の要目
船種船名 漁船第二金恵丸
総トン数 90トン
登録長 23.83メートル
機関の種類 ディーゼル機関
漁船法馬力数 300

3 事実の経過
 第二金恵丸(以下「金恵丸」という。)は、いか一本釣り漁に従事する鋼製漁船で、A受審人ほか5人が乗り組み、操業の目的で、平成10年11月26日12時30分函館港を出港し、翌27日16時ごろ北緯40度東経136度ばかりの日本海の漁場に至って操業を行い、越えて12月16日23時40分秋田県入道埼の西方60海里ばかりの地点で、真いか約12.5トンを漁獲したところで操業を終えて、船首1.6メートル船尾2.4メートルの喫水をもって、同港に向けて帰港の途についたところ、翌17日02時ごろ北西の風が強まり横風を受けるようになり、航行が困難になったので避難するため秋田船川港に向かい、09時30分同港に入港した。
 ところでA受審人は、秋田船川港の入港は初めてであったが、事前に僚船から同港の漁業協同組合のある岸壁付近が使用でき、同岸壁付近に入航する際は同港船川区第2区の公共ふ頭(以下「公共ふ頭」という。)と突堤との間の水路中央から右側寄りが浅いから注意するようにとの助言を受けていたので、船川芦沢防波堤南灯台(以下「南灯台」という。)から238度(真方位、以下同じ。)630メートルの地点の公共ふ頭北側岸壁に左舷付け係留したものの、海図第147号「秋田船川港船川」を船内に備えていないことから、係留位置北側の対岸の突堤付近に浅所が存在していることを知らなかったが、無事入航できたので大丈夫と思い、同浅所に乗り揚げないよう、海上保安部に問い合わせるなどして水路調査を十分に行わなかった。
 A受審人は、18時ごろから風が弱まってきたので函館港に向かうこととし、23時00分係船索を放って離岸を開始して、1人で操舵操船に当たり、同時04分少し前南灯台から240度625メートルの地点で、機関を微速力前進にかけて2.0ノットの対地速力とし、右舵一杯として右回頭を始めたところ、公共ふ頭北側の浅所に徐々に向首して接近することになったが、このことに気付かないまま回頭中、23時05分金恵丸の船首が065度に向首したとき、原速力のまま、南灯台から244度560メートルの地点の浅所に乗り揚げた。
 当時、天候は曇で風力4の西北西風が吹き、潮候は上げ潮の中央期であった。
 乗揚の結果、プロペラ翼を欠損及び曲損したが、自力で離礁し、のち修理された。

(原因)
 本件乗揚は、夜間、秋田船川港船川区第2区の公共ふ頭から出航するにあたり、同区内の水路調査が不十分で、同ふ頭北側の浅所に向け進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、初めて入港した秋田船川港船川区第2区の公共ふ頭から出航する場合、同ふ頭の北側に存在する浅所に乗り揚げないよう、海上保安部に問い合わせするなどして水路調査を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、昼間無事入航できたので大丈夫と思い、同区内の水路調査を十分に行わなかった職務上の過失により、同浅所の存在に気付かないまま進行して乗揚を招き、プロペラ翼を欠損及び曲損させるに至った。





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