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 海難審判庁裁決録 >  2001年度(平成13年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成12年那審第52号
件名

引船GPS1000引船列乗揚事件

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成13年7月12日

審判庁区分
門司地方海難審判庁那覇支部(金城隆支、清重隆彦、平井 透)

理事官
平良玄栄

指定海難関係人
A 職名:GPS1000船長

損害
左舷船首船底に擦過傷

原因
船位不確認、操船不適切

主文

 本件乗揚は、機関を停止して視界の回復を待たなかったことによって発生したものである。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成12年6月15日22時30分
 沖縄県石垣港港外

2 船舶の要目
船種船名 引船GPS1000 引船GPS800
総トン数 68.60トン 74.38トン
登録長 21.66メートル 21.61メートル
機関の種類 ディーゼル機関  
出力 735キロワット  

3 事実の経過
 GPS1000は、鋼製引船で、A指定海難関係人ほか3人が乗り組み、回航の目的で、無人で喫水船首1.4メートル船尾1.8メートルの鋼製引船GPS800を引き、船首1.6メートル船尾2.0メートルの喫水をもって、平成12年6月10日10時30分広島県尾道糸崎港を発し、沖縄県石垣港経由でシンガポール共和国シンガポール港へ向かった。
 6月15日21時36分A指定海難関係人は、琉球観音埼灯台から322度(真方位、以下同じ。)3.2海里の地点に達したとき、針路を石垣港中央灯浮標に向首する155度に定め、機関を全速力前進にかけ、6.5ノットの対地速力で、手動操舵によって進行した。
 A指定海難関係人は、3海里レンジとして作動させていたレーダーと肉眼による目視で周囲の見張りにあたって続航中、21時48分琉球観音埼灯台から313度2.0海里の地点に差しかかったころ、北西の風が強まり豪雨となって視程が10メートルに狭められ、それまで見えていた船首方向の石垣港中央灯浮標の灯光を認められなくなり、レーダー画面が真っ白となって観音埼などの陸岸を識別できず、船位を確認する手段がなくなったが、機関を停止して船首を風に立て視界の回復を待つことなく、機関を3.0ノットの極微速力に減じただけで、その後同じ針路で左方に18度圧流されて進行した。
 22時20分A指定海難関係人は、琉球観音埼灯台から295度700メートルの地点で、琉球観音埼灯台の灯火を認め、依然レーダー画面が真っ白となっていて船位を確認できないまま、20度右転すれば観音埼西方から南方にかけて拡延するさんご礁帯を替わせると思い、針路を175度に転じた。
 GPS1000引船列は、25度左方に圧流されて観音埼南方のさんご礁帯に寄せられる針路のまま続航中、22時30分琉球観音埼灯台から194度550メートルの地点において、GPS1000が原針路、原速力のまま乗り揚げた。
 当時、天候は雨で風力5の北西風が吹き、視程は10メートルで、潮候は下げ潮の中央期であった。
 乗揚の結果、GPS1000は、左舷船首船底に擦過傷を生じたが、自力で離礁した。

(原因)
 本件乗揚は、夜間、沖縄県石垣港北西方を石垣港へ向けて南下中、豪雨で視界が著しく制限され、レーダーに陸岸が映らず船位を確認できなくなった際、機関を停止して視界の回復を待たずに進行し、さんご礁帯に著しく接近したことによって発生したものである。

(指定海難関係人の所為)
 A指定海難関係人が、夜間、沖縄県石垣港北西方を石垣港へ向けて南下中、豪雨で視界が著しく制限され、レーダーに陸岸が映らず船位を確認できなくなった際、機関を停止して視界の回復を待たなかったことは本件発生の原因となる。
 A指定海難関係人に対しては、勧告しない。

 よって主文のとおり裁決する。 





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