(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成12年11月21日07時55分
沖縄県鳩間島北方のさんご礁
2 船舶の要目
船種船名 |
油送船ディスティニー |
総トン数 |
23,333トン |
登録長 |
162.70メートル |
機関の種類 |
ディーゼル機関 |
出力 |
8,611キロワット |
3 事実の経過
ディスティニー(以下「デ号」という。)は、船尾船橋型の鋼製油送船で、船長Aを含むインド人16人とフィリピン共和国人16人とが乗り組み、クリアランス取得の目的で、空倉のまま、船首4.60メートル船尾7.40メートルの喫水をもって、平成12年11月20日10時02分台湾基隆港を発し、沖縄県石垣港に向かった。
A船長は、翌21日06時30分ごろ、鳩間島の南西19海里ばかりの地点で、船体の動揺が激しくなったことに気付き、昇橋して状況を観察したのち、07時15分鳩間島灯台から274度(真方位、以下同じ。)4.5海里の地点で、船橋当直中の三等航海士から操船指揮を引き継ぎ、同航海士を操船補助者とし、引き続き、操舵手を手動操舵に就け、針路を050度に定め、機関回転数を全速力前進より少し少ない70回転とし、強い北からの季節風による激しい風浪を左舷船首方から受けて5.0ノットの対地速力で進行した。
そして、A船長は、07時30分鳩間島灯台から288度3.7海里の地点に達したとき、入港予定時刻が2時間ばかり遅れていることから、近回りをしようとして針路を075度に転じ、同じ機関回転数で続航した。
07時35分A船長は、船位を確認し、激しい風浪をほぼ左舷正横から受けるようになって右方に圧流されていることを知ったが、このままの針路で進行しても鳩間島から北方に拡延するさんご礁を無難に航過することができるものと思い、同さんご礁を十分に離す安全な針路とすることなく同じ針路及び機関回転数で続航した。
デ号は、対地速力が9.6ノットとなり、同じ針路で、右方に20度圧流されて進行中、A船長が07時45分右舷前方にさんご礁に砕ける白波を見て危険を感じ左舵一杯としたところ、船速が急激に低下するとともに舵効が悪くなり、さんご礁帯に圧流され、同時50分機関を停止し、その後、後進に掛けようとしたが掛からず、07時55分鳩間島灯台から320度1,500メートルのさんご礁に3.5ノットの速力で120度を向首して乗り揚げた。
当時、天候は曇で風力7の北風が吹き、潮候は下げ潮の中央期であった。
乗揚の結果、船底全般に凹損及び亀裂を生じ、推進器翼及び舵柱を損傷したが、他船によって引き下ろされ、のち修理された。
(原因)
本件乗揚は、鳩間島北方において、強い北からの季節風による激しい風浪により右方に圧流されながら、同島を迂回する際、針路の選定が不適切で、鳩間島から北方に拡延するさんご礁を十分に離す安全な針路としなかったことによって発生したものである。
よって主文のとおり裁決する。