日本財団 図書館




 海難審判庁裁決録 >  2001年度(平成13年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成13年神審第25号
件名

貨物船みつひろ2乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成13年7月24日

審判庁区分
神戸地方海難審判庁(大本直宏)

理事官
野村昌志

受審人
A 職名:みつひろ2船長 海技免状:二級海技士(航海)
指定海難関係人
B 職名:みつひろ2甲板長

損害
船首部船底外板数箇所に損傷

原因
居眠り運航防止措置不十分

裁決主文

 本件乗揚は、居眠り運航の防止措置が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成12年2月11日01時45分
 伊勢湾南部

2 船舶の要目
船種船名 貨物船みつひろ2
総トン数 748トン
全長 86.25メートル
登録長 80.0メートル
13.00メートル
深さ 4.45メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 1,471キロワット

3 事実の経過
 みつひろ2は、船尾船橋型の鋼製貨物船で、A受審人及びB指定海難関係人ほか3人が乗り組み、鋼材591トンを載せ、荷役の目的で、船首3.5メートル船尾4.4メートルの喫水をもって、平成12年2月10日23時10分愛知県名古屋港を発し、兵庫県姫路港に向かった。
 これより先、B指定海難関係人の同10日の行動は、00時から04時まで船橋当直、その後4時間弱の睡眠、午前中の倉内清掃、12時から16時まで船橋当直、夕刻までの甲板掃除、18時25分からの入港作業に続き、22時50分までの荷役監視作業、次いで出港作業に従事したものであった。
 A受審人は、自ら船橋当直に当たり伊勢湾を南下中、桃取水道、鳥羽港北方水域及び加布良古水道を経由することとし、23時47分小休息を終え昇橋したB指定海難関係人に、船橋当直を引き継いだが、同人が船内では無資格者に相当するものの、四級小型船舶操縦士免状を受有しており、同当直経験も豊富なので大丈夫と思い、居眠り運航とならないよう、眠気を催したときは直ちに船長報告する旨の指示を十分に行うことなく、降橋して休息した。
 B指定海難関係人は、1人で船橋当直に当たって南下中、翌11日00時55分伊勢湾第4号灯浮標を左舷500メートルに並航した地点において、針路を177度に定め、機関を12.5ノットの全速力前進にかけ、折からの順流に乗じ13.7ノットの対地速力で、自動操舵により進行した。
 01時17分半B指定海難関係人は、神前灯台北側付近の陸岸までのレーダー距離6.5海里を認めた後、船橋右舷壁前方沿いのソファーに、左舷側を向き座っているうち、疲労気味のところ、眠気を催したが、直ちに眠気を催した旨の船長報告を行わず、かつ、ソファーから立ち上がり外気に当たるなど、居眠り運航の防止措置を十分にとらずに続航した。
 こうして、みつひろ2は、B指定海難関係人がいつしか居眠りに陥り、神前灯台西方の神前海岸北方沖に設置された消波ブロックに向首したまま進行中、01時45分神前灯台から真方位285度1,000メートルの地点において、原針路原速力のまま、同消波ブロックに乗り揚げた。
 当時、天候は晴で風はなく、潮候は下げ潮の末期で、1.2ノットの南流があった。
 乗揚の結果、船首部船底外板数箇所に損傷を生じたが、のち修理された。

(原因)
 本件乗揚は、夜間、桃取水道北口に向け伊勢湾を南下中、居眠り運航の防止措置が不十分で、神前海岸北方沖の消波ブロックに向首進行したことによって発生したものである。
 運航が適切でなかったのは、船長が無資格の船橋当直者に対し、眠気を催したとき直ちに船長報告を行う旨の指示を十分に行わなかったことと、無資格の船橋当直者が同報告を行わず、かつ、ソファーから立ち上がり外気に当たるなど、居眠り運航の防止措置を十分にとらなかったこととによるものである。

(受審人等の所為)
 A受審人は、夜間、桃取水道北口に向け伊勢湾を南下中、B指定海難関係人に船橋当直を引き継ぐ場合、居眠り運航とならないよう、同指定海難関係人に対し、眠気を催したとき直ちに船長報告する旨の指示を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同受審人は、B指定海難関係人が船内では無資格者に相当するものの、四級小型船舶操縦士免状を受有しており、船橋当直経験も豊富なので大丈夫と思い、眠気を催したときは直ちに船長報告する旨の指示を十分に行わなかった職務上の過失により、B指定海難関係人の居眠り運航を招き、神前海岸北方沖の消波ブロックに向首進行して同ブロックに乗り揚げ、船首部船底外板に損傷を生じさせるに至った。
 B指定海難関係人は、夜間、桃取水道北口に向け伊勢湾を南下中、1人で船橋当直に当たり眠気を催した際、眠気を催した旨の船長報告を行わず、かつ、ソファーから立ち上がり外気に当たるなど、居眠り運航の防止措置を十分にとらなかったことは本件発生の原因となる。 





日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION