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 海難審判庁裁決録 >  2001年度(平成13年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成13年横審第32号
件名

プレジャーボートピュアティ乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成13年7月18日

審判庁区分
横浜地方海難審判庁(半間俊士)

副理事官
河野 守

受審人
A 職名:ピュアティ船長 海技免状:四級小型船舶操縦士

損害
推進器翼に曲損

原因
水路調査不十分

裁決主文

 本件乗揚は、水路調査が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成12年7月23日16時50分
 東京湾富津岬西方沖合

2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボートピュアティ
登録長 8.39メートル
機関の種類 電気点火機関
出力 250キロワット

3 事実の経過
 ピュアティは、2基2軸の船内外機を装備した、最大搭載人員12人のFRP製プレジャーボートで、A受審人が1人で乗り組み、家族等同乗者4人を乗せ、東京湾内クルージングの目的で、船首0.5メートル船尾1.2メートルの喫水をもって、平成12年7月23日06時00分東京都江戸川区新中川暫定係留施設大杉地区を発し、途中、荒川河口付近でボート仲間のプレジャーボート13隻と合流して千葉県富浦漁港に向かい、同港でバーベキューなどを楽しんだのち、15時00分同港を発して帰航の途に就いた。
 A受審人は、浦賀水道北部海域を北上するのは2回目で、いずれもボート仲間とのグループ行動であることから、グループの船と一緒であれば無難に航行できると思い、自身は事前に同海域の海図、ヨット・モーターボート用参考図及び水路図誌などによる水路調査を十分に行わず、千葉県富津岬と第1海堡の間には浅瀬が拡延していることを知らなかった。
 発航後A受審人は、往航時より強まった南西風の中、フライングブリッジで手動操舵により操船にあたり、グループの船に続いて浦賀水道の東側を北上していたところ、同乗者が船酔いになったので速力を減じ、次第にグループから遅れるようになって単独航となった。
 16時25分A受審人は、観音埼灯台から100度(真方位、以下同じ。)2.6海里の地点で、機関を毎分回転数2,000とし、針路を第1海堡と第2海堡との間に向く334度としたものの、船体の動揺を少なくするためにできるだけ船尾方から波を受けるように操船したことと、風に圧流されたこととにより10度右偏し、実効針路344度、対地速力9.8ノットで進行した。
 A受審人は、16時44分第2海堡灯台から113度2.1海里の地点に達し、グループの船を確認できないまま、富津岬と第1海堡との間の水域に向首して続航中、16時50分第2海堡灯台から084度1.65海里の地点において、原針路、原速力のまま浅瀬に乗り揚げた。
 当時、天候は晴で風力5の南西風が吹き、潮候は上げ潮の中央期であった。
 乗揚の結果、推進器翼に曲損を生じ、自力で離礁できないでいたところ、海上保安庁の救難艇及び同庁の依頼で来援した漁船により千葉県富津漁港に引きつけられ、のち修理された。

(原因)
 本件乗揚は、浦賀水道東側を北上するにあたり、同水道北部海域の水路調査が不十分で、浅瀬が拡延している富津岬と第1海堡との間の水域に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、浦賀水道東側を北上するにあたり、同水道北部海域を航行する場合、第1海堡と富津岬との間に浅瀬が拡延しており、付近海域の水路事情に不案内であったから、海図などにあたって水路調査を十分に行うべき注意義務があった。しかしながら、同人は、浦賀水道北部海域を北上するのは2回目で、いずれもボート仲間とのグループ行動であることから、グループの船と一緒であれば無難に航行できると思い、事前に同海域の海図などによる水路調査を十分に行わなかった職務上の過失により、浅瀬が拡延している富津岬と第1海堡との間の水域に進行して乗り揚げ、推進器翼に曲損を生じさせるに至った。





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