日本財団 図書館




 海難審判庁裁決録 >  2001年度(平成13年) > 衝突事件一覧 >  事件





平成13年那審第15号
件名

遊漁船朝丸油送船アポロ アカマ衝突事件

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成13年9月18日

審判庁区分
門司地方海難審判庁那覇支部(清重隆彦、金城隆支、平井 透)

理事官
平良玄栄

受審人
A 職名:朝丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
指定海難関係人
B 職名:アポロ アカマ船長

損害
朝丸・・・船首部を大破
ア号・・・右舷前部外板に擦過傷

原因
ア号・・・横切りの航法(避航動作)不遵守(主因)
朝丸・・・居眠り運航防止措置不十分、横切りの航法(協力動作)不遵守(一因)

主文

 本件衝突は、アポロ アカマが、前路を左方に横切る朝丸の進路を避 けなかったことによって発生したが、朝丸が、居眠り運航の防止措置が不十分で、衝突を避けるための協力動作をとらなかったことも一因をなすものである。
 受審人Aを戒告する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成12年9月23日15時35分
 沖縄島東方沖合

2 船舶の要目
船種船名 遊漁船朝丸 油送船アポロ アカマ
総トン数 7.3トン 146,849トン
全長 15.35メートル 338.00メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
出力 279キロワット 20,594キロワット

3 事実の経過
 朝丸は、船体中央からやや後方に操舵室を設けたFRP製遊漁兼用船で、A受審人が1人で乗り組み、釣り客5人を乗せ、船首0.5メートル船尾1.0メートルの喫水をもって、平成12年9月23日05時00分沖縄県漢那漁港を発し、沖縄島東方沖合に設置されたパヤオに至り、遊漁を行ったのち、15時00分同地を発して帰途についた。
 発進後、A受審人は、針路を282度(真方位、以下同じ)に定め、機関を全速力前進に掛けて15.0ノットの対地速力とし、自動操舵として操舵室内のいすに腰を掛け、食事を取りながら見張りを行って進行した。
 A受審人は、食事を終え、15時10分伊計島灯台から094度20.4海里の地点に達したとき、周囲に他船が見当たらず、穏やかな海面と満腹になったことなどから眠気を催したが、まさか居眠りすることはあるまいと思い、立って外気に当たるなどして居眠り運航の防止措置をとることなく、そのままいすに腰を掛けて見張りを続け、いつしか居眠りに陥った。
 朝丸は、同じ針路及び速力で続航し、15時30分伊計島灯台から092度15.5海里の地点に達したとき、左舷船首33度2.1海里のところに、前路を右方に横切るアポロ アカマ(以下「ア号」という。)を視認することができる状況で、その後その方位が変わらず避航の気配がないまま衝突のおそれのある態勢で接近したが、A受審人が居眠りに陥っていたのでこのことに気付かず、間近に接近したとき衝突を避けるための協力動作をとることができず、15時35分伊計島灯台から091度14.3海里の地点において、原針路、原速力のまま、その船首が、ア号の右舷前部に前方から66度の角度で衝突した。
 当時、天候は晴で風力4の北風が吹き、視界は良好であった。
 また、ア号は、船尾船橋型の鋼製油送船で、B指定海難関係人及びフィリピン共和国人の三等航海士Cほか日本人4人とフィリピン共和国人20人とが乗り組み、原油253,626メトリックトンを積載し、船首19.1メートル船尾19.6メートルの喫水をもって、同年9月6日19時20分(現地時刻)イラン・イスラム共和国を発し、京浜港川崎区に向かった。
 ところで、B指定海難関係人は、平成12年8月10日名古屋港でア号の船長として乗船したもので、船橋当直をC三等航海士、二等航海士及びもう1人の三等航海士の3直4時間制をとり、各当直に甲板手を1人付けていた。そして、発航前には、見張りを十分に行うこと、不安を感じたときには船長に報告すること等を英文で記載した注意書きを各航海士に読ませて署名を求め、航海中には、適宜、夜間命令簿に同種のことを英文で記載して注意を促していた。また、乗船後しばらくの間、頻繁に昇橋して様子を見、C三等航海士が航海士としての能力を十分に持っていることを確かめていた。
 一方、C三等航海士は、フィリピン共和国発行の二等航海士免状及びパナマ共和国発行の三等航海士免状を受有し、約10年間多数の船舶で航海士として従事していたもので、平成12年6月25日再びア号に三等航海士として乗船した。そして、海域によっては船長の指導及び助言を必要とせず、自身の判断で航海当直ができるだけの航海士としての能力を持っていた。
 C三等航海士は、9月23日12時00分沖縄島南方で船橋当直を引き継ぎ、引き続き050度の針路及び15.0ノットの対地速力で、甲板手を見張りに配して自動操舵で進行し、13時17分喜屋武埼灯台から130度14.5海里の地点で針路を036度に転じ、折からの海潮流により右方に1度圧流され、15.2ノットの対地速力で続航した。
 そして、C三等航海士は、15時00分ごろから船橋内右舷側後部にある海図台で船首方に向き海図作業を行っていたところ、同時10分甲板手から右舷前方に朝丸を認めたとの報告を受け、同三等航海士も同船を視認したものの、距離が離れていたことからそのまま同作業を続けて終え、同時25分伊計島灯台から100.5度13.0海里の地点で、自動衝突予防援助装置の警報音を聞き、朝丸が右舷船首34度4.2海里のところに存在することを認め、同船の動静を監視しながら航海日誌の記入作業を始めた。
 15時30分C三等航海士は、伊計島灯台から095.5度13.6海里の地点に達したとき、朝丸が右舷船首34度2.1海里となり、その後同船が前路を左方に横切り、方位に明確な変化がなく衝突のおそれがある態勢で接近したが、小型漁船が避けてくれるものと思い、速やかにその進路を避けなかった。
 ア号は、同じ針路及び速力で続航中、前示のとおり衝突した。
 B指定海難関係人は、C三等航海士の電話による報告を受け、昇橋して事後の措置にあたった。
 衝突の結果、朝丸は船首部を大破し、ア号は右舷前部外板に擦過傷を生じたが、のち朝丸は修理された。

(原因)
 本件衝突は、沖縄島東方沖合いにおいて、両船が互いに進路を横切り衝突のおそれのある態勢で接近する際、ア号が、前路を左方に横切る朝丸の進路を避けなかったことによって発生したが、朝丸が、居眠り運航の防止措置が不十分で、間近に接近したとき、衝突を避けるための協力動作をとらなかったことも一因をなすものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、沖縄島東方沖合いを西行中、周囲に他船が見当たらず、穏やかな海面と満腹になったことなどから眠気を催した場合、居眠り運航とならないよう、立ち上がって外気に当たるなどして居眠り運航の防止措置をとるべき注意義務があった。しかるに、同受審人は、まさか居眠りすることはあるまいと思い、操舵室のいすに腰を掛けたまま当直を続け、居眠り運航の防止措置をとらなかった職務上の過失により、いつしか居眠りに陥り、前路を右方に横切り衝突のおそれのある態勢で、避航の気配がないまま接近するア号に気付かず、間近に接近したとき衝突を避けるための協力動作をとることができずに進行して衝突を招き、朝丸の船首部を大破し、ア号の右舷前部外板に擦過傷を生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
 B指定海難関係人の所為は、本件発生の原因とならない。

 よって主文のとおり裁決する。


参考図
(拡大画面:38KB)





日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION