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平成12年広審第94号
件名

プレジャーボート連勝丸プレジャーボートカクーン衝突事件

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成13年8月29日

審判庁区分
広島地方海難審判庁(高橋昭雄、坂爪 靖、伊東由人)

理事官
岩渕三穂

受審人
A 職名:連勝丸船長 海技免状:四級小型船舶操縦士
B 職名:カクーン船長 海技免状:四級小型船舶操縦士

損害
連勝丸・・・左舷中央部外板に亀裂を伴う擦過傷
同乗者2名が負傷
カ号・・・船首部外板に亀裂を伴う擦過傷

原因
カ号・・・見張り不十分、船員の常務(前路進出)不遵守

主文

 本件衝突は、カクーンが、見張り不十分で、連勝丸の前路に進出したことによって発生したものである。
 受審人Bの四級小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成11年6月13日14時05分
 備後灘 横島沖合

2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボート連勝丸 プレジャーボートカクーン
全長 7.23メートル 2.76メートル
機関の種類 電気点火機関 電気点火機関
出力 36キロワット 88キロワット

3 事実の経過
 連勝丸は、推進機関として船外機が取り付けられ、船体中央部右舷側に操舵輪が設けられた和船型FRP製プレジャーボートで、A受審人が1人で乗り組み、大人2人小人4人の親族6人を同乗させ、魚釣りの目的で、船首0.2メートル船尾0.5メートルの喫水をもって、平成11年6月13日13時30分広島県千年港を発し、同日午前中に引き続き広島県沼隈郡横島南西端沖の釣場に向かった。
 A受審人は、操縦席の左舷側に妻Cと子供2人及び前部甲板に義弟と船首部に小人2人をそれぞれ座らせ、自ら操舵操船して横島とその東側田島との瀬戸を南下した。13時59分少し前横島南東端にあたる地蔵鼻東沖に至り、横島城山207メートル頂(以下「城山頂」という。)から129度(真方位、以下同じ。)1,620メートルの地点で、針路を236度に定め、機関スロットルを8割の全開状態に上げて時速約21キロメートル(11ノット)の速力で進行し、間もなく横島南岸から約150メートル沖及び約300メートル沖にそれぞれ数隻から成る2つの水上オートバイ群を認め、そのほぼ中間に予定の釣り場を見通し、午前中に一緒に釣りをしてそのまま居残っていた友人のボートを認めるようになった。
 14時02分少し過ぎA受審人は、城山頂から169度1,680メートルの地点に至り、針路を友人のボートに向首する265度に転じたところ、前示2つの水上オートバイ群のうち半径約100メートル内の範囲内で航走するグループを右舷船首約22度400メートル付近に、また左舷船首約10度1,000メートル付近に半径30から50メートルの範囲内でカクーン(以下「カ号」という。)を含む4隻ばかりの水上オートバイのグループをそれぞれ認めるようになり、右舷方海岸寄りで大きく回頭しながら航走するグループからできるだけ離れ、一方左舷方沖合で動きの小さいカ号らのグループに寄って、両グループの間を通るように続航した。
 こうして、14時03分A受審人は、左舷船首10度750メートル付近にカ号らのグループを認めるようになったころ、妻から「水上オートバイに気をつけてね。」と告げられ、左舷側カ号らの水上オートバイのグループに寄った針路としながらも同グループを無難に航過する態勢で前路に認めていた友人のボートを目指して進行中、同時04分50秒左舷船首55度160メートルのところでグループの航走圏から突然飛び出すようにカ号が北方に向けて急発進したことに気付かないでいるうちに、同時04分55秒至近に迫ったカ号に気付いた妻の「ボートがくる。」の叫び声で、同時04分57秒左舷船首55度約50メートルのところにカ号が水飛沫を上げて高速力で自船に向かって接近する状況を認め、とっさに衝突の危険を感じて機関を中立状態としたが及ばず、14時05分城山頂から201度1,870メートルの地点において、連勝丸は、原針路、原速力のまま、その左舷側中央部にカ号の船首が前方から76度の角度で衝突した。
 当時、天候は晴で風力1の東風が吹き、海上は平穏であった。
 また、カ号は、定員2名のFRP製水上オートバイで、船体中央部に操縦ハンドル及びその後部にシートを備え、主機として総排気量1,071立方センチメートルの水冷3気筒エンジンを搭載し、最高時速約70キロメートル(37.8ノット)で航走することができた。
 B受審人は、同月小型船舶操縦士の免許を取得したばかりで、所有するカ号に試乗を兼ねて友人らとの水上レジャーの目的で、同月12日夕方横島南海岸に友人らと各自所有の水上オートバイ4隻を運び込み、キャンプを張って宿泊した。
 翌13日06時ころB受審人は、友人らと同様自艇に1人で乗り組み、船首0.3メートル船尾0.4メートルの喫水で、横島南岸沖で試し運転を始め、友人らの航走に混じって運転練習を繰り返しているうち、免許を取得したばかりの水上オートバイの運転だけに疲れ易く、1時間毎に海岸に戻って休憩をとりながら正午まで運転を続け、その後海岸でバーベキューパーティなどして休憩を取った。
 こうして、14時ころB受審人は、再び友人らとともに4隻の水上オートバイにそれぞれ分乗して沖合に向かい、同時02分城山頂の南西方2.0キロメートルのところで釣り船からも離れた横島南岸沖合に至って半径20ないし30メートルの範囲をそれぞれ航走し始めた。
 ところで、B受審人は、午前の運転練習中に友人から自艇のスピードメーターの指針の振れが小さ過ぎるのではないかとの報告を受けていたので、一度急発進を試みて同針の振れ具合を確かめることにしたが、沖合の釣り船などから離れた水域を航走場所として選んでいたので、付近には他船がいないものと思い、周囲の他船の接近状況を十分に見張ることなく、14時04分50秒城山頂から200度2,000メートルの地点で、仲間の航走圏から離れて船首を009度に向けて進行を始めると、スロットルを一気に上げて時速約50キロメートル(27ノット)の速力で航走し始めたが、そのころ自グループの航走圏から北方約100メートル離れて無難に航過する態勢で西行中の連勝丸の前路に向かって進出し、同船と衝突のおそれがある態勢で接近する状況であったが、スピードメーターの指針の振れ具合を確かめることに気を取られてこれに気付かず、間もなく船首至近に連勝丸を初認したがどうすることもできないまま、カ号は、原針路、原速力のまま前示のとおり衝突し同船を乗り越えた。
 衝突の結果、連勝丸は、左舷中央部外板に亀裂を伴った擦過傷を、カ号は、船首部外板に亀裂を伴った擦過傷をそれぞれ生じたほか、連勝丸同乗者2人が負傷した。

(原因)
 本件衝突は、備後灘横島沖合において、水上レジャーの目的で仲間数隻の水上オートバイとともに一定の圏内を航走していたカ号が、見張り不十分で、一時的に急発進して同圏外北方を無難に航過する態勢で西行中の連勝丸の前路に進出したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 B受審人は、備後灘横島沖合において、水上レジャーの目的で仲間数隻の水上オートバイとともに一定の圏内を航走中、スピードメーターのチェックを行おうとして一時的に急発進して同圏から外れる場合、付近水域は釣り船など小船が航行するところであったから、付近を航行中の他船の前路に進出することのないよう、前方の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかし、同人は、操縦盤上のスピードメーター指針のチェックに気を取られ、前方の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、仲間の航走圏外北方を無難に航過する態勢で西行中の連勝丸の前路に進出して、同船との衝突を招き、連勝丸の左舷中央部外板に亀裂を伴った擦過傷を、カ号の船首部外板に亀裂を伴った擦過傷をそれぞれ生じさせたほか、連勝丸の同乗者2人を負傷させるに至った。
 以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第2号を適用して同人の四級小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。
 A受審人の所為は、本件発生の原因とならない。

 よって主文のとおり裁決する。


参考図
(拡大画面:45KB)





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