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平成13年神審第36号
件名

漁船松進丸漁船第一金比羅丸衝突事件

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成13年8月21日

審判庁区分
神戸地方海難審判庁(小金沢重充、黒田 均、内山欽郎)

理事官
野村昌志

受審人
A 職名:松進丸船長 海技免状:五級海技士(航海)(履歴限定)

損害
松進丸・・・ほとんど損傷ない
金比羅丸・・・右舷後部外板に破口を伴う損傷及びプロペラに曲損、 船長が下顎骨骨折等(入院加療2箇月)

原因
金比羅丸・・・見張り不十分、横切りの航法(避航動作)不遵守 (主因)
松進丸・・・見張り不十分、警告信号不履行、横切りの航法(協 力動作)不遵守(一因)

主文

 本件衝突は、第一金比羅丸が、見張り不十分で、前路を左方に横切る松進丸の進路を避けなかったことによって発生したが、松進丸が、見張り不十分で、警告信号を行わず、衝突を避けるための協力動作をとらなかったことも一因をなすものである。
 受審人Aを戒告する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成11年4月23日04時20分
 兵庫県香住港北方沖合

2 船舶の要目
船種船名 漁船松進丸 漁船第一金比羅丸
総トン数 65.38トン 5.92トン
全長 31.60メートル  
登録長   11.39メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
出力 551キロワット  
漁船法馬力数   50

3 事実の経過
 松進丸は、沖合底びき網漁業に従事する鋼製漁船で、A受審人ほか8人が乗り組み、操業の目的で、船首1.0メートル船尾3.0メートルの喫水をもって、平成11年4月19日14時00分兵庫県柴山港を発し、翌20日08時00分島根県浜田港北西方沖合45海里の漁場に至り、2日間ばかり操業したのち、帰途に就いた。
 越えて23日03時30分A受審人は、単独の船橋当直に就き、所定の航海灯を表示し、04時00分余部埼北灯台から030度(真方位、以下同じ。)1.0海里の地点で、針路を090度に定め、機関をほぼ全速力前進にかけ、9.5ノットの速力(対地速力、以下同じ。)で自動操舵とし、僚船と無線で交信しながら進行した。
 04時15分A受審人は、香住港城山灯台(以下「城山灯台」という。)から324度2.7海里の地点に達したとき、左舷船首42度1,600メートルのところに、第一金比羅丸(以下「金比羅丸」という。)の白、緑2灯を視認することができる状況であったが、僚船との無線交信に気を取られ、左舷方の見張りを十分に行っていなかったので、金比羅丸の存在に気付かなかった。
 こうして、A受審人は、金比羅丸が前路を右方に横切り衝突のおそれのある態勢で接近していることに気付かず、警告信号を行うことも、更に間近に接近したとき、衝突を避けるための協力動作をとることもしないで続航し、04時20分城山灯台から340度2.3海里の地点において、松進丸は、原針路原速力のまま、その船首部が金比羅丸の右舷後部に、後方から75度の角度で衝突した。
 当時、天候は曇で風力1の東風が吹き、潮候は上げ潮の初期であった。
 また、金比羅丸は、まき網漁業に従事するFRP製漁船で、船長B(昭和15年1月18日生、一級小型船舶操縦士免状受有、平成12年11月14日死亡)が1人で乗り組み、船首0.5メートル船尾1.0メートルの喫水をもって、同月22日18時00分兵庫県香住港を発し、同時30分同港北西方4海里の漁場に至り、自船を含め6隻から構成される船団中の魚群探索船として、9時間の操業を行ったのち、帰途に就いた。
 B船長は、所定の航海灯を表示して船橋当直にあたり、翌23日04時13分半城山灯台から341度3.0海里の地点で、針路を165度に定め、機関を半速力前進にかけ、7.0ノットの速力で手動操舵とし、魚群探知器等の片付けをしながら進行した。
 04時15分B船長は、城山灯台から341度2.9海里の地点に達したとき、右舷船首63度1,600メートルのところに、松進丸の白、紅2灯を視認できる状況であったが、右舷方の見張りを十分に行っていなかったので、同船の存在に気付かなかった。
 こうして、B船長は、松進丸が前路を左方に横切り衝突のおそれのある態勢で接近していることに気付かず、同船の進路を避けずに続航し、金比羅丸は、原針路原速力のまま、前示のとおり衝突した。
 衝突の結果、松進丸は、ほとんど損傷がなかったが、金比羅丸は、右舷後部外板に破口を伴う損傷及びプロペラに曲損を生じ、のち修理された。また、B船長は、約2箇月間の入院加療を要する下顎骨骨折等を負った。

(原因)
 本件衝突は、夜間、兵庫県香住港北方沖合において、両船が互いに進路を横切り衝突のおそれのある態勢で接近中、金比羅丸が、見張り不十分で、前路を左方に横切る松進丸の進路を避けなかったことによって発生したが、松進丸が、見張り不十分で、警告信号を行わず、衝突を避けるための協力動作をとらなかったことも一因をなすものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、香住港北方沖合において、単独で船橋当直に就いて東行する場合、南下中の金比羅丸を見落とさないよう、左舷方の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、僚船との無線交信に気を取られ、左舷方の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、前路を右方に横切り衝突のおそれのある態勢で接近する金比羅丸に気付かず、警告信号を行うことも、衝突を避けるための協力動作をとることもしないまま進行して衝突を招き、金比羅丸の右舷後部外板に破口を伴う損傷及びプロペラに曲損を生じさせ、B船長に約2箇月間の入院加療を要する下顎骨骨折等を負わせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。


参考図
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