(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成11年2月17日14時30分
高知県室戸岬南方沖合
2 船舶の要目
船種船名 |
貨物船第二十一日吉丸 |
漁船武義丸 |
総トン数 |
499トン |
4.36トン |
全長 |
63.03メートル |
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登録長 |
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9.50メートル |
機関の種類 |
ディーゼル機関 |
ディーゼル機関 |
出力 |
735キロワット |
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漁船法馬力数 |
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70 |
3 事実の経過
第二十一日吉丸(以下「日吉丸」という。)は、船尾船橋型鋼製砂利運搬船で、A受審人ほか5人が乗り組み、海砂1,500トンを積載し、船首3.8メートル船尾5.0メートルの喫水をもって、平成11年2月17日08時30分高知県下田港を発し、和歌山県串本港に向かった。
A受審人は、12時00分室戸岬西方25海里ばかりの地点で、単独の船橋当直につき東行中、14時25分室戸岬灯台から170度(真方位、以下同じ。)5.0海里の地点において、針路を080度に定め、機関を回転数毎分320にかけ10.2ノットの速力(対地速力、以下同じ。)としたとき、右舷船首28度1.1海里のところに、北上中の武義丸を含む4隻の漁船を初めて視認し、手動操舵により進行した。
14時26分A受審人は、他の漁船が自船の船尾方に向け左転したのを認め、武義丸が同じ方位で1,570メートルとなり、同船が前路を左方に横切り、衝突のおそれがある態勢で接近していることを知ったが、そのうち他の漁船と同様に左転してくれるものと思い、速やかに減速するなど武義丸の進路を避けずに続航した。
14時30分少し前A受審人は、武義丸が至近になっても左転しないことから、ようやく衝突の危険を感じ、汽笛で長音1回を吹鳴し、右舵一杯としたが間に合わず、14時30分室戸岬灯台から160度5.0海里の地点において、日吉丸は、原針路原速力のまま、その右舷船尾部に、武義丸の船首部が、前方から80度の角度で衝突した。
当時、天候は晴で風はほとんどなく、潮候は上げ潮の初期であった。
また、武義丸は、船体後部に操舵室を備えたFRP製漁船で、B受審人が1人で乗り組み、一本釣り漁の目的で、船首0.2メートル船尾1.0メートルの喫水をもって、同日05時30分高知県室戸岬港を発し、同港南南東方沖合で操業したのち、帰途についた。
13時45分B受審人は、室戸岬灯台から160度10.3海里の地点において、針路を340度に定め、機関を回転数毎分1,800にかけ7.0ノットの速力とし、操舵室後部に立って見張りをしながら、自動操舵により進行した。
14時25分B受審人は、左舷船首52度1.1海里のところに、東行中の日吉丸を初めて視認したが、一べつしただけで同船が自船の船首方をかわるものと思い、その後動静監視を十分に行わず、後部甲板右舷側に置いた箱に腰掛け、右舷側をときどき見ながら釣り糸の巻き取り作業を開始した。
14時26分B受審人は、日吉丸が同じ方位で1,570メートルに近づき、その後同船が前路を右方に横切り、衝突のおそれがある態勢で接近していることに気付かなかったので、警告信号を行うことも、同船が間近に接近したとき右転するなど、衝突を避けるための協力動作をとることもなく続航した。
14時30分少し前B受審人は、左舷側を見張るため立ち上がったとき、日吉丸の発した汽笛を聞き、至近に迫った同船を視認して機関を中立としたが及ばず、武義丸は、原針路原速力のまま、前示のとおり衝突した。
衝突の結果、日吉丸は、右舷船尾外板に擦過傷を生じただけであったが、武義丸は、船首部を圧壊し、のち修理された。
(原因)
本件衝突は、高知県室戸岬南方沖合において、両船が互いに進路を横切り衝突のおそれがある態勢で接近中、東行中の日吉丸が、前路を左方に横切る武義丸の進路を避けなかったことによって発生したが、北上中の武義丸が、動静監視不十分で、警告信号を行わず、衝突を避けるための協力動作をとらなかったことも一因をなすものである。
(受審人の所為)
A受審人は、高知県室戸岬南方沖合を東行中、右舷前方に北上中の武義丸を含む数隻の漁船を視認し、他の漁船が自船の船尾方に向け左転したのを認め、その後武義丸が前路を左方に横切り、衝突のおそれがある態勢で接近していることを知った場合、速やかに減速するなど同船の進路を避けるべき注意義務があった。しかるに、同人は、そのうち他の漁船と同様に左転してくれるものと思い、武義丸の進路を避けなかった職務上の過失により、同船との衝突を招き、自船の右舷船尾外板に擦過傷を生じさせ、武義丸の船首部を圧壊させるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
B受審人は、高知県室戸岬南方沖合を北上中、左舷前方に東行中の日吉丸を視認した場合、衝突のおそれの有無を判断できるよう、動静監視を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、一べつしただけで同船が自船の船首方をかわるものと思い、動静監視を十分に行わなかった職務上の過失により、日吉丸が前路を右方に横切り、衝突のおそれがある態勢で接近していることに気付かず、警告信号を行うことも、右転するなど衝突を避けるための協力動作をとることもなく進行して同船との衝突を招き、前示の損傷を生じさせるに至った。
以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
よって主文のとおり裁決する。