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平成13年横審第33号
件名

遊漁船第二正一丸プレジャーボート真栄丸衝突事件(簡易)

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成13年8月29日

審判庁区分
横浜地方海難審判庁(半間俊士)

副理事官
河野 守

受審人
A 職名:第二正一丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
B 職名:真栄丸船長 海技免状:四級小型船舶操縦士

損害
正一丸・・・推進器翼に曲損及び船底外板に擦過傷
真栄丸・・・中央部外板に船体がほぼ分断する損傷、のち廃船、船長が左大腿部打撲等、同乗者1人が外傷性血気胸等の傷

原因
正一丸・・・見張り不十分、船員の常務(避航動作)不遵守(主因)
真栄丸・・・動静監視不十分、注意喚起信号不履行、船員の常務(衝突回避措置)不遵守(一因)

裁決主文

 本件衝突は、第二正一丸が、見張り不十分で、漂泊している真栄丸を避けなかったことによって発生したが、真栄丸が、動静監視不十分で、注意喚起信号を行わず、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。
 受審人Aを戒告する。
 受審人Bを戒告する。

適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成12年7月20日12時55分
 千葉県片貝漁港南東方沖合

2 船舶の要目
船種船名 遊漁船第二正一丸 プレジャーボート真栄丸
総トン数 6.6トン  
登録長 11.92メートル 8.00メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
出力 330キロワット 25キロワット

3 事実の経過
 第二正一丸(以下「正一丸」という。)は、最大搭載人員15人のFRP製小型遊漁兼用船で、A受審人が1人で乗り組み、釣り客3人を乗せ、釣りの目的で、船首0.2メートル船尾1.5メートルの喫水をもって、平成12年7月20日04時00分千葉県片貝漁港を発し、05時00分同漁港南東方10海里ばかりの釣り場に至り、釣りを行ったのち、12時00分釣り場を発して帰航の途に就いた。
 ところで、正一丸は、操舵室中央に立っているときには、船首ブルワークにより船首方左右両舷にそれぞれ約10度の死角があり、A受審人は、航行中は、船首を左右に振ったり、操舵室天井のハッチを開けて頭を出すなどして船首方の死角を補っていた。
 A受審人は、操舵室後部に設けられた、自身の腰の高さよりやや高い台に腰掛け、船首方に死角がある状態で操船にあたり、途中、釣りのポイントで魚群探知機を使用して魚影を探った後、12時25分太東埼灯台から048度(真方位、以下同じ。)12.7海里の地点で、針路を片貝漁港に向かう307度に定め、機関を全速力前進にかけ、15.0ノットの対地速力で、自動操舵により進行した。
 12時49分A受審人は、太東埼灯台から022度13.0海里の地点に至り、正船首方やや右舷側1.5海里ばかりのところで漂泊している大型のプレジャーボート(以下「大型ボート」という。)を認め、平素、同船がその付近で釣りをしていて片貝漁港に出入りする際の邪魔になっていたことから、その動静に注目し、同時53分同灯台から017度13.2海里の地点に達したとき、正船首900メートルのところで漂泊している真栄丸を認め得る状況であったが、このころ右方に動き始めた大型ボートの動静に気を奪われ、操舵室天井のハッチから頭を出すなどして船首方の死角を補う見張りを十分に行わなかったので、真栄丸に気付かず、同船を避けないまま続航中、同時55分わずか前正船首方至近に同船を認め、機関を中立運転にして左舵一杯としたが及ばず、12時55分太東埼灯台から015度13.4海里の地点において、左回頭を始めて302度となり、13.0ノットの対地速力となった正一丸の船首が、真栄丸の左舷中央部にほぼ直角に衝突した。
 当時、天候は晴で風力2の南南西風が吹き、潮候はほぼ低潮時であった。
 また、真栄丸は、電子ホーンを装備した最大搭載人員10人のFRP製プレジャーボートで、B受審人が1人で乗り組み、同乗者3人を乗せ、釣りの目的で、船首0.2メートル船尾1.5メートルの喫水をもって、同日11時20分片貝漁港を発し、同時50分前示衝突地点付近の釣り場に至り、機関を中立運転にして漂泊しながら釣りを始めた。
 B受審人は、潮のぼりなど移動することなく漂泊を行い、12時47分ほぼ同じ地点で南西方に向首して釣りを続けていたところ、左舷正横方2海里ばかりのところに、自船の方に向かって航行してくる正一丸を初めて認めた。
 12時53分B受審人は、前示衝突地点で212度に向首して漂泊していたところ、正一丸が左舷正横前5度900メートルに接近していたが、初認時にいずれ同船が避けてくれると思ったことから、同船に対する十分な動静監視を行うことなく、同船の接近に気付かず、同時54分同船が同方向450メートルになったとき、電子ホーンによる注意喚起信号を行わず、機関を使用して衝突を避ける措置をとらないまま釣りを続けて漂泊中、12時55分直前左舷至近に接近した正一丸に気付いたが何もすることができず、同乗者に「飛び込め。」と叫んで2人の同乗者とともに自らも海へ逃れたものの、前示のとおり衝突した。
 衝突の結果、正一丸は、推進器翼に曲損及び船底外板に擦過傷を生じたがのち修理され、真栄丸は、中央部外板に船体がほぼ分断する損傷を生じ、正一丸によって片貝漁港へ引き付けられたが、のち廃船となった。また、B受審人が左大腿部打撲等、真栄丸同乗者1人が外傷性血気胸等の傷を負った。

(原因)
 本件衝突は、千葉県片貝漁港南東方沖合において、正一丸が、見張り不十分で、前路で漂泊している真栄丸を避けなかったことによって発生したが、真栄丸が、動静監視不十分で、注意喚起信号を行わず、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、千葉県片貝漁港南東方沖合において、同港に向けて帰航する場合、船首ブルワークによる死角がある状態であったから、正船首方で漂泊している真栄丸を見落とさないよう、操舵室天井のハッチから頭を出すなど、船首方の死角を補う見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかしながら、同人は、正船首方やや右舷側から右方に移動していた大型ボートの動静に気を奪われ、船首方の死角を補う見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、真栄丸に気付かず、同船を避けることなく進行して同船との衝突を招き、正一丸の推進器翼に曲損及び船底外板に擦過傷を、真栄丸の中央部外板に船体がほぼ分断する損傷をそれぞれ生じさせ、B受審人に左大腿部打撲等の傷を、真栄丸同乗者1人に外傷性血気胸の傷をそれぞれ負わせるに至った。
 B受審人は、千葉県片貝漁港南東方沖合において、釣りを行うために漂泊中、左舷正横方から自船の方に向かって航行する正一丸を認めた場合、同船に対する動静監視を十分に行うべき注意義務があった。しかしながら、同人は、いずれ同船が避けてくれるものと思い、動静監視を十分に行わなかった職務上の過失により、同船の接近に気付かないまま、注意喚起信号を行わず、衝突を避けるための措置もとらずに釣りを続け同船との衝突を招き、両船に前示の損傷を生じさせ、同乗者1人を負傷させたうえ自らも負傷するに至った。


参考図
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