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平成12年神審第129号
件名

遊漁船堀本丸プレジャーボート寺脇丸衝突事件

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成13年7月25日

審判庁区分
神戸地方海難審判庁(前久保勝己、黒田 均、小金沢重充)

理事官
釜谷奬一

受審人
A 職名:堀本丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
堀本丸・・・船首部船底外板に折損及び擦過傷
寺脇丸・・・左舷側後部外板及び船外機に破損、船長が肋骨骨折

原因
堀本丸・・・見張り不十分、船員の常務(避航動作)不遵守(主因)
寺脇丸・・・見張り不十分、注意喚起信号不履行、船員の常務(衝突回避措置)不遵守(一因)

主文

 本件衝突は、堀本丸が、見張り不十分で、漂泊中の寺脇丸を避けなかったことによって発生したが、寺脇丸が、見張り不十分で、有効な音響による注意喚起信号を行わず、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。
 受審人Aの一級小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成12年4月29日12時40分
 和歌山県沖ノ島北東方沖合

2 船舶の要目
船種船名 遊漁船堀本丸 プレジャーボート寺脇丸
総トン数 3.8トン  
全長 13.00メートル  
登録長   5.58メートル
機関の種類  ディーゼル機関 電気点火機関
出力 220キロワット 29キロワット

3 事実の経過
 堀本丸は、FRP製遊漁船で、A受審人が1人で乗り組み、釣り客6人を乗せ、遊漁の目的で、船首0.5メートル船尾1.3メートルの喫水をもって、平成12年4月29日05時00分和歌山県加太港を発し、同県沖ノ島周辺の釣り場に向かった。
 A受審人は、05時30分沖ノ島南西方沖合に至って遊漁を開始し、その後同島北西方沖合に移動して12時過ぎ遊漁を終え、中ノ瀬戸を経由して帰航することとし、12時31分友ケ島灯台から350度(真方位、以下同じ。)1,700メートルの地点において、針路を089度に定め、機関を回転数毎分約1,550にかけ、10.2ノットの対地速力で手動操舵により進行した。
 A受審人は、しばらくして、右舷前方の中ノ瀬戸中央付近に10隻ばかりの遊漁船を認め、12時38分半友ケ島灯台から050度1.4海里の地点に達したとき、正船首500メートルのところに寺脇丸を視認することができる状況であったが、予定転針地点に近づいていたことから、前示遊漁船群をいずれの側に見て替わすかを見極めようと、その動静に気を取られ、前路の見張りを十分に行わず、寺脇丸を認めなかったので、その後、漂泊中の同船に衝突のおそれのある態勢で接近していることに気付かなかった。
 A受審人は、寺脇丸を避けないまま続航し、12時40分友ケ島灯台から056度1.6海里の地点において、堀本丸は、原針路原速力のまま、その船首部が寺脇丸の左舷側後部に、後方から41度の角度で衝突した。
 当時、天候は晴で風力2の北東風が吹き、潮候は上げ潮の中央期にあたり、視界は良好であった。
 また、寺脇丸は、FRP製プレジャーボートで、船長B(昭和8年1月15日生、四級小型船舶操縦士免状受有、平成12年12月16日死亡により受審人指定が取り消された。)が1人で乗り組み、釣りの目的で、船首0.2メートル船尾0.3メートルの喫水をもって、同日09時15分大阪府深日港を発し、沖ノ島周辺の釣り場に向かった。
 B船長は、10時00分沖ノ島北方の神島付近に至り、釣りを開始したものの釣果が得られず、12時10分衝突地点付近に移動して機関を中立運転とし、船尾マストに青色の三角帆を掲げ、折からの北東風に船首を立て、漂泊して釣りを再開した。
 12時38分半B船長は、衝突地点で、船首が048度に向いていたとき、左舷船尾41度500メートルのところに堀本丸を視認することができ、その後同船が衝突のおそれのある態勢のまま接近していたが、右舷方を向いて手釣りをしていて、周囲の見張りを十分に行わなかったので、このことに気付かず、有効な音響による注意喚起信号を行うことも、機関を前進にかけて移動するなど、衝突を避けるための措置をとることもしなかった。
 12時40分わずか前B船長は、ふと左舷方を振り向いたとき、至近に迫った堀本丸を初めて認めたが、どうすることもできず、寺脇丸は、048度に向首したまま前示のとおり衝突した。
 衝突の結果、堀本丸は、船首部船底外板に折損及び擦過傷を生じたが、のち修理され、寺脇丸は、左舷側後部外板及び船外機に破損を生じ、修理されないまま陸揚げされて放置され、B船長が肋骨骨折などを負った。

(原因)
 本件衝突は、和歌山県沖ノ島北東方沖合の中ノ瀬戸北口付近において、堀本丸が、見張り不十分で、漂泊中の寺脇丸を避けなかったことによって発生したが、寺脇丸が、見張り不十分で、有効な音響による注意喚起信号を行わず、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、和歌山県沖ノ島北東方沖合を中ノ瀬戸北口に向けて航行する場合、船首方の寺脇丸を見落とさないよう、前路の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、右舷前方の同瀬戸中央付近にいる遊漁船群の動静に気を取られ、前路の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、漂泊中の寺脇丸に気付かず、同船を避けずに進行して衝突を招き、堀本丸の船首部船底外板に折損及び擦過傷を、寺脇丸の左舷側後部外板及び船外機に破損をそれぞれ生じさせ、B船長に肋骨骨折などを負わせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第2号を適用して同人の一級小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。

 よって主文のとおり裁決する。


参考図
(拡大画面:41KB)





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