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 海難審判庁裁決録 >  2001年度(平成13年) > 衝突事件一覧 >  事件





平成12年神審第98号
件名

漁船潤栄丸プレジャーボート旭衝突事件

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成13年7月19日

審判庁区分
神戸地方海難審判庁(西山烝一、阿部能正、前久保勝己)

理事官
釜谷奬一

受審人
A 職名:潤栄丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
B 職名:旭船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
潤栄丸・・・右舷側船首部外板に破口
旭丸・・・船尾外板に亀裂及び船外機などに損傷、船長が腰部挫傷、同乗者が右眼瞼切創

原因
潤栄丸・・・動静監視不十分、船員の常務(避航動作)不遵守(主因)
旭丸・・・動静監視不十分、注意喚起信号不履行(一因)

主文

 本件衝突は、潤栄丸が、動静監視不十分で、錨泊中の旭を避けなかったことによって発生したが、旭が、動静監視不十分で、注意喚起信号を行わなかったことも一因をなすものである。
 受審人Aを戒告する。
 受審人Bを戒告する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成11年12月5日15時15分
 大阪府田尻漁港北方沖合

2 船舶の要目
船種船名 漁船潤栄丸 プレジャーボート旭
総トン数 5.1トン  
全長   6.20メートル
登録長 9.55メートル  
機関の種類 ディーゼル機関 電気点火機関
出力 209キロワット 33キロワット

3 事実の経過
 潤栄丸は、船体中央部やや後方に操舵室を設けたFRP製漁船で、A受審人が1人で乗り組み、友人1人を乗せ、魚釣りの目的で、船首尾とも1.0メートルの喫水をもって、平成11年12月5日14時30分大阪府岡田漁港を発し、関西国際空港南端沖合から同空港南東岸沿いに北上し、関西国際空港連絡橋(以下「連絡橋」という。)を通過して連絡橋東端付近の陸岸から50メートル沖合に至り、漂泊して釣りを行ったのち、15時09分魚影を探しながら帰港することとし、阪南港泉佐野A防波堤灯台から240度(真方位、以下同じ。)1,800メートルの地点を発進した。
 発進したとき、A受審人は、ほぼ正船首1,550メートルのところに旭とその手前に第3船を初めて視認し、まだ距離があったので近づいてから替わすつもりで、舵輪後方のいすに腰掛け、時々魚群探知器を見ながら見張りに当たり、岡田漁港に向けて手動操舵により南下した。
 15時12分A受審人は、錨泊中の第3船を左舷方至近に替わしたのち、同時12分少し過ぎ大阪府岡田港波除堤灯台(以下「波除堤灯台」という。)から036度2,150メートルの地点で、針路を214度に定め、機関を回転数毎分1,400にかけ、8.0ノットの対地速力で進行した。
 定針したとき、A受審人は、旭が正船首700メートルとなり、その船首が風に立ち、移動していない状況から錨泊していることが分かり、その後、衝突のおそれがある態勢で接近したが、魚群探知器を注視することに気を奪われ、同船に対する動静監視を十分に行わなかったので、このことに気付かず、同船を避けないで続航中、15時15分波除堤灯台から038度1,450メートルの地点において、潤栄丸は、原針路、原速力のまま、その右舷船首が旭の左舷船尾に後方から平行に衝突した。
 当時、天候は晴で風力2の南西風が吹き、潮候は上げ潮の中央期であった。
 また、旭は、船体後部に操縦席を有し、船外機2基を備えたFRP製プレジャーボートで、B受審人が1人で乗り組み、友人1人を乗せ、魚釣りの目的で、船首0.15メートル船尾0.17メートルの喫水をもって、同日12時30分係留地の大阪府田尻漁港を発し、連絡橋中央部付近の釣り場に向かった。
 B受審人は、13時30分前示釣り場に着き、漂泊して釣りを開始したところ、釣果がなかったので、14時30分衝突地点付近に移動して機関を停止し、2爪錨を船首から投じ、直径12ミリメートルの合成繊維製の錨索を20メートル延出して球形形象物を掲げないまま、折からの風に立ち船首を南西方に向けて錨泊し、自らは操縦席後方の右舷側、同乗者は右舷側中央部で、それぞれ右舷方を向いて釣りを再開した。
 15時12分B受審人は、船尾方750メートルのところに潤栄丸を初めて視認したが、一見して自船の左舷方を無難に航過するものと思い、その後、同船に対する動静監視を十分に行うことなく、釣りに熱中していたところ、同時12分少し過ぎ前示衝突地点で船首が214度に向いていたとき、正船尾700メートルのところで潤栄丸が針路を定め、自船に向首し衝突のおそれがある態勢で接近する状況となったものの、このことに気付かず、有効な音響による注意喚起信号を行わないまま釣りを続けた。
 15時15分わずか前B受審人は、同乗者からの指摘により船尾方に振り向いたとき、至近に迫った潤栄丸の船首部を認め、2人で大声をあげたが効なく、旭は、船首が214度を向いたまま、前示のとおり衝突した。
 衝突の結果、潤栄丸は、右舷側船首部外板に破口を生じ、旭は、船尾外板に亀裂及び船外機などに損傷を生じたが、のちいずれも修理された。また、B受審人は腰部挫傷などを、同乗者Cは右眼瞼切創などをそれぞれ負った。

(原因)
 本件衝突は、大阪府田尻漁港北方沖合において、南下中の潤栄丸が、動静監視不十分で、錨泊中の旭を避けなかったことによって発生したが、旭が、動静監視不十分で、有効な音響による注意喚起信号を行わなかったことも一因をなすものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、大阪府田尻漁港北方沖合を岡田漁港に向けて南下中、前路の第3船を替わしたのち、針路を元に戻して進行する場合、第3船を替わす前から、旭が前路で錨泊中であることを認めていたのであるから、衝突のおそれがあるかどうかを判断できるよう、同船に対する動静監視を十分に行うべき注意義務があった。しかし、同人は、第3船を替わしたのち、魚群探知器を注視することに気を奪われ、旭に対する動静監視を十分に行わなかった職務上の過失により、同船に衝突のおそれがある態勢で接近していることに気付かず、同船を避けないまま進行して衝突を招き、潤栄丸の右舷側船首部外板に破口を、旭の船尾外板に亀裂及び船外機などに損傷を生じさせ、B受審人に腰部挫傷などを、C同乗者に右眼瞼切創などをそれぞれ負わせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
 B受審人は、大阪府田尻漁港北方沖合において、魚釣りのため錨泊中、自船に接近する潤栄丸を認めた場合、同船が無難に航過するかどうかを判断できるよう、同船に対する動静監視を十分に行うべき注意義務があった。しかし、同人は、一見して自船の左舷方を無難に航過するものと思い、潤栄丸に対する動静監視を十分に行わなかった職務上の過失により、同船が自船に向首し、衝突のおそれがある態勢で接近する状況となったことに気付かず、有効な音響による注意喚起信号を行わないまま釣りを続けて同船との衝突を招き、前示の損傷及び負傷を生じさせるに至った。
 以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。


参考図
(拡大画面:48KB)





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