(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成12年1月4日13時35分
沖縄県恩納漁港北方沖
2 船舶の要目
船種船名 |
プレジャーボートスカイライダーII |
登録長 |
8.35メートル |
機関の種類 |
ディーゼル機関 |
出力 |
272キロワット |
3 事実の経過
スカイライダーIIは、FRP製プレジャーボートで、A受審人ほか1人が乗り組み、パラセーラー6人を乗せ、パラセーリングを行う目的で、船首0.50メートル船尾0.85メートルの喫水をもって、平成12年1月4日13時20分沖縄県恩納村万座ビーチホテルの専用桟橋を発し、恩納漁港北方沖に向かった。
ところで、スカイライダーIIは、船尾にパラセーラーが乗った椅子を離着陸させるプラットホームが、プラットホーム前部に上下に伸縮するブームがそれぞれ設けられていた。また、パラセーリングを行う際の準備作業は、船首を風上に向けて停留し、ブーム先端のフックにライザーロープと称する2本のパラシュート吊上用のロープをかけ、ブームを伸ばしてパラシュートを吊り上げ、パラシュートに風が入って開いた状態でブームを縮めてフックを外し、椅子にパラセーラーを座らせるものであった。このとき、パラシュートが動き回り、ライザーロープがブームに絡まるおそれがあった。
13時30分A受審人は、恩納港第2号灯標から004度(真方位、以下同じ。)1,300メートルの地点に至り、船首を045度に向けて停留し、パラセーリングの準備に取りかかった。
A受審人は、13時35分少し前パラセーラー6人のうち2人を椅子に座らせて発進することにしたが、ライザーロープの状態を確認しなかったので、ライザーロープ1本がブームに絡まっていることに気付かず、椅子を船尾後方上空に浮上させるため、椅子に結んだワイヤを伸ばしながら船の速力を上げたところ、13時35分恩納港第2号灯標から004度1,300メートルの地点において、ワイヤが船尾から5メートルばかり伸びたとき、ライザーロープのパラシュート側取付部が切断し、椅子が海面に落下して反転したのを認めた。
当時、天候は曇で風力5の北東風が吹いていた。
この結果、パラセーラー1人が病院に搬送され、溺水で1日の入院加療を要した。
(原因)
本件パラセーラー負傷は、恩納漁港北方沖において、パラセーリングを開始する際、安全に対する配慮が不十分で、ライザーロープがブームに絡まり、同ロ−プのパラシュート側取付部が切断し、パラセーラーが乗った椅子が海面に落下したことによって発生したものである。
(受審人の所為)
A受審人は、恩納漁港北方沖において、パラセーリングを開始する場合、ライザーロープの状態を確認するなど、安全に対する配慮を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同受審人は、安全に対する配慮を十分に行わなかった職務上の過失により、ライザーロープがブームに絡まっていたことに気付かないまま発進し、同ロ−プのパラシュート側取付部が切断し、パラセーラーが乗った椅子を海面に落下せしめ、パラセーラーに1日の入院加療を要する負傷を負わせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
よって主文のとおり裁決する。