日本財団 図書館




 海難審判庁裁決録 >  2001年度(平成13年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成12年長審第69号
件名

漁船第五十三蛭子丸乗揚事件

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成13年6月7日

審判庁区分
長崎地方海難審判庁(亀井龍雄、平田照彦、河本和夫)

理事官
向山裕則

受審人
A 職名:第五十三蛭子丸船長 海技免状:五級海技士(航海)

損害
船底前部外板に凹損及びプロペラに曲損

原因
船橋当直維持の措置不十分

主文

 本件乗揚は、船橋当直を維持する措置が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成11年12月26日05時00分
 長崎県五島列島小板部島北東岸

2 船舶の要目
船種船名 漁船第五十三蛭子丸
総トン数 236トン
全長 47.97メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 1,176キロワット

3 事実の経過
 第五十三蛭子丸(以下、「蛭子丸」という。)は、船尾船橋型鋼製活魚運搬船で、A受審人ほか5人が乗り組み、空倉のまま、船首2.8メートル船尾4.2メートルの喫水をもって、平成11年12月26日00時00分長崎県生月島の生月港を発し、五島列島福江島の玉之浦港に向かった。
 A受審人は、相崎瀬戸、福江島東岸、同島大瀬埼を経由して玉之浦港に至るコースを海図に記入し、航程約80マイル、所要時間8時間ほどであることから、00時から04時までを甲板員、04時から入港までを船長の単独当直体制とし、一等航海士は玉之浦出港後の当直に入れることにして休息させることとした。
 A受審人は、自ら操船して出港し、00時05分頃生月大橋を通過した後、甲板員に当直を任せて休息し、04時00分鷹ノ巣鼻灯台から124度(真方位、以下同じ。)0.6海里の地点で当直につき、針路を211度に定め、機関を全速力前進にかけ、10.7ノットの対地速力で自動操舵によって進行した。
 04時39分少し過ぎA受審人は、センバイ瀬灯浮標から080度0.4海里の地点に達して転針点まで2海里弱となったとき、突然腹痛が起こり、我慢できなくて用足しに行くことにしたが、転針前には戻れるものと思い、休息中の一等航海士に当直を行わせるなど船橋当直を維持する措置をとることなく、2段下の上甲板左舷船尾にあるトイレに向かった。
 蛭子丸は、船橋無人状態で進行し、04時49分半黄島灯台から019度3.5海里の転針点に達したが、予定の転針がなされないまま小板部島北東岸に向かって続航した。
 05時00分少し前A受審人は、トイレから出て手を洗っていたところ、05時00分黄島灯台から006度1.7海里の地点において、小板部島北東岸オンガ瀬に、原針路、原速力のまま乗り揚げた。
 当時、天候は曇で風力3の北西風が吹き、潮候は上げ潮の初期であった。
 乗揚の結果、船底前部外板に凹損及びプロペラに曲損を生じたが、05時30分頃自力離礁し、のち修理された。

(原因)
 本件乗揚は、夜間、五島列島南東方沖合を航行中、船橋当直を維持する措置が不十分で、船橋が無人となって予定の転針がなされず、小板部島北東岸に向首したまま進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、五島列島南東方沖合を自動操舵で航行中、転針点付近で突然の腹痛のため用足しに行く場合、休息中の航海士に当直を行わせるなど船橋当直を維持する措置をとるべき注意義務があった。しかるに、同人は、転針点に到達する前には船橋に戻れるものと思い、船橋当直を維持する措置をとらなかった職務上の過失により、船橋が無人となって予定の転針がなされず、小板部島北東岸に向首したまま進行して乗揚を招き、船底前部外板に凹損及びプロペラに曲損を生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。 





日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION