(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成12年3月11日01時10分
瀬戸内海 安芸灘南東部
2 船舶の要目
船種船名 |
貨物船第十八神山丸 |
総トン数 |
497トン |
全長 |
66.00メートル |
機関の種類 |
ディーゼル機関 |
出力 |
735キロワット |
3 事実の経過
第十八神山丸は、砂利運搬に従事する鋼製貨物船で、A受審人ほか4人が乗り組み、空倉のまま、船首1.60メートル船尾2.90メートルの喫水をもって、平成12年3月10日11時15分兵庫県尼崎西宮芦屋港を発し、大分県津久見港に向かった。
A受審人は、船橋当直体制を自らも含む3人による単独4時間3直制で行い、翌11日00時からの当直に就く予定でいつものとおり夕食後の10日20時ころから4時間近く自室で休息をとり特に休息不足ということもない体調で、23時50分来島海峡航路の西口を過ぎたところで昇橋して単独で船橋当直に就いた。
その後、A受審人は、安芸灘南推薦航路線に沿って南下して安芸灘南航路第2号灯浮標(以下「第2号灯浮標」という。)を航過したところで釣島水道に向ける予定で、翌11日00時07分半来島梶取鼻灯台から282度(真方位、以下同じ。)2海里の地点で、ほぼ同航路線に沿う220度の針路に定めて自動操舵とし、機関を全速力前進にかけ、折からの北東流に抗して11.7ノットの対地速力で、操舵輪が組み込まれた船橋前部のコンソールスタンド後方で船橋中央部に置かれた肘掛背もたれいすに腰掛けて進行した。
ところが、A受審人は、船橋窓や扉を閉め暖房をかけていすに腰掛けた姿勢で当直にあたっていたところ、当直に就いてから約30分経過したころから眠気を覚えるようになった。しかし、同人は、単独で船橋当直中であり、やがて第2号灯浮標に並航したところで釣島水道に向ける予定でもあったものの、努めて立直したり外気に触れたりして眠気を払い気を引き締めて当直にあたるなどの居眠り運航の防止措置をとることなく、引き続きいすに腰掛けたまま緊張を欠いた状態で当直を続けているうちに居眠りに陥った。
こうして、00時56分半第十八神山丸は、第2号灯浮標に左舷側0.8海里で並航したが、釣島水道に向けて予定の転針が行われず、野忽那島に向首した同じ針路のまま続航し、01時10分野忽那島灯台から329度550メートルの地点において、原針路、原速力のまま野忽那島東岸に乗り揚げた。
当時、天候は曇で風力3の西風が吹き、潮候は下げ潮の初期で、安芸灘南東部水域には約1.5ノットの北東流があった。
乗揚の結果、第十八神山丸は船首船底外板に凹損及び擦過傷を生じた。
(原因)
本件乗揚は、夜間、安芸灘南東部を南下する際、居眠り運航の防止措置が不十分で、野忽那島に向首したまま進行したことによって発生したものである。
(受審人の所為)
A受審人は、夜間、安芸灘南東部を南下する際、いすに腰掛けたまま単独で船橋当直中に眠気を催した場合、居眠り運航に陥らないよう、努めて立直し外気に触れるなどして眠気を払い気を引き締めて当直にあたるなどの居眠り運航の防止措置をとるべき注意義務があった。しかし、同人は、当直に就いてしばらくして眠気を催しながらいすに腰掛けたまま緊張を欠いた状態で当直を続け、努めて気を引き締めて当直にあたるなどの居眠り運航の防止措置をとらなかった職務上の過失により、気の緩みから居眠りに陥り、野忽那島に向首したまま進行して、同島東岸への乗揚を招き、船首船底外板に凹損及び擦過傷を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
よって主文のとおり裁決する。