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 海難審判庁裁決録 >  2001年度(平成13年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成12年広審第118号
件名

漁船第八しんこう丸乗揚事件

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成13年6月6日

審判庁区分
広島地方海難審判庁(伊東由人、高橋昭雄、勝又三郎)

理事官
黒田敏幸

受審人
A 職名:第八しんこう丸船長 海技免状:四級海技士(航海)

損害
船首部のポンプ室及び1番魚槽の船底に破口を伴う凹損

原因
船位確認不十分

主文

 本件乗揚は、船位の確認が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成12年4月21日12時06分
 愛媛県南宇和郡西海町沖合

2 船舶の要目
船種船名 漁船第八しんこう丸
総トン数 199トン
全長 46.85メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 735キロワット

3 事実の経過
 第八しんこう丸(以下「しんこう丸」という。)は、魚槽を備え主として活魚運搬に従事する船尾船橋型鋼製漁船で、A受審人ほか4人が乗り組み、養殖用たいの稚魚を積み込む目的で、船首1.5メートル船尾4.0メートルの喫水をもって、平成12年4月21日12時00分愛媛県南宇和郡西海町外泊の養殖施設を発し、高知県幡多郡大月町泊浦の稚魚養殖施設に向かった。
 A受審人は、発航時から単独で操船にあたり、12時01分伊予鹿島灯台(以下「鹿島灯台」という。)から100度(真方位、以下同じ。)2,050メートルの地点で、北西方約1,500メートル沖合にある黒碆と称する浅礁域の水上岩群を左舷側に見るよう針路を317度に定め、機関を全速力前進にかけて10.5ノットの速力で自動操舵により進行した。
 ところで、A受審人は、南北2群に分かれた同水上岩群から100メートルにわたり浅礁が拡延しているのを知っていたので、南側の水上岩を200メートル離して航過し、さらに北側の水上岩を同距離でつけ回して黒碆を避け鹿島瀬戸に向かうことにしていた。
 ところが、12時05分A受審人は、南側の水上岩が左舷正横150メートルとなり、黒碆に著しく接近する状況となったが、同岩からの目測のみで十分に離れていると思い、レーダーにより同岩からの距離を測定するなどして、船位の確認を十分に行うことなく、同じ針路、速力で進行し、同時05分半北側の水上岩が左舷正横100メートルとなったところで、操舵を手動に切り替えて左舵10度をとって回頭中、12時06分鹿島灯台から048度1,160メートルの黒碆北側の浅礁に乗り揚げた。
 当時、天候は晴で風力1の南東風が吹き、視界は良好で潮侯は下げ潮の末期であった。
 乗揚の結果、船首部のポンプ室及び1番魚槽の船底に破口を伴う凹損を生じたが、のち修理された。

(原因)
 本件乗揚は、愛媛県南宇和郡西海町を発し水上岩を含む黒碆と称する浅礁域をつけ回して鹿島瀬戸に向かう際、船位の確認が不十分で、黒碆に接近してつけ回したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、愛媛県南宇和郡西海町を発し黒碆をつけ回して鹿島瀬戸に向かう場合、浅礁域に接近し過ぎないよう、レーダーにより黒碆の水上岩からの距離を測定するなどして、船位の確認を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、同岩の目測のみで黒碆から十分に離れていると思い、船位の確認を十分に行わなかった職務上の過失により、黒碆に著しく接近したことに気付かないままつけ回し、黒碆北側の浅礁への乗揚を招き、船首部ポンプルーム及び1番魚槽の船底に破口を伴う凹損を生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。 





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